運動のあとに耳鳴りがするとき
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
耳鳴りとは、まわりに音の出どころがないのに、耳の中で「キーン」「ジー」「ブーン」などといった音が聞こえる状態をいいます。運動のあとに起こる耳鳴りは、血圧の変化、血流の増加、筋肉の緊張、大きく息をこらえたことなどがきっかけで起こることがあります。多くの場合は一時的なもので、しばらく休めば治まりますが、体からのサインとして見直すことが大切です。
重要な事実
- 運動後の耳鳴りは、血圧や血流の変化が原因のことが多いです
- ほとんどの場合、一時的で自然に治まります
- 耳鳴りが続く場合やほかの症状がある場合には、耳鼻咽喉科の受診が必要です
- 耳鳴りには、誰にでも聞こえる音がしない「自覚的耳鳴り」と、医師にも聞こえる「他覚的耳鳴り」がありますが、ほとんどは自覚的耳鳴りです
- 耳鳴りそのものは病気ではなく、何らかの状態を示す症状のひとつです
運動後に耳鳴りを感じる人はかなりいます。特に激しい運動をしたあとや、息をこらえて力を入れる運動(ウェイトリフティングなど)では、血圧が一時的に上がるため、耳鳴りを経験しやすいといわれています。
運動をする人なら年齢や性別を問わず起こる可能性があります。しかし、もともと血圧が高い人、耳の病気がある人、大きな音の中で働いた経験のある人、加齢により聴力が低下し始めている人では、耳鳴りが起きやすい傾向があります。
症状
- 突然の強いめまいやふらつきがある
- 運動中や運動後に胸の痛み・強い動悸を感じた
- 片側の顔まひや手足の力が入らない
- ろれつが回らない、言葉が出にくい
- 意識がぼんやりする、または失神した
- 耳鳴りと一緒に突然、耳がまったく聞こえなくなった
- ⚠耳鳴りが一晩たっても消えない
- ⚠耳から血や膿が出ている
- ⚠激しい耳の痛みがある
- ⚠耳鳴りとともに急に耳が聞こえにくくなった
- ⚠めまいや吐き気が続く
一般的な症状
- 「キーン」「ジー」「シュー」「ブーン」といった音が耳の中で聞こえる
- 耳の閉塞感(耳が詰まった感じ)
- 音の大きさが一定あるいは変動する
- 運動後すぐに現れ、休息で良くなる
- 高い音に敏感になり、耳が痛く感じることもある
子供の症状
- 子どもは耳鳴りをうまく言葉にできないことがあります。「耳の中にセミがいる」などと表現することがあります
- 運動後に「耳がおかしい」「音がする」と言うことがある
- 耳鳴りを隠してしまう子どももいるため、運動後にイライラしたり集中できなくなったりする様子がサインになることもあります
- 多くは一時的ですが、繰り返す場合は耳鼻咽喉科の受診をおすすめします
高齢者の症状
- 加齢による聴力低下のひとつの症状として、耳鳴りが現れやすいです
- 運動後に血圧が大きく変動することで、耳鳴りが目立つことがあります
- 持病(高血圧、糖尿病など)の薬を服用している場合は、運動の強度やタイミングを見直すことが大切です
- めまいや難聴を伴う場合は、早めの受診が必要です
原因
主な原因
- 運動中に血圧が上がり、血流が速くなって内耳の血管が影響を受ける
- 大きく息をこらして力を入れることで、内耳の圧力が一時的に変わる
- 耳あつまり(耳垢栓塞)があると、運動の刺激で耳鳴りに気づきやすくなる
- 激しい運動による疲労やストレスで自律神経が乱れる
- 運動中に大きな音を聞いていた(音楽プレーヤーや騒音など)ことも原因になる
- むち打ちや首・あごの緊張が、耳の周りの筋肉に影響することがある
- まれに内耳の病気(メニエール病など)や聴神経腫瘍が隠れていることもある
リスク要因
- 高血圧や糖尿病などの持病がある
- 運動前の準備運動(ウォームアップ)が不十分
- 暑い日や湿度の高い日に激しい運動をする
- 水分を十分に摂らないまま運動する
- 大きな音のする場所で運動する
- 疲労がたまっている
- 加齢による聴力の変化がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 耳鳴りが数時間以上続く
- 耳鳴りに加えて、めまいや難聴、耳の痛みがある
- 顔色が悪い、胸が痛い、息苦しいなどの体の不調がある
- 高血圧や心臓病などの持病があり、運動後に異常を感じる
定期受診を予約すべき場合:
- 運動後の耳鳴りを何度も繰り返す
- 耳鳴りのために睡眠や仕事・生活に支障が出ている
- 運動をしていないときにも耳鳴りがする
- 耳鳴りが日ごとに気になり始めている
- 聴力の低下を感じる
- 耳の掃除をしたあとに耳鳴りが出るようになった
診断
耳鼻咽喉科でおこなわれます。まず症状や運動習慣、持病について詳しく話を聞き、耳の状態を確認します。必要に応じて、聴力や内耳の状態を調べる検査がおこなわれます。
行われる可能性のある検査
- 視診(耳の外側から見る診察)
- 耳鏡(じきょう)による耳の内部の観察
- 聴力検査(音の聞こえ具合を測る)
- ティンパノメトリー(鼓膜の動きや中耳の圧力を調べる)
- 血圧測定(運動と関係があるか調べる)
- 場合によっては、めまいの検査や画像検査もおこなわれることがあります
診察で予想されること
診察は一般的に30分から1時間程度で、多くの検査は痛みを伴いません。まずは問診と耳の簡単な診察から始まります。聴力検査ではヘッドホンをつけて音が聞こえたらボタンを押します。日常生活に戻れるような気軽な検査がほとんどです。
治療
運動後の耳鳴りは、原因によって対処法が異なります。多くは生活習慣の調整や適切な休息で改善しますが、耳や体の病気が背景にある場合は、その病気の治療をおこないます。治療の目的は「音を消す」ことよりも「音が気にならなくなること」が中心です。
自宅でのセルフケア
- 運動中はこまめに水分をとり、休憩をする
- 呼吸を止めて力を込める運動はゆっくりと強度を上げる
- 運動前後のウォームアップとクールダウンを十分におこなう
- 耳栓をして大きな音を避ける
- 睡眠をしっかりとり、疲労をためない
- カフェインやアルコールのとりすぎに注意する(耳鳴りを悪化させることがあるため)
- ストレスをためないように、リラックスできる時間をつくる
- 耳の掃除のしすぎに注意する(耳あかを詰め込まないように)
医療治療
医療機関では、耳鳴りの原因となる耳あかや感染症に対する治療がまずおこなわれます。背景に血圧の変動や血流の問題がある場合には、それらを整えるための薬が処方されることがあります。また、耳鳴りが気になる場合には、補聴器やサウンドマシン(雑音で耳鳴りをやわらげる装置)を提案されることもあります。薬や機器には種類がありますので、医師とよく相談して決めることが大切です。
手術が検討される場合
手術が必要になるのはまれです。脳や神経に関係する腫瘍(例えば聴神経腫瘍)や深刻な内耳の血管の問題が見つかった場合など、原因となる病気の治療として手術が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
耳鳴りが気になる時間は、口元に大きな音を出す必要のないラジオや自然音などで耳に心地よい音を流すことで、気をそらす方法があります。また、首や肩のこりは耳鳴りを強くすることがあるので、適度にストレッチをおこないましょう。無理なく運動を続けることは、血圧の安定やストレス解消にも役立ちます。
食事と運動
バランスのよい食事を心がけ、塩分や砂糖のとりすぎを減らすことが血圧管理に役立ちます。運動は有酸素運動(歩く、ゆっくり走る、水泳など)を中心に、毎日30分程度を目標にするとよいでしょう。ただし、無理をしすぎず、運動中はこまめに休憩をとってください。
精神的健康と心の健康
耳鳴りが続くと、集中力や睡眠に影響して、不安になったりイライラしたりすることがあります。これは食欲や気分に影響するだけでなく、さらに耳鳴りを気にしてしまう悪循環につながることもあります。つらいときは、一人で抱え込まず、家族や友人、医療専門家に話してください。もし強い不安や抑うつ的な気持ちがある場合は、心療内科や精神科の受診も検討してください。また、危機的な状況では、救急安心センター(#7119)やお近くの医療機関にご相談ください。
予防
運動後の耳鳴りは、原因が生活習慣によるものであれば予防できることがあります。特に、運動前後の準備運動と整理運動、十分な水分補給、血圧の管理、耳を大きな音から守ることが大切です。耳鳴りが一度あると、それ自体を完全に予防する方法はありませんが、発生頻度を減らすことは可能です。
検診プログラム
医療機関での定期検診や、職場の健康診断で血圧や聴力を確認することは、耳鳴りの予防や早期発見に役立ちます。特に高齢者や持病のある方は、年に一度の健康診断をおすすめします。
合併症
治療しない場合
- 耳鳴りの原因となる病気(難聴やメニエール病など)が進行する
- 耳鳴りに気を取られて、集中力や睡眠の質が下がる
- 不安やうつ状態を引き起こすことがある
- 突然の難聴やめまいを見逃す危険がある
- 運動や日常生活への恐怖心で体を動かす機会が減る
長期的な見通し
多くの場合、運動後の一時的な耳鳴りは休息や生活の調整で改善します。また、耳鼻咽喉科で原因を調べ、適切な治療やアドバイスを受けることで、耳鳴りとうまく付き合いながら普段の生活を送ることができます。耳鳴りは恐れるものではなく、「体からのサイン」として受け止めて、無理せず対処していけば大丈夫です。
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- 日本耳鼻咽喉科学会 · 日本
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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