Chronic thromboembolic pulmonary hypertension awareness
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は、肺の血管に古い血の塊(血栓)が詰まり、肺の血圧が上がってしまう病気です。心臓から肺に血液を送る血管(肺動脈)が狭くなり、心臓に負担がかかります。
重要な事実
- CTEPHは比較的まれな病気ですが、適切な治療で症状が改善する場合があります。
- 深部静脈血栓症(足などの静脈に血の塊ができる病気)の後に起こることが多いです。
- 放置すると心不全など重い合併症を招くため、早期発見・治療が重要です。
- 手術や薬など複数の治療法があり、専門医によるチーム医療が推奨されます。
CTEPHはまれな病気で、日本人の発生頻度は100万人あたり数人程度とされています。肺高血圧症全体の中でも数%を占めるにすぎません。
主に40~60歳の成人に多く見られますが、若い人や高齢者にも起こります。女性より男性にやや多い傾向があります。深部静脈血栓症や肺塞栓症(肺の血管に血栓が詰まる病気)の既往がある方はリスクが高まります。
症状
- 突然の強い息切れで息ができない
- 胸の激しい痛みが続く
- 意識を失った(失神)
- ⚠息切れが急に悪化した
- ⚠足のむくみが急にひどくなった
- ⚠めまいや立ちくらみが頻繁にある
一般的な症状
- 息切れ(特に階段や坂道などの運動時)
- 疲れやすい、だるさが続く
- 足やくるぶしのむくみ(浮腫)
- 胸の痛みや圧迫感
- めまいや失神(気を失う)
子供の症状
- 子どもでは息切れや疲れやすさに加え、成長の遅れや顔色が悪いなどの症状が出ることがあります。
高齢者の症状
- 高齢者ではもともとの持病(心臓病や肺の病気)と症状が重なるため、見逃されやすいです。特に体力の低下や食欲不振など、全身の衰えとして現れることもあります。
原因
主な原因
- CTEPHの主な原因は、深部静脈血栓症(DVT)でできた血栓が血流に乗って肺に飛び、肺動脈に詰まって古く固まることです。この血栓が炎症や線維化を起こし、血管が狭くなります。
- 一部の人では、血栓が自然に溶けずに肺高血圧症を引き起こします。
リスク要因
- 深部静脈血栓症や肺塞栓症の既往がある
- 長時間の安静(手術後や長距離旅行など)
- がんや炎症性腸疾患などの持病がある
- 妊娠や経口避妊薬の使用(血液が固まりやすくなる)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 突然の呼吸困難がある
- 胸の痛みや圧迫感が続く
- 意識を失った、またはめまいで倒れそうになる
定期受診を予約すべき場合:
- 運動時の息切れが数週間以上続いている
- 原因がわからない疲れやむくみがある
- 深部静脈血栓症や肺塞栓症と診断されたことがある方で、息切れが気になる
診断
CTEPHの診断は、症状や身体診察に加えて、いくつかの検査を組み合わせて行われます。肺高血圧症の専門医がチームで診断を確定します。
行われる可能性のある検査
- 問診と身体診察(聴診やむくみの確認など)
- 血液検査(BNPやNT-proBNPなどの心不全マーカー)
- 心臓超音波検査(心エコー)
- 肺換気血流シンチグラフィ(肺の血流分布を調べる検査)
- CT検査(肺動脈の状態を画像で見る)
- 右心カテーテル検査(肺動脈の圧を直接測定する検査)
診察で予想されること
診断には数日から数週間かかることがあります。検査の一部(右心カテーテルなど)は入院が必要です。痛みを伴う検査ではありませんが、不安があれば医師や看護師に相談してください。診断が確定すれば、専門医があなたに合った治療計画を立てます。
治療
CTEPHの治療は、原因となる血栓を取り除く手術(肺動脈内膜摘除術)と、薬や酸素療法などの内科的治療があります。治療は専門の医療チーム(心臓外科医、循環器内科医、呼吸器内科医、理学療法士など)が中心となって進められます。
自宅でのセルフケア
- 医師の指示に従い、定期的に通院して経過観察を受ける
- むくみや息切れの悪化に注意し、症状日記をつける
- 過度な運動や重い荷物を持つことを避ける
- 禁煙する(肺や血管への負担を減らす)
- 感染予防(インフルエンザや肺炎球菌の予防接種について医師に相談する)
医療治療
内科的治療としては、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)や、肺動脈の圧を下げる薬(肺血管拡張薬)、酸素吸入などが用いられます。これらの薬は症状の改善や病気の進行を遅らせる効果が期待できます。ただし、薬の選択や組み合わせは病状や体質によって異なるため、医師の指示を必ず守ってください。
手術が検討される場合
肺動脈内膜摘除術(Pulmonary Endarterectomy)は、CTEPHに対する根本的な治療法の一つです。手術が可能な方では、症状が大きく改善することがあります。手術の適応は、血栓の位置や全身状態によって専門医が慎重に判断します。
この病気と共に生きる
CTEPHと診断されても、適切な治療を続ければ日常生活を送ることができます。息切れや疲れが続くこともあるため、無理をせず自分のペースで活動しましょう。疲れたら休む、階段の使用を控えるなど、生活の工夫が大切です。定期的な通院と服薬を忘れずに行ってください。
生活習慣のアドバイス
- 適度な運動(医師の許可を得た範囲でウォーキングなど)
- 塩分を控えたバランスのよい食事
- 十分な睡眠と休息
- ストレス管理(趣味やリラックス法を取り入れる)
- 体重管理(肥満は心臓に負担をかけるため)
食事と運動
塩分を控えることでむくみや血圧の上昇を抑えられます。また、水分を適切に摂ることも大切ですが、心不全がある場合は医師と相談して水分量を調整してください。運動は医師の指示に従い、短時間の軽い運動から始めましょう。運動中に息苦しくなったらすぐに中止し、休んでください。
精神的健康と心の健康
CTEPHは慢性の病気であり、将来への不安や息切れによるストレスから、うつや不安を感じることがあります。気持ちがつらい時は、一人で抱え込まずに主治医や看護師、家族に相談しましょう。必要に応じて、心理カウンセラーや精神科医のサポートを受けることもできます。
予防
CTEPHそのものを完全に予防する方法はありませんが、深部静脈血栓症(DVT)を予防することでリスクを下げられます。DVTの予防法としては、長時間同じ姿勢を避けてこまめに足を動かす、水分を十分に摂る、弾性ストッキングを使用するなどがあります。また、DVTや肺塞栓症の既往がある方は、医師の指導のもと抗凝固薬を適切に使用することが重要です。
ワクチン
インフルエンザや肺炎球菌の予防接種は、呼吸器感染症を防ぎ、CTEPHの悪化を予防する上で推奨されます。接種については医師に相談してください。
検診プログラム
定期的なスクリーニング検査は一般的には行われていませんが、肺塞栓症の後などリスクの高い方は、医師の判断で心臓超音波検査などが行われることがあります。
合併症
治療しない場合
- 肺高血圧症の進行による心臓への負担(右心不全)
- 不整脈(特に心房細動)
- 心不全の悪化による全身のむくみや臓器障害
- 突然死のリスク上昇
長期的な見通し
CTEPHは治療により症状が改善し、多くの方が通常の生活に近い状態を取り戻せます。特に手術が可能な方では、長期の予後が大きく改善します。治療が続けられない場合でも、内科的治療で症状の進行を遅らせることができます。早期に適切な治療を開始することで、より良い経過が期待できます。あきらめずに専門医と一緒に治療を続けましょう。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月17日
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