Coeliac disease living in pregnancy
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
セリアック病(小麦アレルギーではない自己免疫疾患)は、小麦や大麦などに含まれるグルテンというたんぱく質に対して体の免疫システムが過剰に反応し、小腸にダメージを与える病気です。妊娠中はこの病気が母体と赤ちゃんに影響を与える可能性があるため、適切な管理が重要です。
重要な事実
- セリアック病は遺伝的な要素が強く、家族内で発症することがあります。
- グルテンを避ける食事(グルテンフリー食)が唯一の治療法です。
- 妊娠中でもグルテンフリー食を続けることで、多くの女性が健康な妊娠・出産を経験できます。
日本では比較的まれな病気ですが、近年診断技術の向上により報告が増えています。世界的には約100人に1人が罹患するとされています。
遺伝的に感受性のある人(HLA-DQ2またはDQ8遺伝子を持つ人)がグルテンを摂取することで発症します。成人女性では妊娠可能年齢での診断が多く、妊娠を機に発見されることもあります。
症状
- 激しい腹痛や腹部の激しい張り
- 大量出血(吐血や下血)
- 妊娠中の激しい腹痛や出血(早産の兆候の可能性)
- ⚠持続する吐き気や嘔吐で水分が取れない
- ⚠重度の疲労やめまい(貧血が悪化した可能性)
- ⚠胎動の減少(妊娠後期)
一般的な症状
- 慢性的な下痢や便秘
- 腹部膨満感やガス
- 疲労感や貧血(鉄欠乏)
- 体重減少や栄養吸収不良
子供の症状
- 成長の遅れや低身長
- 慢性的な腹痛や腹部膨満
- イライラや精神的発達の遅れ
- 貧血や骨の弱さ
高齢者の症状
- 症状が軽いか無症状の場合がある
- 原因不明の貧血や骨粗しょう症
- 疲労や抑うつのような非特異的症状
原因
主な原因
- 遺伝的要因(HLA-DQ2/DQ8遺伝子を持つ人)
- グルテンの摂取が引き金となり、免疫系が小腸の絨毛を攻撃する
- 環境因子(感染症やストレスが発症に関与する場合がある)
リスク要因
- 家族にセリアック病や1型糖尿病などの自己免疫疾患がある
- ダウン症やターナー症候群などの染色体異常
- 早期にグルテンを導入した(乳児期)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 妊娠中にグルテンを誤って摂取し、強い腹痛や下痢が続く
- 貧血や体重減少が急速に進行している
- 胎動が少ない、または赤ちゃんの成長が心配
定期受診を予約すべき場合:
- 妊娠を計画している、または妊娠初期にセリアック病の診断を受けた
- 慢性的な消化器症状(下痢、便秘、膨満)が続く
- 妊娠中に栄養状態(ビタミンB12、鉄、葉酸など)のチェックが必要
診断
血液検査で特定の抗体(組織トランスグルタミナーゼ抗体など)を調べ、陽性の場合は上部内視鏡検査で小腸の組織を採取し確定診断します。妊娠中でもこれらの検査は安全に行えます。
行われる可能性のある検査
- 血液抗体検査(IgA型tTG抗体など)
- 上部消化管内視鏡検査と小腸生検(確定診断のため)
- 遺伝子検査(HLA-DQ2/DQ8)は補助的に使われる
診察で予想されること
診断までは通常数週間かかります。妊娠中は症状や栄養状態を評価しながら検査を進めます。医師や管理栄養士がサポートします。
治療
治療の基本は生涯にわたる厳格なグルテンフリー食です。グルテンを含む小麦、大麦、ライ麦を完全に避けます。妊娠中は特に栄養バランスに注意し、必要な場合は栄養補助食品を医師の指示で使用します。
自宅でのセルフケア
- すべての食品ラベルを確認し、グルテンが含まれていないかチェックする
- 外食時は調味料や加工食品に注意する(日本では醤油やみりんにも小麦が含まれることが多い)
- キッチンでの交差汚染を防ぐ(専用の調理器具やまな板を使う)
- 妊娠中は葉酸、鉄、カルシウム、ビタミンDなどの栄養素を十分に摂る
医療治療
薬物療法はなく、グルテンフリー食が中心です。妊娠中は栄養士による食事指導を受け、必要に応じて鉄剤や葉酸などのサプリメントを医師が処方することがあります(ただし一般名のみでブランド名は記載しません)。
手術が検討される場合
通常、手術は必要ありません。ただし、まれに重度の栄養不良や合併症(小腸潰瘍やリンパ腫)が発生した場合、外科的治療が検討されることがありますが、妊娠中は基本的に行われません。
この病気と共に生きる
グルテンフリー食を続けることが日常生活の中心になります。日本では米、野菜、魚、肉などの自然食品を中心に食べると安心です。醤油の代わりにグルテンフリーの醤油(たまり醤油など)を選びます。
生活習慣のアドバイス
- 食品の原材料表示を必ず確認する習慣をつける
- 外食時は事前にレストランに相談し、グルテンフリー対応の有無を確認する
- 旅行の際はグルテンフリー食品を持参するか、現地の情報を調べておく
- 妊娠中は定期的に体重や栄養状態をチェックする
食事と運動
グルテンフリー食に加え、妊娠中の適度な運動(ウォーキングなど)が推奨されます。栄養状態が良い場合は医師に相談して運動を続けましょう。特に葉酸、鉄、カルシウム、ビタミンDが不足しやすいので、食事で補うように心がけます。
精神的健康と心の健康
妊娠中に食事制限があると、ストレスや孤独感を感じることがあります。特に家族や周囲の理解を得にくい場合、不安が強くなることもあります。
予防
セリアック病そのものを予防する方法はありません。しかし、診断後にグルテンフリー食を徹底することで、妊娠中の合併症を予防できます。
検診プログラム
日本では一般的なスクリーニングは推奨されていませんが、家族にセリアック病患者がいる場合や、症状がある場合は医師に相談するとよいでしょう。
合併症
治療しない場合
- 栄養不良(鉄欠乏性貧血、葉酸不足、カルシウム不足)
- 早産や低出生体重児のリスク増加
- 流産のリスクがわずかに上昇
- 胎児の発育遅延
長期的な見通し
妊娠中もグルテンフリー食をきちんと守れば、多くの女性が健康な赤ちゃんを出産できます。診断後の適切な管理により、セリアック病がある方でも妊娠・出産のリスクは一般の妊婦とほぼ同じになります。希望を持って取り組みましょう。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月20日
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