小児の嘔吐
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
子どもが吐くこと(嘔吐)は、さまざまな原因で起こる症状です。多くはウイルス性の胃腸炎(胃や腸にウイルスが感染すること)が原因ですが、そのほかにも食べすぎや乗り物酔い、まれに重い病気が原因の場合もあります。嘔吐は体に悪いものを外に出そうとする防御反応ですが、続くと脱水(体の水分が不足すること)のリスクがあります。
重要な事実
- 子どもの嘔吐で最も多い原因はウイルス性胃腸炎です。
- 嘔吐が続くと脱水になりやすいため、水分補給が大切です。
- 多くの場合は数日で自然に回復しますが、危険なサインを見逃さないことが重要です。
はい、子どもの嘔吐は非常によく見られる症状です。特に乳幼児では感染症が原因で頻繁に起こります。
すべての年齢の子どもに起こり得ますが、特に生後6か月から2歳までの乳幼児や、集団生活をする幼児に多く見られます。
症状
- 意識がぼんやりしている、または呼びかけに反応が悪い
- けいれん(ひきつけ)を起こしている
- 激しい頭痛や首の痛みがある
- 緑色や血液が混じった吐物がある(胆汁や出血の可能性)
- 車や家のものなど、誤って毒物を飲み込んだ可能性がある
- ⚠生後3か月未満の赤ちゃんが繰り返し吐く
- ⚠吐いた後に激しい腹痛が続く
- ⚠8時間以上水分を受けつけない
- ⚠おしっこが12時間以上出ない
- ⚠嘔吐に38℃以上の発熱が伴う
一般的な症状
- 吐き気(むかつき)
- 実際に吐く(嘔吐)
- おなかの痛みや不快感
- 下痢(嘔吐と同時または後に起こることが多い)
子供の症状
- ぐったりしている、元気がない
- 泣いても涙が出ない
- おしっこの量が減る(おむつが6時間以上ぬれない)
- 口の中や唇が乾いている
- 授乳や水分を取ろうとしない
高齢者の症状
- 高齢者には当てはまらない項目です。
原因
主な原因
- ウイルス性胃腸炎(ノロウイルス、ロタウイルスなど)
- 細菌性胃腸炎(サルモネラ菌や病原性大腸菌など)
- 食べすぎや食物アレルギー
- 乗り物酔い
- 頭部外傷(転んで頭を打った後など)
- 虫垂炎(盲腸)や腸重積(腸が重なる病気)などの外科的疾患
リスク要因
- 乳幼児期(免疫が未熟なため感染しやすい)
- 集団生活(保育園や幼稚園に通っている)
- 手洗いが不十分
- 汚染された食べ物や水を口にすること
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上記「緊急症状」に該当する場合
- 生後3か月未満の赤ちゃんが繰り返し吐く
- 水分がまったく取れず、脱水が疑われる
- 吐物に血や胆汁が混じっている
- 強い腹痛やおなかが張っている
定期受診を予約すべき場合:
- 嘔吐が1日以上続くが、水分は少しずつ取れる
- 軽い下痢があるが元気はある
- 嘔吐と同時に発疹が出ている
- 同じ集団で嘔吐の人がいる場合(感染拡大を防ぐため)
診断
医師はお子さんと保護者の方への問診(症状の始まり、吐いた回数、水分摂取状況など)と診察(おなかを触る、喉を見る、顔色や皮膚のつやなど)を行います。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(脱水や炎症の程度を調べる)
- 尿検査(脱水や感染の有無を調べる)
- 腹部エコー(腸重積などがないか確認する)
- 便検査(細菌やウイルスの感染が疑われる場合)
- 必要に応じてCT検査や胃カメラなど
診察で予想されること
多くの場合、診察と問診だけで原因を推測できます。症状が軽ければ検査はあまり行いません。脱水が強い場合は点滴(血管から直接水分と栄養を補給する治療)が必要になることがあります。
治療
嘔吐の治療は原因によって異なりますが、最も大切なのは脱水を防ぐことです。ウイルス性胃腸炎が原因の場合は特別な薬はなく、自然に治るのを待ちつつ水分補給を続けます。
自宅でのセルフケア
- 少量ずつこまめに水分をあげる(小さじ1杯から始め、吐かないことを確認しながら増やす)
- 市販の経口補水液(OS-1など)が最適ですが、なければイオン飲料を薄めて使う
- 吐いた後は口をゆすぎ、清潔な布で拭いてあげる
- 吐いている間は無理に食事をさせず、水分だけにする
- 安静にして、頭を少し高くして寝かせる
- 手洗いや吐物の処理をしっかり行い、感染を広げない
医療治療
医師が必要と判断した場合、脱水に対して点滴(静脈から水分と電解質を補給)を行います。また、細菌感染が疑われる場合は抗生物質が処方されることがあります。ただし、ウイルス性の嘔吐に抗生物質は効きません。吐き気を抑える薬が使われることもありますが、子どもへの使用は慎重に判断されます。いかなる薬も医師の指示に従って使用してください。
手術が検討される場合
虫垂炎(盲腸)や腸重積、胃腸の閉塞など、外科的な病気が原因の場合は手術が必要になることがあります。その場合、医師から詳しい説明があります。
この病気と共に生きる
嘔吐が治まった後も、徐々に食事を再開します。最初はおかゆやうどんなど消化の良いものから始め、脂肪分や乳製品は避けましょう。1~2日で通常の食事に戻せることが多いです。
生活習慣のアドバイス
- 吐いた後は赤ちゃんのおしりを清潔に保つ(おむつかぶれ予防)
- こまめに手洗いを習慣づける
- 使用したタオルや食器は別にする(感染予防)
- 部屋の換気をよくする
食事と運動
嘔吐中は食事を控え、水分補給を優先します。嘔吐が治まったら、普段の食事に徐々に戻します。激しい運動は控え、安静にしましょう。
精神的健康と心の健康
子どもの嘔吐は親にとって心配で疲れるものです。自分を責めず、必要なら家族や周囲に助けを求めましょう。また、子どもが何度も吐くと怖がることもあるので、優しく声をかけ、抱っこして安心させてあげてください。親自身のストレスが高まったら、かかりつけ医や保健センターに相談することも選択肢の一つです。
予防
すべての嘔吐を予防するのは難しいですが、感染症や食中毒による嘔吐は対策で減らせます。
ワクチン
ロタウイルスワクチンは重症の胃腸炎と嘔吐を予防する効果があります。日本では生後2か月から接種が可能です。詳しくはかかりつけ医に相談してください。
検診プログラム
嘔吐を予防するための特別な検診はありません。ただし、定期的な健康診断やワクチン接種の機会に、かかりつけ医に相談するとよいでしょう。
合併症
治療しない場合
- 脱水(体内の水分や電解質が不足する状態)
- 電解質異常(ナトリウムやカリウムのバランスが崩れる)
- 低血糖(エネルギー不足で血糖値が下がる)
長期的な見通し
ほとんどの子どもの嘔吐は、数日で自然に治ります。適切な水分補給と休養で、多くの場合は合併症なく回復します。まれに重い病気が隠れていることもありますが、適切な医療機関を受診すれば治療は可能です。お子さんの様子をよく観察し、心配なときは早めに相談しましょう。
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最終更新: 2026年7月31日
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