成人期の脳性まひ — 自立した生活のための理解と工夫
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
脳性まひは、生まれる前・生まれるとき・生まれてすぐの時期に、脳に何らかの障害が起きたことで、体の動きや姿勢に影響が出る状態です。進行する病気ではなく、成人になってもその症状は続きます。
重要な事実
- 脳性まひは生まれつきの状態で、時間とともに悪化する病気ではありません。
- 症状の現れ方は人それぞれで、運動が少し苦手な程度から、車いすが必要な場合までさまざまです。
- 成人期には、小さい頃とは違う体の変化や悩みが現れることがあります。
- 適切な支援と工夫があれば、多くの人が充実した社会生活を送ることができます。
日本では約1000人に2~3人の割合で見られるとされています。決して珍しい状態ではありません。
脳性まひは、妊娠中や出産時に脳が障害されることで起こります。男女の差はあまりなく、早産や低出生体重で生まれた子どもに多いことが知られています。
症状
- 以下の症状がある場合は、ためらわずに119番へ電話してください。
- 呼吸が浅く、顔色が青白い
- けいれんが5分以上止まらない、または連続して繰り返し起こる
- 頭を強く打って、意識がもうろうとしている
- 突然、普段とは違う激しい痛みを訴える
- ⚠発熱があり、いつもより元気がない
- ⚠けいれんは止まったが、ぐったりしている
- ⚠転んで痛みが強く、動かせない
- ⚠食事や水分をうまく飲み込めない、むせが続く
一般的な症状
- 筋肉が固くなる(痙性まひ)
- 体がふらつく、バランスが取りにくい
- 自分の意思で止められない動きがある(不随意運動)
- 歩きづらさや手足の動かしにくさ
- ことばの発音が苦手
- 視覚や聴覚の障害を伴うことがある
子供の症状
- 首のすわりや寝返り、おすわり、ハイハイなどの発達が遅れる
- 手足の動きが不自然、または片方の手足ばかり使う
- ミルクの飲み込みが苦手
- 体がぐにゃりと柔らかい、またはぎこちなく固い
- けいれん(てんかん)を伴うことがある
高齢者の症状
- 若い頃から続く筋肉の緊張や関節の使い方の影響で、関節の痛みが出ることがある
- 疲れやすさが増す
- 転倒のリスクが高まる
- 視力や聴力の変化が見られることがある
- 慢性的な痛み(腰痛など)を訴える人が多い
原因
主な原因
- 妊娠中の感染症(風疹など)や母体の病気
- 出産時の酸欠(いわゆる仮死状態)
- 早産児に起こりやすい脳出血
- 生まれた直後の重症な黄疸(こうだん)
リスク要因
- 早産(特に在胎週数32週未満)
- 低出生体重(2500g未満)
- 多胎妊娠(双子など)
- 妊娠中のRh不適合などの血液型の不適合
- 母体の甲状腺疾患や高血圧
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- けいれんや呼吸の変化、意識の低下がある場合は、すぐに119番へ電話してください。
- 転倒などで強い痛みや動かせない場合は、早めに救急外来を受診してください。
定期受診を予約すべき場合:
- 体の痛みやこわばりが続く場合は、定期診療の際に相談してください。
- 物がのみ込みにくい、体重が減ったなどの変化は、かかりつけ医に相談してください。
- 日常生活の支援が必要になった場合は、お住まいの地域の障害福祉課や相談支援専門員に相談してください。
診断
脳性まひの診断は、おもに乳幼児期に行われます。運動発達の様子や体の診察、誕生時のエピソード、画像検査などを総合して判断します。成人になってからの診断では、最近の症状の変化について詳しく問診します。
行われる可能性のある検査
- 神経学的診察(姿勢や反射を見る)
- 頭部のMRIやCT検査
- 聴力や視力の検査
- 日常生活の動作の評価
診察で予想されること
診断は医師の問診と身体診察を中心に行われます。特に、最近の変化(痛み、動きにくさ、けいれんの増加)がある場合は、その原因を調べるための検査が追加されることもあります。不安に感じたら、事前に質問をメモして医師に相談しましょう。
治療
脳性まひを根本から治す治療法はありません。そのため、一人ひとりの症状や生活の目標に合わせて、動きやすさの工夫や合併症の予防、生活支援を組み合わせていくことが大切です。
自宅でのセルフケア
- 毎日のストレッチで筋肉のこわばりをやわらげる
- 温めたタオルなどで筋肉を温めてから動く
- 足の指や手の関節の変形を防ぐために、正しい姿勢を心がける
- 転倒を防ぐため、家の中の手すりや段差の解消を行う
- 無理をしないで、疲れたら休息を取る
医療治療
薬物療法として、筋肉の緊張を和らげる薬はありますが、必ず医師の指導のもとで使用します。注射による治療や、リハビリテーション(理学療法・作業療法・言語療法)も効果的です。専門的な治療は医師が適切かどうか判断します。自己判断で薬を変えずに、必ず相談してください。
手術が検討される場合
関節の変形が強く日常生活に支障がある場合や、痛みが強い場合には、整形外科手術が検討されることがあります。手術の必要性は主治医とリハビリテーション専門医が十分に話し合って決めます。
この病気と共に生きる
成人の脳性まひでは、仕事、家事、趣味、人間関係など、生活のあらゆる場面で自分に合った工夫が求められます。性格や得意な方法を活かして、無理をせず、周囲に助けを求めながら進めていきましょう。
生活習慣のアドバイス
- 定期的な運動(柔軟体操、水泳など)で体力を維持
- 睡眠をしっかり取って、疲れを翌日に持ち越さない
- 仕事や家事の合間に休憩を取る
- 飲み込みやすさに合わせたやわらかな食事の工夫
- パソコンやスマホの音声入力など、便利な道具を活用する
食事と運動
筋肉の動きに個人差があるため、栄養の偏りに注意が必要です。特に便秘になりやすいため、水分と食物繊維を十分に取りましょう。運動は、関節に負担のかからない水中運動やストレッチがおすすめです。医師や理学療法士に相談して、自分に合った量を見つけてください。
精神的健康と心の健康
小さい頃からある障害と向き合いながら、成人期には就労や人間関係、加齢の変化についての不安を抱えることがあります。孤独を感じることもあるかもしれませんが、多くの方が地域でつながりを持ちながら暮らしています。気分の落ち込みが続く場合は、医療機関のほか、地域の精神保健福祉センターなどの相談窓口もあります。悩みを一人で抱え込まないでください。
予防
脳性まひの多くは生まれつきの脳の障害によって起こるため、完全に予防することはできません。ただし、妊娠中のお母さんの健康管理や、早産児への適切な医療により、一部のリスクを減らすことはできます。成人の場合は、転倒や事故による二次的な障害を予防することが重要です。
ワクチン
妊娠中の風疹予防や、髄膜炎などの感染症予防接種は、脳性まひの原因となることを減らすのに役立ちます。予防接種については、かかりつけ医と相談してください。
検診プログラム
新生児の神経発達の評価や、定期的な健康診断で、気になる発達の遅れを早期に発見できることがあります。これにより、早期のリハビリテーションにつなげることができます。
合併症
治療しない場合
- 筋肉のこわばりが続くと、関節が固まって動かしにくくなる(拘縮)
- 飲み込みの障害がある場合、誤嚥性肺炎のリスクが高まる
- 転倒による骨折や頭部外傷
- 運動不足や食事の偏りによる肥満や骨粗しょう症
- 社会的な孤立や気分の落ち込み
長期的な見通し
脳性まひの症状は加齢とともに大きく悪化するものではありません。成人期にこそ、自分に合ったケアや環境調整、支援を活用することで、趣味や仕事、人間関係を充実させることができます。暮らしの中の小さな工夫の積み重ねが、いきいきとした毎日につながります。医療者や支援者と安心して相談しながら、無理のない生活を続けていきましょう。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。