突然の聞こえにくさ:突発性難聴の基礎知識
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
突発性難聴は、ある日突然、片方の耳が聞こえにくくなる病気です。内耳(耳の奥にある音を感じる器官)のトラブルが原因と考えられていますが、正確な原因はまだわかっていません。早く治療を始めるほど回復しやすいため、異変を感じたらすぐに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。
重要な事実
- 突然、片方の耳が聞こえにくくなります。
- 耳鳴りやめまいを伴うことがあります。
- 発症から早い時期の治療が回復の鍵になります。
- 原因は一つではなく、ウイルスや血流の問題など様々な説があります。
日本では、年間に10万人あたり約30〜60人が発症するとされています。まったくのまれな病気ではなく、耳鼻咽喉科を受診すれば、医師がよく知っている病気です。
40〜60歳代に多く、男女の差はほとんどありません。ただし、子どもから高齢者まで、どの年齢でも起こる可能性があります。
症状
- 突然の聞こえにくさに加えて、次のような症状がある場合は、脳卒中(のうそっちゅう)の可能性があります。すぐに119番に電話してください。
- 片方の手足や顔の半分が動かしにくい
- 言葉がしゃべりにくい、相手の言葉が理解できない
- 激しいめまいや吐き気が続く
- 意識がもうろうとする、または突然倒れる
- ⚠突然の聞こえにくさに気づいたら、その日または翌日中に耳鼻咽喉科を受診してください。
- ⚠めまいや耳鳴りを伴う場合も、ためらわずに受診しましょう。
一般的な症状
- 突然、片方の耳が聞こえにくい、またはほとんど聞こえない
- 耳の中に「キーン」「ザー」という耳鳴りがする
- めまいやふらつき
- 耳が詰まった感じや音が歪んで聞こえる
- (まれに)両方の耳に起こることもある
子供の症状
- 子どもは「聞こえにくい」と自分から伝えるのが難しいことがあります。テレビの音を大きくしたがる、名前を呼んでも反応しない、聞き返しが多いなどの様子があれば、耳鼻咽喉科での検査をおすすめします。
高齢者の症状
- 高齢者の場合、「年のせい」と判断せずに、急に聞こえにくくなったときは早めに受診することが大切です。難聴が続くと外出や交流が減りやすく、心の健康にも影響することがあります。
原因
主な原因
- ウイルス感染(風邪、ヘルペスウイルスなど)
- 内耳の血流が悪くなること
- 免疫反応の異常(体の免疫が自分自身の内耳を攻撃すること)
- ストレスや過労、睡眠不足
- 原因が特定できないことも多い(だからこそ「突発性」と呼ばれます)
リスク要因
- 強いストレスや慢性的な疲れ
- むち打ちなど首への負担
- 大きな音や騒音にさらされること
- 風邪など感染症にかかった直後
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 突然の聞こえにくさは、緊急に近い症状です。翌週や翌月ではなく、できるだけ早く(理想的には48時間以内に)耳鼻咽喉科を受診してください。
定期受診を予約すべき場合:
- 聞こえにくさが長く続いている、耳鳴りが気になる、めまいを繰り返す場合も、一度耳鼻咽喉科で相談しましょう。
診断
医師が問診で症状の始まりや経過を確認し、聴力検査を中心に診断します。他の病気(脳神経の病気や中耳炎など)がないかを確認するための検査も行います。
行われる可能性のある検査
- 聴力検査:どの音がどのくらい聞こえるかを、専用の機械で調べます。痛みはありません。
- めまいの検査:目や平衡感覚の異常を確認します。
- 血液検査:感染症や自己免疫の異常、糖尿病などの病気がないかを調べます。
- MRI検査:脳や聴神経に問題がないかを確認するために、必要に応じて行われます。
診察で予想されること
診察から検査まで、1〜2時間かかることがあります。検査結果に基づいて、医師が治療方針や生活上の注意を説明してくれます。心配なことや質問があれば、その場で聞いてください。
治療
突発性難聴の治療の基本は、安静とお薬による内耳の炎症や血流の改善です。重症の場合やめまいが強い場合は、入院して集中的に治療することもあります。早く治療を始めることが、聴力の回復に大きく影響します。
自宅でのセルフケア
- 十分な睡眠と安静を確保しましょう。
- 過労やストレスを避け、仕事や家事の負担を減らしましょう。
- アルコールや喫煙は血流に影響するため控えめにしましょう。
- 大きな音や騒音の多い場所を避けましょう。
- 自己判断で市販の耳薬などを使わず、医師に相談しましょう。
医療治療
治療では、炎症を抑えるお薬や血液の流れをよくするお薬などが使われることがあります。投与の方法は内服薬のほか、点滴静注(てきてきじょうちゅう)や鼓室内注射(こしつないちゅうしゃ、耳の中に直接薬を注入する方法)などがあります。これらは医師が症状に合わせて選択するため、自分だけで判断せず、医師の指示に従いましょう。
手術が検討される場合
突発性難聴に対する手術は、通常は行われません。長く聴力の回復がない場合や、まれに腫瘍など別の病気が原因で見つかった場合に、状況に応じて手術や放射線治療などが検討されることがあります。
この病気と共に生きる
聴力が完全に戻らない場合でも、補聴器などの補聴機器を使えば、会話や生活のしづらさを軽減できます。医師や言語聴覚士に相談しながら、自分に合った方法を見つけていきましょう。手話や筆談、スマートフォンの文字変換アプリなど、コミュニケーションの手段はたくさんあります。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい生活と十分な睡眠を心がけましょう。
- 毎日少しでも体を動かし、ストレスをためない工夫をしましょう。
- 聞こえにくさを家族や職場の同僚に伝え、必要な配慮をお願いしましょう。
- めまいが続く場合は、入浴や階段の昇り降りなどに注意し、転ばないように気をつけましょう。
- イヤホンでの大きな音の長時間リスニングは避けましょう。
食事と運動
特別な食事制限はありません。野菜や魚を中心としたバランスのよい食事と、ウォーキングや軽いストレッチなどの適度な運動を続けることで、血行が良くなり、心身の健康を保ちやすくなります。
精神的健康と心の健康
急に聞こえにくくなると、「このまま戻らないのでは」という不安や、人との会話が億劫になるなど、心の負担を感じることがあります。その気持ちは自然なものですが、一人で抱え込む必要はありません。医師や家族に気持ちを話すこと、カウンセリングを利用することも効果的です。気分の落ち込みが長く続く場合は、心療内科や精神科に相談してみましょう。
予防
突発性難聴は原因がはっきりしないため、これをすれば確実に防げるという方法はありません。しかし、日頃からストレスをためず、十分な睡眠とバランスの良い食事をとることは、内耳の健康を保つ助けになると考えられています。
ワクチン
突発性難聴を直接予防するワクチンはありません。ただし、おたふくかぜなどの感染症の一部は難聴の原因となることがあるため、定期接種などの予防接種を受けておくことは、結果として耳の健康を守ることにつながります。
検診プログラム
突発性難聴に限った定期健診はありませんが、職場や学校の健康診断などで聴力検査が行われることがあります。検査で引っかかった場合は、放置せずに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
合併症
治療しない場合
- 聴力が元に戻らない(残存する)ことがある
- 耳鳴りやめまいが続くことがある
- 聞こえにくさによるコミュニケーションの困難や社会的な孤立
- 不安、うつなどメンタルヘルスへの影響
長期的な見通し
突発性難聴の経過はさまざまですが、海外の報告では約3分の2の人で聴力が改善するといわれています。めまいがなく、難聴の程度が軽いほど回復しやすい傾向があります。たとえ十分に回復しなくても、補聴器や聞こえのリハビリテーションによって生活の質を保つことは十分可能です。希望を持って、医師と一緒に治療を続けていきましょう。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。