Deep vein thrombosis calf
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)は、ふくらはぎなどの深いところにある静脈(心臓に血液を戻す血管)に血液の塊(血の塊、血栓)ができる病気です。この血栓が大きくなったり、はがれて肺に流れたりすると危険な状態になることがあります。
重要な事実
- 深部静脈血栓症は「エコノミークラス症候群」としても知られ、長時間同じ姿勢でいると起こりやすくなります
- 適切な治療をしないと、血栓が肺に飛んで肺塞栓症(はいそくせんしょう)という重い合併症を起こすことがあります
- 早期に発見して治療すれば、多くの場合、問題なく回復できます
日本では、年間約1万人に1人程度の割合で発症するとされています。特に高齢になるほどリスクが高まります。
深部静脈血栓症はどんな年齢の方でも起こり得ますが、特に40歳以上の方、手術後やけがで動けなくなった方、がんの治療中の方、妊娠中や産後の方に多く見られます。
症状
- 突然の息切れや呼吸が苦しい
- 胸の激しい痛み(特に深呼吸や咳で悪化する)
- 血の混じったせきが出る
- 意識を失いそうになる、または失神した
- ⚠ふくらはぎの腫れや痛みが急にひどくなった
- ⚠足全体が紫色になる、または冷たくなる
- ⚠発熱(38度以上)とともにふくらはぎが異常に腫れる
一般的な症状
- ふくらはぎの片側だけが腫れる
- ふくらはぎに痛みやつっぱり感がある(特に足を曲げたり伸ばしたりするとき)
- 腫れた部分の皮膚が赤くなったり、熱っぽくなったりする
- 触ると痛む、または圧迫感がある
子供の症状
- 子どもたちでは症状がはっきりしないことが多く、安静時に片足が腫れる、歩くと足が痛いと訴えることがあります
高齢者の症状
- 高齢者では、腫れや痛みが軽いこともあり、疲れや関節痛と間違われることがあります。片足だけの腫れに注意が必要です。
原因
主な原因
- 長時間同じ姿勢を続ける(飛行機や車での長距離移動、長時間のデスクワークなど)
- 血管の内側を傷つける(けがや手術によるもの)
- 血液が固まりやすくなる(遺伝的な要因や病気、脱水、エストロゲンを含む薬の使用など)
リスク要因
- 肥満(体重が重いと脚の静脈に負担がかかる)
- 喫煙(血管を傷つけ、血液を固まりやすくする)
- 妊娠や産後(女性ホルモンの変化や子宮による静脈の圧迫)
- 最近の大きな手術、特に腰や膝、脚の手術
- がんで治療中(特に化学療法中)
- 過去に深部静脈血栓症や肺塞栓症になったことがある
- 加齢(特に60歳以上)
- 静脈瘤(じょうみゃくりゅう)や心臓病など循環器系の病気
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 片方のふくらはぎが急に腫れて痛い
- 息苦しさや胸の痛みがある(上記の緊急症状がない場合でもすぐに受診)
- 足の腫れに加えて、熱がある
定期受診を予約すべき場合:
- ふくらはぎの腫れや痛みが数日続いている
- 原因がはっきりしない足のむくみが続く
- 過去に血栓症になったことがあり、予防について相談したい
診断
医師は問診(症状や生活習慣、病歴を聞く)と身体診察(腫れや痛みの確認)を行います。さらに、画像検査で血栓の有無を確認します。
行われる可能性のある検査
- 超音波検査(エコー):最も一般的な検査で、静脈を圧迫して血栓があるかどうかを調べます。痛みはなく、安全です。
- 血液検査(D-ダイマー):血栓ができると増える物質を調べます。数値が正常範囲なら血栓の可能性は低いと判断できます。
- 静脈造影(CTやMRIを使うこともある):造影剤を使って静脈をくっきり映し、血栓を直接確認します。
診察で予想されること
まずは自覚症状を詳しく医師に伝え、足の診察を受けます。必要に応じて超音波検査や血液検査を行い、結果はその日か翌日にはわかることが多いです。痛みを伴う検査はほとんどありません。
治療
治療の主な目的は、血栓が大きくなるのを防ぎ、はがれて肺に飛ぶのを防ぐことです。ほとんどの場合、お薬(抗凝固薬と言われる、血液を固まりにくくする薬)による治療を数か月間行います。
自宅でのセルフケア
- 医師から指示された場合は、弾性ストッキング(着圧ソックス)を着用してむくみを軽減する
- 足を高くして休む(寝るときに足の下に枕を置くなど)
- 安静が必要な場合と、動いてよい場合があるので、医師の指示に従う
- 水分を十分にとる(脱水は血栓を固まりやすくする)
医療治療
主に血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)を服用します。最初は注射薬を使い、その後は飲み薬に切り替えることが多いです。治療期間は一般的に3~6か月間ですが、原因や再発リスクによってはそれ以上続けることもあります。薬の種類や服用の仕方については、かかりつけ医や専門医の指示を必ず守ってください。
手術が検討される場合
ごくまれに、大きな血栓が脚の血流を完全に止めてしまう場合や、薬が効かない場合に、カテーテル(細い管)を使って血栓を取り除く手術が行われることがあります。緊急時以外はまず薬による治療が優先されます。
この病気と共に生きる
治療中は医師の指示通りに薬を飲み続けることが大切です。定期的に通院して血液検査を受け、薬の量を調整してもらいます。弾性ストッキングを履く場合は、朝起きたときにはくとうまくむくみを抑えられます。
生活習慣のアドバイス
- 喫煙している方は禁煙を検討する(喫煙は血栓リスクを高めます)
- 長時間同じ姿勢を避け、こまめに立ち上がって歩く、足首を動かす
- 脱水に気をつけてこまめに水分補給をする(1日1.5~2リットル程度を目安に)
- 体重が気になる方は、適正体重を目指す
食事と運動
特別な食事制限は必要ありませんが、バランスの良い食事(野菜、果物、魚、全粒穀物など)を心がけましょう。運動は、医師の許可が出ればウォーキングなど軽い有酸素運動から始めてください。激しい運動や脚に負担のかかる運動は避けてください。
精神的健康と心の健康
血栓症と診断されると、「また起こるのでは」「薬をずっと飲み続けるのが不安」といった気持ちになることがあります。こうした不安は自然なものです。気持ちがつらいときは、家族や医療スタッフに話してみてください。
予防
完全に防ぐことはできませんが、リスクを大きく下げることは可能です。長時間動かないときはこまめに足を動かす、水分をしっかりとる、禁煙する、肥満を予防・改善することが基本です。手術後などリスクが高いときは、医師が予防的に弾性ストッキングや血液をサラサラにする薬を使うことがあります。
ワクチン
深部静脈血栓症そのものを予防するワクチンはありません。
検診プログラム
特に症状のない一般の人に対して定期的な検査は推奨されていません。ただし、過去に血栓症を起こしたことがある方や家族歴がある方は、医師に相談して必要に応じて検査を受けることがあります。
合併症
治療しない場合
- 肺塞栓症(はいそくせんしょう):血栓がはがれて肺の血管に詰まり、呼吸困難や胸痛を引き起こす。命に関わることもある。
- 血栓後症候群(けっせんごしょうこうぐん):血栓が治った後に、慢性的な脚のむくみ、痛み、皮膚の色の変化、潰瘍(かいよう)ができることがある。
長期的な見通し
適切な治療を受ければ、ほとんどの場合、深部静脈血栓症は治り、合併症も予防できます。治療後も再発を防ぐために生活習慣に気をつけ、定期的に医師のフォローを受けることが大切です。希望を持って治療に取り組みましょう。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月17日
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