骨折治癒の超音波治療(LIPUS)とは?
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
骨折治癒の超音波治療とは、骨折した部分をより早く・確実に治すために、微弱な超音波の刺激を与える治療法です。専用の機械を使い、骨の細胞を活性化して、骨折部の治りを促します。同じ「超音波」を用いた検査(エコー)は、骨折の具合や治り具合を画像で確認するために使われます。
重要な事実
- 骨は通常、時間がかかりますが自然に治ります。その治りをサポートするために超音波治療が用いられます。
- この治療は、低出力パルス超音波(LIPUS)と呼ばれ、骨折の治りが遅い「遷延治癒」や「偽関節」の治療に使われることがあります。
- 超音波治療は痛みをほとんど伴わず、外来や自宅で行えるタイプがあります。
- 画像を使った超音波(エコー)では、骨の表面や周りの組織の状態をリアルタイムに観察できます。
日本では、骨折後の治りが悪い場合を中心に、この超音波治療が保険診療として行われることがあります。骨折全体の中では、特別な治療になりますが、骨がつきにくい人にとっては選択肢の一つです。
骨折をした人なら基本的に誰でも対象になり得ますが、特に骨折のズレが大きかった人、高齢者、喫煙者、糖尿病などの持病がある人、薬の影響で骨が弱っている人などに、骨の治りが悪いことが多く、超音波治療が必要になることがあります。
症状
- 骨折した部位が激しく痛み、移動できない場合は、すぐに救急車(119番)を呼んでください。
- 骨折部から骨が皮膚に突き出ている、または大量に出血している場合は、すぐに救急車(119番)を呼んでください。
- 手や足の指先が青白い、冷たい、強いしびれがある場合は、すぐに救急車(119番)を呼んでください。
- 強い衝撃で意識がもうろうとしている場合は、すぐに救急車(119番)を呼んでください。
- ⚠骨折の後の痛みや腫れが数日たっても増してくる場合は、当日中に医療機関へ連絡してください。
- ⚠ギプスや副木がきつく感じる、指先の色が悪い場合は、できるだけ早く医療機関へ連絡してください。
- ⚠発熱がある、患部が熱を持って赤く腫れている場合は、早めに受診してください。
- ⚠治療中の骨折に新たな痛みや違和感が出た場合は、早めに受診してください。
一般的な症状
- 骨折した部分の痛みが数週間たっても続く
- 腫れや熱感(熱を持つ感じ)が引かない
- 力を入れたり、体重をかけたりすると痛む
- 骨折した部分がなかなか動かせない
- 医師から指摘された骨折の治りがゆっくりである
子供の症状
- 子どもは大人より治りが早いですが、痛みが長引く、触ると強く痛がる、手足の動きがおかしい、患部の皮膚に赤みや熱感がある場合は注意が必要です
高齢者の症状
- 高齢者の骨折は治りが遅くなる傾向があります。痛みが続く、歩きにくい、骨折前と違った感覚があるなどの変化があれば、早めに受診してください
原因
主な原因
- 骨折した部分の固定が不十分だったり、安静を守れなかったりすると、ずれた状態で治ってしまうことがあります
- 重症の骨折、開放骨折、骨が粉々になった骨折では、治るのに時間がかかります
- 骨の治りに必要な血液の流れが不足する場合がある(たばこ、糖尿病、動脈硬化など)
- 骨粗しょう症によって骨自体が弱いと、治癒力も低下します
リスク要因
- 糖尿病などの慢性的な病気
- ステロイド薬など特定の薬の長期使用
- 栄養の偏り(たんぱく質やビタミン・ミネラルの不足)
- 骨折部位の感染
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 骨折治療中に、痛みや腫れが急に増してきた場合
- ギプスがきつく、指先がしびれる、青白い場合
- 発熱と患部の熱感が強く、感染が疑われる場合
定期受診を予約すべき場合:
- 骨折の経過観察の予約を守り、医師の診察を受けてください
- 骨折後、2〜3か月たってもくっつく気配がない、または違和感が続く場合は、再診を検討してください
診断
骨折の診断や治り具合の確認には、レントゲンが基本です。医師は、レントゲンの画像で骨のつき具合を観察します。必要に応じてCTやMRI、超音波エコーを使って、骨のまわりの組織や血流の状態を調べることもあります。超音波エコーは、痛みや放射線の影響がないという利点があります。
行われる可能性のある検査
- レントゲン検査(骨折の種類やずれ、仮骨の形成を確認)
- 超音波エコー検査(骨表面や血流、軟部組織の状態をリアルタイムに確認)
- CT検査(複雑な骨折や細かな骨片の状態を詳しく見る)
- 血液検査(炎症反応や栄養状態、骨代謝の指標を調べる)
診察で予想されること
診察室で、医師が骨の周りの皮膚の上からゼリーを塗り、超音波の機械を軽く当てて検査することがあります。痛みはほとんどありません。治療としての超音波照射は、専用の機器を使って自宅でできる場合もあり、医師の指示に従って使用します。
治療
骨折の治療は、まずずれた骨を適切な位置に整復し、ギプスや副木、または手術で固定して、骨がつくのを待つことが基本です。骨の治りが悪い場合や、治りを早めたい場合に、低出力パルス超音波治療(LIPUS)が行われることがあります。これは、骨折部の皮膚の上から超音波を当てて、骨の細胞を刺激する方法で、一般的には1日1回20分程度の照射を続けます。
自宅でのセルフケア
- 医師から渡された超音波治療器は、指示された時間と使用方法を守るようにしてください
- ギプスやシーネ、装具は自己判断で外さない
- 骨折した部分を高くして休める(腕や脚の腫れを軽減)
- 水分を十分にとり、便秘に気をつける(骨折後の安静でこりやすくなる)
- 痛みがあるときは無理をせず、使用中に痛みが強い場合は医師に相談する
医療治療
骨折の治療には、ギプスなどによる保存療法のほか、手術で金属製のプレートやスクリューを使って骨を固定する方法があります。骨の癒合が得られない場合には、超音波治療に加えて、自分の骨や人工骨を使う骨移植、骨の形成を促す薬剤などが医師によって検討されます。薬剤の選択や使用は医師の判断で行われます。
手術が検討される場合
骨折のずれが大きく保存療法では整復できない場合、骨片が関節の中に入り込んでいる場合、開放骨折で感染の危険が高い場合、骨が全くつかず偽関節になった場合などは、手術が必要になることがあります。
この病気と共に生きる
骨折が治るまでの間は、毎日の生活の中でいくつかの工夫が必要です。お風呂に入るときはギプスを濡らさないように保護する、着替えや食事ではバランスを崩さないよう注意する、そして何よりも医師の指示を守って安静とリハビリのバランスを取ることが大切です。超音波治療の機器を自宅使用する場合は、毎日決めた時間に行うと習慣づけやすいでしょう。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を心がける(たばこは骨の血流を低下させます)
- アルコールは控えめにする
- ストレスをためず、十分な睡眠を取る
- 骨折が治った後も、転倒しないように家の中の整理や運動を続ける
食事と運動
骨の材料となるたんぱく質(魚、肉、卵、大豆製品)、カルシウム(乳製品、小魚、青菜)、ビタミンD(魚類、日光浴)、ビタミンK(納豆、緑黄色野菜)などを意識して食べましょう。運動は医師や理学療法士の指示に従って、リハビリを進めます。骨折の部位を守りながら、全身の状態を維持する軽い運動も勧められることがあります。
精神的健康と心の健康
骨折の治療やリハビリは、数週間から数か月続くことがあり、その間、不安やストレスを感じるのは自然なことです。将来の骨の治りを心配したり、仕事や生活への影響に悩んだりするかもしれません。そうした気持ちは一人で抱え込まず、医療者や身近な人に話しましょう。
予防
骨折そのものをすべて防ぐことはできませんが、骨粗しょう症の予防と転倒予防によって、骨折のリスクを大幅に減らせます。骨折後の骨癒合を促すためには、生活習慣の改善と医師の指示に従うことが大切です。
ワクチン
骨折と直接関係するワクチンはありませんが、高齢者では転倒の原因になる感染症(肺炎やインフルエンザ)を予防するワクチンが勧められることがあります。
検診プログラム
骨粗しょう症の早期発見には、骨密度検査が有用です。骨折の経過観察では、レントゲンやCT、超音波エコーで治癒過程を定期的に確認します。
合併症
治療しない場合
- 骨折がずれたまま治ると、変形が残り、関節の動きが悪くなることがあります
- 骨が数か月たってもくっつかない「偽関節」になると、痛みが続き、手術が必要になることがあります
- 安静が続くと、筋肉の萎縮や関節のこわばりが起こることがあります
- 長く同じ姿勢を強いられると、深部静脈血栓症(血の塊)のリスクが高まることがあります
長期的な見通し
骨折は、多くの場合、適切な治療と経過観察でしっかりと治ります。超音波治療などの新しい方法をうまく取り入れながら、医師と一緒に治癒に向けて進んでいきましょう。時間はかかっても、確実に回復していく人がほとんどです。
サポートを探す
国際機関
地域の団体
- 厚生労働省 ↗ · 日本
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。