子宮内膜症の痛みとX線(レントゲン)検査
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
子宮内膜症とは、本来子宮の内側にある「子宮内膜」に似た組織が、卵巣や卵管、おなかの中など、子宮の外側にできてしまう病気です。この組織は月経のたびにホルモンの影響を受けて出血や炎症を起こし、強い痛みや不妊の原因になります。
重要な事実
- 子宮内膜症は良性の病気ですが、放置すると痛みが続いたり、妊娠しにくくなったりすることがあります。
- 診断には主に超音波検査やMRIが使われます。X線(レントゲン)検査は、子宮内膜症そのものを見つけるための検査ではありません。
- 治療の目的は、痛みをやわらげ、生活の質を保つことです。症状に合わせて薬や手術などが選ばれます。
子宮内膜症は、月経がある年齢の女性の約10人に1人に見られるといわれる、決してめずらしくない病気です。ただし、診断されていない人も多く、実際にはもっと多くの人が症状を抱えている可能性があります。
主に10代後半から閉経までの月経がある女性に起こります。若い女性や、まだ妊娠を経験していない女性にもよく見られます。
症状
- 突然、耐えられないほどの激しい下腹部痛がある
- 大量の出血があり、めまいや意識がもうろうとする
- 立ち上がれないほどの痛みや、冷や汗が出る
- ⚠38度以上の発熱とおなかの痛みがある
- ⚠吐き気や嘔吐がひどく、水分がとれない
- ⚠これまでの痛みと明らかに違う強い痛みが続く
一般的な症状
- 月経のたびに強い下腹部痛や腰痛がある
- 月経以外にも骨盤や下腹部に痛みがある
- 性交時に痛みがある
- 排便や排尿のときに痛みがある
- 月経量が多い、または月経不順
- 慢性的な疲労感や、妊娠しにくい
原因
主な原因
- はっきりした原因はまだわかっていません。
- 月経血が子宮の外に逆流して、子宮内膜のような組織がはりつくという「逆流説」が有力です。
- 免疫の働きや遺伝的な要因、ホルモンの影響も関係していると考えられています。
リスク要因
- 初経が早い(12歳より前に月経が始まる)
- 月経周期が短い(25日より短い)
- 経産回数が少ない、または妊娠したことがない
- 家族(母や姉妹)に子宮内膜症の人がいる
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 痛みで動けず、夜間や休日でもすぐに診てもらいたい場合は、救急外来や休日夜間診療所を利用しましょう。
- 突然の激痛や大量出血がある場合は、ためらわずに119番に電話してください。
定期受診を予約すべき場合:
- 月経痛がひどく、学校や仕事を休むことがよくある
- 市販の痛み止めを使っても痛みがおさまらない
- 性交時や排便時の痛みがある
- 妊娠を希望しているが、なかなか妊娠しない
診断
子宮内膜症の診断では、まず問診と内診、超音波検査(エコー)を行います。さらに詳しく見るため、MRI検査を行うこともあります。X線(レントゲン)検査は、肺や骨、腸などの状態を調べるためのもので、子宮内膜症の病変を直接写し出せるものではありません。ただし、おなかの痛みの原因がほかの病気でないことを確かめるために、胸部や腹部のX線検査が行われることがあります。最終的に確定診断をするには、おなかに小さなカメラを入れて直接確認する「腹腔鏡検査」が行われることもあります。
行われる可能性のある検査
- 問診・内診
- 超音波検査(経腟エコーなど)
- MRI検査
- 血液検査(CA125など、病気の目安になります)
- 腹腔鏡検査(確定診断に用いることがある)
- X線検査(ほかの病気を除外するために行うことがある)
診察で予想されること
検査は、脚を開いて行う内診やエコーなど、不安や緊張を感じることもあるかもしれません。医師はその都度説明してくれますが、気になることは遠慮なく質問してください。腹腔鏡検査は手術が必要なため、入院の日程やリスクについて事前に医師とよく話し合います。
治療
治療の目的は、痛みをやわらげて日常生活を快適にすること、そして妊娠を希望する場合は妊娠の可能性を高めることです。症状の重さ、年齢、妊娠の希望によって、薬の治療と手術の治療を使い分けます。どちらも必ず医師の診断のもとで進められます。
自宅でのセルフケア
- おなかや腰を温める(カイロ、湯たんぽ、入浴)
- 痛みが強い日は無理をせず、横になって休む
- ストレスをためすぎないようにする
- 適度な運動で血行をよくする
- 痛みの程度を日記につけて、自分の体のリズムを知る
医療治療
薬による治療には、痛みをやわらげるお薬と、ホルモンの働きを調整するお薬があります。ホルモン調整薬は、子宮内膜症の進行を抑える効果も期待できます。ただし、これらのお薬には体に合う合わないや副作用があるため、必ず医師と相談し、処方されたものを正しく使用する必要があります。具体的な薬の名前や用量は、ここではあえてお伝えしません。あなたの症状や体質に合わせて医師が決めます。
手術が検討される場合
薬による治療で効果が十分でない場合、卵巣にチョコレート嚢胞と呼ばれる大きな嚢胞がある場合、また妊娠を希望する場合には、腹腔鏡手術で子宮内膜症の組織を切除することがあります。手術の方法や範囲は、症状や年齢、妊娠の希望によって変わります。医師とよく相談して決めましょう。
この病気と共に生きる
子宮内膜症と長く付き合っていくには、痛みが起きる時期を予測して予定を調整することが役立ちます。月経カレンダーや痛みの記録をつけておくと、医師への相談もスムーズになります。学校や職場に、痛みが強い日は休みをとりやすいよう相談するのも一つの手です。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠時間を十分にとる
- 体を冷やさないようにする
- ストレスをためないために、自分の好きな時間をもつ
- 無理のない運動(ウォーキング、ヨガなど)を習慣にする
- 禁煙する
食事と運動
食事は、炎症を抑えるとされる野菜や果物、魚(特に青魚)などを積極的にとり、脂肪分が多い肉や加工食品は控えめにするのがよいといわれています。完全に治す食事法はありませんが、バランスのよい食事は体の調子を整える助けになります。運動は、激しいものではなく、ウォーキングやストレッチなど、続けられる範囲で行いましょう。
精神的健康と心の健康
慢性的な痛みは、気分の落ち込みや不安、いらだちを引き起こすことがあります。また、「痛い」と訴えても周りに理解してもらえないという孤独感を感じる人も少なくありません。そうした気持ちは決してわがままではなく、れっきとした症状の一部です。自分を責めずに、信頼できる人や医療者に気持ちを話してください。もし「生きていてもつらい」という気持ちが強くなったら、それはとても危険なサインです。一人で抱え込まず、すぐに精神保健の専門家や相談機関に連絡しましょう。あなたの命は大切です。
予防
子宮内膜症を完全に予防する方法は、現時点では確立されていません。しかし、月経痛などを我慢せずに早めに医療機関を受診することで、進行を遅らせたり、適切な治療を受けたりすることができます。また、規則正しい生活やバランスのよい食事、運動なども、症状のコントロールに役立つ可能性があります。
ワクチン
子宮内膜症に対するワクチンはありません。
検診プログラム
子宮内膜症を早期に見つけるための定期的な検診は特にありません。しかし、月経の度に強い痛みがある、日常生活に支障をきたすなどの場合は、早めに婦人科を受診しましょう。自覚症状が重要なサインです。
合併症
治療しない場合
- 痛みが慢性化して、日常生活や仕事に大きな影響をおよぼす
- 卵巣にチョコレート嚢胞(卵巣内膜症性嚢胞)ができ、破裂や捻転を起こすことがある
- 卵管や卵巣の周りに癒着(組織がくっついてしまうこと)が起こり、不妊の原因になる
- まれに、腸や膀胱などほかの臓器に影響をおよぼすことがある
長期的な見通し
子宮内膜症は治療と生活の工夫によって、症状をうまくコントロールできる病気です。完治が難しい場合もありますが、痛みをやわらげ、妊娠の可能性を高めるための治療法は多くあります。医師と二人三脚で、あなたに合った方法を見つけていきましょう。希望をもって前向きに取り組むことが大切です。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。