慢性すい炎とよりよく暮らすために
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
慢性すい炎とは、食べ物を消化する働きと血糖(血液中の糖)を調整する働きをになう「すい臓」が、長い年月をかけて炎症をくり返し、固くなって機能がゆっくりと落ちていく病気です。炎症が続くと、消化液が出にくくなったり、インスリン(血糖を下げるホルモン)を作る力が弱まったりします。
重要な事実
- 慢性すい炎は一度進むと元の状態に戻りにくいですが、進行を遅らせることはできます
- 長年の大量飲酒が最大の原因とされています
- お酒をやめることで痛みや症状がおさまることが多いです
- 治療では、消化を助ける薬や痛みを和らげる薬、生活の見直しを組み合わせます
慢性すい炎は、国内では推定で数万人いるとされています。それほど多い病気ではありませんが、診断技術の向上や生活習慣の変化により、近年増加傾向にあると厚生労働省の調査でも報告されています。
40〜60歳の働き盛りの男性に多く、女性より約2〜3倍多いとされます。ただし、女性や若い方、お酒を飲まない方にも起こることがあります。
症状
- 突然、激しいみぞおちの痛みが現れた
- おう吐が続き、水分がとれない
- 真っ黒な便や下血(血液が混じった便)がある
- 意識がもうろうとする、痙攣(けいれん)がある
- ※上記の症状がある場合は、ためらわずに119番へ電話してください
- ⚠みぞおちの強い痛みが数時間以上続く
- ⚠熱が出て腹痛が悪化する
- ⚠皮膚や目が黄色っぽい(黄疸)
- ⚠便の色が白っぽくなる
一般的な症状
- みぞおちや背中の痛み(食事後や飲酒後に強くなることがあります)
- 脂っこい便(油の多い便が水に浮く)
- 体重減少(食欲はあるのにやせる)
- 吐き気や嘔吐
- 腹部の張りやガス
- 血糖値の上昇(糖尿病の症状)
原因
主な原因
- 長年にわたる大量飲酒
- 原因がはっきりしない「特発性」
- 遺伝子の変異による遺伝性のもの
- 自己免疫の異常(自己免疫性すい炎)
- 胆石や胆管の病気による二次性のもの
- 重症の急性すい炎の後遺症
リスク要因
- お酒を多く飲む(特に1日あたり純アルコール60g以上の習慣)
- たばこを吸う
- 家族(血縁者)に慢性すい炎の人がいる
- 脂質異常症や肥満
- 長期間にわたって特定の薬を使っている(医師と相談を)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 激しい腹痛・背中の痛みが突然始まった
- 絶えず吐き気があり、何も食べられない
- 便が真っ黒になる、血が混じる
- 寒気や高熱がある
定期受診を予約すべき場合:
- みぞおちの不快感や違和感が数週間続く
- 体重が理由なく減ってきた
- 油っぽい便や下痢をくり返す
- 健康診断で血糖値やすい臓の酵素(アミラーゼなど)の異常を指摘された
診断
慢性すい炎の診断は、まず医師の問診(症状やお酒・たばこの習慣)と血液検査を行います。その上で、画像検査ですい臓の変化を確かめます。確定診断には、超音波内視鏡(EUS)という詳しい検査が使われることもあります。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(すい臓から出る酵素の値や血糖値を調べます)
- お腹の超音波検査
- CT検査(お腹の断層写真)
- MRI検査/MRCP(すい管や胆管の画像)
- 便中エラスターゼ検査(消化酵素が十分出ているかを調べます)
診察で予想されること
検査の前に食事を控えていただくことがあります。また、画像検査では静脈から造影剤を注射する場合があり、数時間の待ち時間が生じます。結果は数日〜1週間前後で説明されます。痛みを伴う検査の場合は、鎮静剤を使って眠っている間に行うことも多いので、不安は医師に伝えてください。
治療
治療の目標は、すい臓への負担を減らし、痛みや消化不良などの症状をやわらげ、進行を遅らせることです。原因がお酒の場合は、本人の意思と周囲の支援が何よりも治療の決め手になります。
自宅でのセルフケア
- お酒は完全にやめる(医師や支援者と相談して進めましょう)
- 禁煙する
- 脂っこい食事を減らし、1日3食を規則正しく食べる
- 痛みが増すときは無理せず休む
- 服用中の薬は自己判断でやめない
医療治療
消化を助けるための薬(消化酵素薬)、痛みを和らげる薬、吐き気を抑える薬、ビタミン剤など、症状に応じて処方されます。また、糖尿病を合併した場合は、血糖値を管理する治療が加わります。どの薬も、必ず医師の指示に従って用法・用量を守ってください。最新の治療については、主治医や薬剤師に質問してください。
手術が検討される場合
内科的な治療や内視鏡治療で痛みや閉塞が改善しない場合、すい管の詰まりをとる内視鏡治療や、痛みを取るための手術が検討されることがあります。手術が必要になるのは一部の患者さんで、必ず専門の病院でチームで検討されます。
この病気と共に生きる
慢性すい炎は、毎日の生活と深く関係する病気です。お酒をやめること、食事、休養、ストレス管理をひとつずつ整えていくことで、症状の波を小さくし、仕事や家庭生活を続けている方が多くいらっしゃいます。痛みのある日は無理をせず、体からのサインを大切にしましょう。
生活習慣のアドバイス
- 飲酒をやめる(少量でもすい臓には負担になります)
- 禁煙する(喫煙は進行・痛みのリスクを高めます)
- 水分をしっかりとり、こまめに動く
- 睡眠時間を確保する
- 定期的に通院し、血液検査や画像検査を受ける
食事と運動
食事は高たんぱく・適度な脂質・十分なエネルギーを心がけ、一度にたくさん食べるのではなく、1日4〜5回に分けて少量ずつ摂ると消化しやすくなります。お酒はもちろん、脂っこい料理や揚げ物、甘い清涼飲料水は控えめに。運動はウォーキングやストレッチなどの軽い有酸素運動を1日20分程度、体調を見ながら続けるのがおすすめです。栄養状態については管理栄養士の相談を活用しましょう。
精神的健康と心の健康
慢性の痛みや食事制限、将来への不安から、うつ状態になりやすいことも知られています。お酒をやめる必要がある場合も、強いストレスを感じることがあります。そうした気持ちを一人で抱え込まず、医師や看護師、家族、支援者に話してみてください。眠れない、気分が沈む、何も楽しめないと感じたら、早めに相談することが大切です。
予防
慢性すい炎そのものを完全に予防する方法はありませんが、最大の原因である大量飲酒を控えることと禁煙が、発症リスクを大きく減らすことがわかっています。また、急性すい炎を発症した方も、経過をきちんと追うことで慢性化を防ぐことに役立ちます。
ワクチン
慢性すい炎を直接予防するワクチンはありませんが、肺炎やインフルエンザなどの予防接種は、体の炎症を悪化させないためにも検討できます。予防接種についてはかかりつけ医に相談してください。
検診プログラム
慢性すい炎に特化した集団検診はありませんが、お酒を長年多く飲んでいた方や、腹痛や体重減少などの症状がある方は、血液検査や腹部画像検査を受けることで早期発見につながります。
合併症
治療しない場合
- すい臓の機能が低下し、消化不良や栄養不良が進む
- 糖尿病(すい臓性糖尿病)を発症・悪化させる
- すい管の詰まりによる激しい痛みの発作
- 偽のう胞(液体がたまった袋)ができて腹痛や感染を起こす
- まれにすい臓がんのリスクが高まる
長期的な見通し
慢性すい炎はゆっくり進行しますが、診断後も適切な治療と生活の見直しによって、多くの方が長い間安定した生活を送っています。特に飲酒をやめた方では痛みの発作が減ることが確かめられています。医療と毎日の習慣で、未来はまだ変えられます。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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