アルファ-1アンチトリプシン欠乏症
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
アルファ-1アンチトリプシン欠乏症(AAT欠乏症)は、体の中で肺や肝臓を守るために働く「アルファ-1アンチトリプシン」というたんぱく質が足りなくなる、生まれつきの遺伝性の病気です。このたんぱく質が不足すると、肺の組織が傷つきやすくなったり、肝臓に負担がかかったりすることがあります。
重要な事実
- 両親から受け継ぐ遺伝子の変化が原因で起こる、遺伝性の病気です。
- 肺に症状が出るのは主に成人になってから、肝臓に症状が出るのは子どもから大人まで幅広い年齢で見られます。
- 喫煙や有害な煙・粉じんを避けることで、病気の進行を遅らせられる可能性があります。
まれな病気です。正確な人数ははっきりしていませんが、世界中で数千人に1人程度とされており、診断されていない人も多いと考えられています。
両親からそれぞれ受け継いだ遺伝子の両方に変化がある場合に発症します。肺の症状は20~40代で現れることが多く、肝臓の症状は乳幼児期に現れることもありますが、大人になってから見つかる場合もあります。
症状
- 突然、呼吸がとても苦しい
- 血の混じったたんや喀血
- 胸の激しい痛み
- 意識がもうろうとする、あるいは呼びかけに反応しない
- ⚠発熱や悪寒とともに咳・たんが悪化
- ⚠息切れがひどくなり日常動作が困難
- ⚠皮膚や目が黄色くなる、尿がコーラ色
- ⚠おなかが急に張って痛みがある
一般的な症状
- 息切れ(階段や坂道で息が上がる)
- ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音
- 長く続く咳やたん
- 疲れやすさ、体のだるさ
- 風邪や気管支炎を繰り返す
- 皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)
- おなかが張る、むくむ
子供の症状
- 黄疸(皮膚や白目が黄色い)
- 体重が増えにくい、発育が遅い
- おなかの腫れ(肝臓や脾臓の腫れ)
- 便の色が白っぽい、尿の色が濃い
高齢者の症状
- 慢性の咳やたん、息切れ(肺気腫に似た症状)
- 肝臓の障害による疲労感や黄疸
- おなかに水がたまる、むくむ
- 原因不明の体重減少
原因
主な原因
- 遺伝子の変化:両親から受け継ぐアルファ-1アンチトリプシンを作る遺伝子の異常が原因です。遺伝子の両方に変化があると発症します。
- この病気は他人からうつる感染症ではありません。
リスク要因
- 家族にアルファ-1アンチトリプシン欠乏症の人がいる
- 喫煙(本人の喫煙だけでなく、受動喫煙も含む)
- ほこりや化学物質、煙の多い環境での仕事
- アルコールの多量摂取(肝臓に負担をかける)
- ウイルス性肝炎など、肝臓に負担をかける条件の併存
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息苦しさが急に悪化した
- 血が混じったたんや喀血がある
- おなかが急に張って痛みがある
- 黄疸がひどくなった、意識がぼんやりする
定期受診を予約すべき場合:
- 長引く咳やたん、息切れを感じる
- 家族にこの病気の人がいて遺伝子検査を受けたい
- 乳幼児に黄疸や発育の遅れがある
- 健康診断で肝機能の異常を指摘された
診断
血液検査でアルファ-1アンチトリプシンの量を測定し、遺伝子検査で原因となる遺伝子の変化を確認して診断します。肺や肝臓の状態を調べるための画像検査や呼吸機能検査も行われます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(アルファ-1アンチトリプシンの量と働き)
- 遺伝子検査
- 呼吸機能検査(息の吐き出しの強さ)
- 胸部レントゲンやCTなどの画像検査
- 血液検査による肝機能検査、場合によっては肝臓の超音波検査
診察で予想されること
まずは一般的な診察と血液検査から始まり、結果によって遺伝子検査や専門医の紹介へ進みます。診断は時間がかかることもありますが、不安なことは担当医や専門の医療スタッフに何度でも相談できます。
治療
この病気を根本から治す治療法は今のところありませんが、進行を遅らせ、症状を和らげ、生活の質を保つための治療やケアがあります。診断後は、肺の専門医と肝臓の専門医が連携して治療方針を立てることが大切です。
自宅でのセルフケア
- 禁煙・受動喫煙の回避(最も重要です)
- ほこりや煙、化学物質の吸入を避ける
- インフルエンザや肺炎などの予防接種を受ける
- アルコールを控える(特に肝臓の負担を減らすため)
- のどの乾燥を防ぎ、うがいや手洗いなどの感染対策をする
医療治療
症状に合わせて、気管支を広げて呼吸を楽にする吸入薬、炎症を抑える薬、酸素吸入療法、呼吸リハビリテーションなどが行われます。肺の進行した症例では、たんぱく質を補充する治療法(補充療法)が検討されることもあります。薬の種類や治療のタイミングは医師が個別に判断します。
手術が検討される場合
肺の病変が非常に進行し、治療でも改善が難しい場合には肺移植が、肝硬変や肝不全が重い場合には肝移植が検討されることがあります。手術の可否は、年齢や全身状態、病状の進行度をふまえて専門のチームが慎重に判断します。
この病気と共に生きる
毎日の体調の変化を記録し、呼吸状態や疲れ具合に注意しましょう。医師と決めた治療計画を守り、定期健診を欠かさないことが大切です。体調がすぐれない日は無理をせず、休むことも治療の一部です。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙、そして家族や周りの人にも室内での喫煙を控えてもらう
- 空気のきれいな環境づくり:換気、空気清浄機の活用、マスクの使用
- 規則正しい生活と十分な睡眠で免疫力を保つ
- ワクチンを計画的に受ける(かかりつけ医に相談)
- アルコールはできるだけ控える
- ストレスをため込まず、楽しめる活動を見つける
食事と運動
バランスのよい食事を基本に、特にたんぱく質を十分に摂ることが勧められます。運動は、医師や理学療法士の指導のもとで無理のない範囲で行いましょう。軽いウォーキングや呼吸リハビリテーションは、肺機能を維持するのに役立つことがあります。
精神的健康と心の健康
慢性的な病気と向き合うことは、不安や落ち込みを感じることもあります。そうした気持ちはあなただけではなく、多くの人が経験するものです。気分がつらいときは、家族や友人、医療チームに話すことが助けになります。必要に応じて心の専門家のサポートを受けることも検討してください。
予防
この病気は遺伝子が原因のため、発症そのものを防ぐことはできません。しかし、喫煙・受動喫煙を避け、有害な環境を避け、アルコールを控えることで、症状の進行や合併症のリスクを大きく減らすことができます。
ワクチン
インフルエンザや肺炎球菌などの予防接種は、感染症による重症化を防ぐために重要です。特に肺や肝臓に負担をかけないためにも、かかりつけ医と相談して計画的に接種しましょう。
検診プログラム
家族にこの病気の人がいる場合は、症状がなくても血液検査や遺伝子検査で確認できることがあります。気になる場合は、医療機関で相談してみてください。乳幼児の健診で肝機能の異常を指摘された場合も、そのままにせずに専門医を受診しましょう。
合併症
治療しない場合
- 肺気腫や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の進行
- 肝硬変や肝不全などの肝臓の障害
- 繰り返す呼吸器感染症
- 肝臓や肺の機能が低下することによる日常生活の制限
長期的な見通し
診断後も、医師の指導を守り、喫煙せず、感染予防と適切な治療を続ければ、多くの人は長く元気に暮らすことができます。お子さんで見つかった場合も、早い段階から正しく管理すれば、成長や生活にあまり影響が出ないこともあります。希望をもって、一歩ずつ治療とケアを続けていきましょう。
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国際機関
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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