小児の股関節痛
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
子どもの股関節(こかんせつ)の痛みは、太ももの付け根やお尻、膝などに感じる痛みです。多くの場合、成長に伴う一時的なものや軽いけがが原因ですが、まれに深刻な病気(例えば細菌感染による化膿性関節炎やペルテス病、大腿骨頭すべり症など)が隠れていることもあります。
重要な事実
- 子どもの股関節痛は比較的よく見られる症状です。
- 多くの場合、自然に良くなる「単純性股関節炎」という一時的な炎症です。
- 発熱や足を全くつけないほどの痛みがある場合は、すぐに医療機関を受診してください。
- 早期発見・治療で、多くのケースは後遺症なく治ります。
はい、子どもの股関節痛はよくある症状です。特に3歳から10歳くらいまでの子どもに多く見られます。
活発に動き回る幼児や学童期の子どもに多く、男の子にやや多い傾向があります。特に、風邪や感染症の後に起こる「単純性股関節炎」はよく見られます。
症状
- 急に足が全く動かせなくなった
- 高い熱(38.5℃以上)と一緒に股関節が痛い
- 股関節がはれていて触ると熱い
- 足を動かすと激痛があり、泣き叫ぶ
- 事故や転倒の後で、足を動かせない
- ⚠1週間以上続く足を引きずる歩き方
- ⚠痛みで夜中に何度も起きる
- ⚠原因不明の痛みが数日続いている
- ⚠太ももや膝の痛みが続いている
一般的な症状
- 片方の足をかばって歩く(跛行:はこう)
- 太ももの付け根やお尻が痛む
- 膝が痛いと言う(実際は股関節の問題であることが多い)
- 朝起きたときや座った後、立ち上がる時に痛む
子供の症状
- 歩くのを嫌がる、または全く歩かない
- 足を引きずって歩く
- 痛みのために夜中に目を覚ます
- 発熱を伴うこともある
- 片方の足だけ外側に向いている(寝ているときなど)
原因
主な原因
- 単純性股関節炎:風邪やウイルス感染の後に起こる一時的な炎症(最も多い)
- ペルテス病:大腿骨(太ももの骨)の頭部への血流が一時的に悪くなる病気(4~8歳の男児に多い)
- 大腿骨頭すべり症(SCFE):成長期に大腿骨の頭がずれる病気(肥満傾向の思春期の子どもに多い)
- 化膿性関節炎:細菌が股関節に入り込んで起こる重い感染症
- 若年性特発性関節炎:関節の自己免疫性の炎症
- けが:転倒やスポーツによる打撲、捻挫、骨折
リスク要因
- 年齢:3~10歳に多い(単純性股関節炎やペルテス病)
- 性別:男の子にやや多い
- 肥満:特に大腿骨頭すべり症のリスクが高まる
- 最近の感染症:風邪や胃腸炎の後に起こりやすい
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 発熱を伴う股関節の痛み(特に高熱)
- 足を一切動かせない、または体重をかけられない
- 急に痛みが強くなり、夜も眠れない
- けがの後で痛みが続く
定期受診を予約すべき場合:
- 1週間以上、歩き方がおかしい(足を引きずる)
- 痛みが続くが発熱はない
- 原因がわからないが、繰り返し股関節が痛む
診断
医師は問診(症状の経過、けがの有無、発熱など)と身体診察(股関節の動きや痛みの場所の確認)を行います。必要に応じて画像検査や血液検査をします。
行われる可能性のある検査
- 股関節のエコー(超音波)検査:関節の中の水のたまり具合を確認
- 股関節のX線検査:骨の形やずれを確認
- 血液検査:炎症の程度や感染の有無を調べる
- MRI:より詳しく骨や軟骨の状態を見る(必要に応じて)
診察で予想されること
多くの場合、数回の診察と画像検査で原因がわかります。重い病気が疑われなければ、経過観察や安静指導で済むことがほとんどです。子どもが痛がって泣くこともありますが、医師は優しく診察します。
治療
治療は原因によって異なります。多くは安静と消炎鎮痛剤(医師が処方する痛み止め)で改善しますが、感染症や骨のずれがある場合は入院や手術が必要になることもあります。
自宅でのセルフケア
- 痛みのある方の足を安静にして、無理に動かさない
- 氷のうなどで冷やす(タオルで包み、15分程度)
- 痛みが強いときは、松葉づえを使って体重をかけないようにする
- 医師の指示があるまでは、激しい運動(走る、跳ぶ)は控える
医療治療
炎症を抑える薬(消炎鎮痛剤)が処方されることが一般的です。感染症が疑われる場合は抗生物質の点滴治療が必要です。ペルテス病や大腿骨頭すべり症では、装具(コルセットのようなもの)で股関節を固定したり、手術で骨の位置を整えたりする方法があります。具体的な薬の名前や用量は医師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
大腿骨頭すべり症が重度の場合や、ペルテス病で骨の形が悪くなる恐れがある場合、また化膿性関節炎で膿(うみ)を排出する必要がある場合には手術が検討されます。
この病気と共に生きる
治療中は安静が基本です。学校の体育や休み時間の運動は、医師の許可が出るまで控えましょう。松葉づえが必要な場合は、階段の昇り降りに注意してください。
生活習慣のアドバイス
- 痛みが落ち着いたら、少しずつ歩く練習をする
- 水泳などの関節に負担の少ない運動から再開する
- 体重が気になる場合は、食事の見直しも考慮する(肥満は股関節に負担)
- 痛みがぶり返さないよう、無理をしない
食事と運動
骨の健康のために、カルシウム(牛乳、小魚、豆腐)とビタミンD(きのこ、魚、日光浴)を意識して摂りましょう。運動は、痛みがなくなってから徐々に再開します。医師や理学療法士の指導のもと、股関節のストレッチや筋力トレーニングを行うと再発予防になります。
精神的健康と心の健康
痛みや動きの制限で子どもが不安になったり、イライラしたりすることがあります。親御さんは「大丈夫、治るよ」と温かく声をかけ、遊びや気分転換の工夫をしてあげてください。必要なら学校の先生にも状況を伝え、理解を得ましょう。
予防
すべての股関節痛を予防することはできませんが、肥満を防ぐ、転倒に気をつける、感染症をしっかり治すことでリスクを減らせます。成長期の子どもは特に、無理なスポーツをさせないことも大切です。
検診プログラム
特に定期検診はありませんが、学校の健康診断で歩き方の異常を指摘されることがあります。気になる症状があれば早めに受診しましょう。
合併症
治療しない場合
- 化膿性関節炎が進行すると、関節が破壊され、生涯にわたって歩行障害が残る可能性がある
- ペルテス病を放置すると、大腿骨の頭が変形し、将来変形性股関節症になるリスクが高まる
- 大腿骨頭すべり症が悪化すると、骨が完全にずれて緊急手術が必要になることがある
- 慢性の痛みや歩き方の癖が残り、成長に影響することがある
長期的な見通し
早期に適切な治療を行えば、多くの子どもは後遺症なく回復します。単純性股関節炎は1~2週間で自然に治ります。ペルテス病や大腿骨頭すべり症でも、治療をきちんと受ければ日常生活に大きな支障なく過ごせるようになります。あきらめずに、医師の指示に従ってください。
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最終更新: 2026年7月31日
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