急性膵炎からの回復
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
急性膵炎(きゅうせいすいえん)は、膵臓(すいぞう)という食べ物の消化や血糖値の調整をしている臓器に、急に強い炎症が起こる病気です。たんぱく質や脂肪を消化する「消化酵素(しょうかこうそ)」が膵臓の外に漏れ出て、膵臓自身を攻撃してしまうような状態になります。
重要な事実
- 多くの場合、強い腹痛とともに突然始まり、入院が必要になります。
- 治療の中心は「膵臓を休めること」で、食事を一時止めて点滴で栄養を補います。
- 回復には数日から数週間かかり、原因や重症度によって経過が変わります。
あまり頻度は高くない病気ですが、近年はやや増えており、日本では毎年数万人が発症すると考えられています。年齢や飲酒習慣、胆石の有無などによってリスクは変わります。
大人に多く、特に胆石のある方やお酒を多く飲む方に多く見られます。男性にやや多いとされていますが、女性でも発症します。子どもではまれですが、かからないわけではありません。
症状
- 突然の激しいお腹・背中の痛み
- 吐き気や嘔吐に加え、冷や汗や意識がもうろうとする
- 息苦しさをともなう高熱
- 便に血が混じる
- ⚠お腹の痛みが数時間続く、またはだんだん強くなる
- ⚠皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)
- ⚠お腹が異常に張って痛む
一般的な症状
- みぞおちから背中にかけての突然の強い痛み
- 吐き気や嘔吐(おうと)
- 発熱(発熱)
- お腹が張る、圧迫される感じ
- 脈が速くなる、冷や汗
子供の症状
- 泣いたりぐずったりして、お腹の痛みを強く訴える
- 吐き気や嘔吐
- 顔色が悪い、元気がない
高齢者の症状
- 痛みがあまりはっきりしないことがある
- 意識がぼんやりする、うつろになる
- 食欲が落ち、急に元気がない
- お腹の張りや吐き気が続く
原因
主な原因
- 胆石(たんせき)が膵管をふさぐこと
- 過度の飲酒
- 血液中の中性脂肪が非常に高くなること(高トリグリセリド血症)
- 感染症やけがなどの影響
- 一部の薬の副作用(まれ)
- 原因がはっきりしない場合もある
リスク要因
- お酒を毎日多く飲む習慣がある
- 胆石を持っている
- 中性脂肪(血中脂質)が高い
- 家族に膵炎の人がいる
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 突然の激しいお腹の痛みがあって我慢できない
- 吐き気や嘔吐が続く、または食べ物や水分がとれない
- お腹の痛みに加えて発熱や悪寒がある
定期受診を予約すべき場合:
- お腹の痛みが数時間以上続く
- 原因がわからないお腹の不調がある
- 健康診断で膵臓の異常を指摘された
診断
急性膵炎は、医師の診察と血液検査、画像検査によって診断します。血液検査では、膵臓から分泌される「膵酵素(すいこうそ)」の値が上がっているかどうかや、炎症の程度を調べます。超音波やCTで膵臓の腫れや周囲の状態を確認します。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(膵酵素、炎症反応、肝機能など)
- 腹部超音波検査(エコー)
- CT検査
- MRI検査
- 必要に応じて内視鏡検査
診察で予想されること
診断がつくと、多くの場合、入院が必要です。入院中は膵臓を休めるために食事を一時的に止め、点滴で水分や栄養を補いながら回復を待ちます。痛みは最初の数日が最も強く、その後ゆっくりとおさまることが多いです。食事の再開は、血液検査や症状のようすを見て医師が判断します。
治療
急性膵炎の治療の中心は、膵臓を休めることです。食事を止めて点滴で水分や栄養をとる「絶食・安静」が基本になります。また、痛みをしっかりコントロールすることも回復を助けます。炎症の程度によって入院期間は異なりますが、軽症であれば1~2週間で退院できることもあります。
自宅でのセルフケア
- 医師が許可するまで食事を取らない
- お酒は絶対に飲まない(再開は医師の指示に従う)
- 安静を守り、体に負担をかけない
- 体を冷やさず、ゆっくり休む
医療治療
入院中は、血液検査や画像検査で経過を見ながら、水分や電解質を補う点滴、痛みを和らげる薬、栄養の補給(静脈栄養や経管栄養)などが行われます。原因に応じて、胆石を内視鏡で取り除く処置や、中性脂肪を下げる治療が行われることがあります。また、感染を伴う場合には抗生物質が使われることがありますが、どの薬を使うかは医師が慎重に判断します。
手術が検討される場合
まれに、膵臓の周りに液体がたまって感染や出血を起こしたり、胆石が原因で症状が重い場合には、内視鏡的処置や手術(ドレナージ)が必要になることがあります。手術が必要かどうかは、CTやMRIの結果をもとに医師が判断します。
この病気と共に生きる
退院後も、体力が完全に戻るまでは無理をしないことが大切です。徐々に日常生活を再開し、疲れを感じたら休むようにしましょう。お酒はしばらく控える、脂っこい食事を避けるなど、膵臓に負担をかけない生活を心がけてください。
生活習慣のアドバイス
- 禁酒または節酒を徹底する
- 禁煙する(喫煙は再発リスクを高めます)
- 適正体重を維持する
- ストレスをためないよう工夫する
- 規則正しい生活リズムを保つ
食事と運動
食事は、脂質を控えめにし、たんぱく質や野菜をバランスよく摂りましょう。一度に大量に食べるのではなく、1日数回に分けて少量ずつ食べると膵臓への負担が少なくなります。運動は、医師の許可が出てから、ウォーキングなどの軽い運動から始めるのがおすすめです。
精神的健康と心の健康
急性膵炎のあとは、再び痛みが出るのではないかという不安や、飲酒や食事の制限によるストレスを感じることがあります。こうした気持ちは自然なことです。一人で抱え込まず、家族や友人に話したり、医師や看護師、カウンセラーに相談したりして、こころの負担を軽くすることが大切です。
予防
すべての急性膵炎を予防できるわけではありませんが、アルコールを控える、胆石を適切に治療する、中性脂肪を管理する、バランスの良い食事と運動を続けることで、再発のリスクを大きく減らすことができます。
ワクチン
現時点では、急性膵炎そのものを予防するワクチンはありません。
検診プログラム
特に定期的な検診は定められていませんが、胆石や飲酒歴がある方、中性脂肪が高い方は、健康診断で膵臓の検査を受けるよう医師から勧められることがあります。
合併症
治療しない場合
- 膵臓の組織が壊死(えし)する
- 膵臓や周囲の組織に感染が起こる
- 膵臓の周りに液体がたまる(膵仮性のう胞)
- 腎臓、肺、心臓などの多臓器障害
長期的な見通し
急性膵炎は、適切な治療を早く受ければ、多くの方は数週間で回復します。ただし、重症になると生命にかかわることもあるため、強い腹痛や吐き気があったらすぐに受診することが何より大切です。回復後も再発予防に努めれば、多くの方が元の日常生活を取り戻しています。希望を持って、医師と一緒に回復の道を歩んでいきましょう。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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