深静脉血栓(DVT)の回復と日常生活
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
深静脉血栓(DVT)とは、脚や骨盤などの体の深いところにある静脈に血のかたまり(血栓)ができる病気です。血栓は血液の流れを邪魔したり、はがれて肺に飛ぶと危険なことがあります。治療と適切な生活で、多くの人が回復します。
重要な事実
- 治療をすれば、ほとんどの人が合併症なく回復します。
- 抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)を数か月から半年以上使うことが多いです。
- 運動や弾性ストッキング(着圧ソックス)が回復を助けます。
- 再発を防ぐために生活習慣の見直しが大切です。
日本では毎年多くの人が発症する、比較的よくある病気です。特に高齢者や入院中・手術後の方に多く見られます。
主に成人、特に40歳以上、活動が少ない方、手術後、がん治療中、妊娠中・出産後の女性に起こりやすいです。
症状
- 突然の息苦しさや呼吸困難
- 胸の痛み(特に深呼吸やせきで悪化)
- 血を伴うせき
- 失神や意識がもうろうとする
- ⚠脚の痛みや腫れが急にひどくなった
- ⚠脚の皮膚が青白くなった、または冷たく感じる
- ⚠軽い息切れや胸の違和感が続く
一般的な症状
- 片方の脚が急に腫れる
- 脚の痛みや重だるさ(ふくらはぎに多い)
- 皮膚が赤くなったり、触ると熱っぽい
- 脚の表面の血管が目立つ
子供の症状
- 子どもでは症状がわかりにくいことがあります。脚の腫れや痛みをはっきり言えない場合、不機嫌や歩き方の変化に注意しましょう。
高齢者の症状
- 高齢者では脚のむくみや痛みが軽い場合があり、疲れや老化と間違えやすいです。急に歩きにくくなった、脚がいつもより太くなったと感じたら受診を。
原因
主な原因
- 血液の流れが遅くなる(長時間座ったまま、寝たきりなど)
- 血管の内側が傷つく(けが、手術、カテーテルなど)
- 血液が固まりやすくなる(遺伝、がん、ホルモン薬など)
リスク要因
- 長時間のフライトや車の移動
- 大手術やけが(特に脚や腰の手術)
- がんやがん治療
- 肥満(BMIが高い)
- 妊娠、出産後すぐ
- 経口避妊薬やホルモン補充療法
- 年齢が60歳以上
- 過去にDVTや肺塞栓症を起こしたことがある
- 血液を固まりやすくする遺伝性の病気
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上記の緊急症状(息苦しい、胸の痛み、血のせき)があればすぐに119番
- 脚の急な腫れや痛みが強く、歩けないほどであれば当日の受診を
定期受診を予約すべき場合:
- 脚に原因不明の腫れや痛みが数日続く
- むくみがだんだん強くなる
- DVTと診断された後、治療中に症状が悪化した
診断
医師が症状やリスクを聞き、脚の診察をします。必要に応じて、超音波検査(エコー)や血液検査を行います。
行われる可能性のある検査
- 超音波検査(静脈の血流や血栓の有無を見ます)
- Dダイマー血液検査(血のかたまりができているかどうかの目安)
- 必要に応じて、造影CTやMRI(詳しい画像診断)
診察で予想されること
検査は痛みがなく、ほとんどの場合30分以内に終わります。結果はすぐにわかることもあれば、数時間~数日かかることもあります。医師が結果を説明し、治療方針を決めます。
治療
主な治療は抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)を使い、血栓が大きくなるのを防ぎ、体が自然に溶かすのを助けることです。治療期間は通常3~6か月以上で、原因によっては長期にわたることもあります。
自宅でのセルフケア
- 指示された弾性ストッキング(着圧ソックス)を毎日履く
- 脚を心臓より高く上げて休む(寝るときも枕で高く)
- 水分を十分にとり、脱水を避ける
- 医師の許可があれば、適度に歩いたり脚の運動をする
- 抗凝固薬を飲むときは、けがや出血に注意し、違和感があればすぐに医師に連絡する
医療治療
抗凝固薬は内服または注射で使います。薬の種類や量は血栓の場所や重症度、ほかの病気によって医師が決めます。治療中は定期的に血液検査(PT-INRなど)で効果と安全性を確認します。場合によっては、カテーテルで血栓を溶かす治療や、肺に血栓が飛ばないようにするフィルター(下大静脈フィルター)を入れることもあります。
手術が検討される場合
まれに、血栓を取り除く手術(血栓摘除術)が必要になることがあります。これは薬で効果がないほど重症な場合や、脚の血流が著しく悪いときに行われます。
この病気と共に生きる
抗凝固薬を決められた時間に飲み続けることが基本です。弾性ストッキングは日中は着用し、夜は外してもかまいません。こまめに脚を動かし、長時間座ったままや立ったままにならないようにしましょう。出血に注意し、歯磨きはやわらかい歯ブラシを使うなど、ケガをしないよう心がけてください。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙する(喫煙は血栓のリスクを高めます)
- 定期的に軽い運動(散歩、ストレッチなど)を医師の許可のもと行う
- 長時間のフライトや車移動のときは、こまめに席を立ち、足首を回すなどする
- 水分をしっかりとり、脱水を防ぐ
食事と運動
バランスのよい食事をとりましょう。特にビタミンKを多く含む食品(納豆、緑黄色野菜など)は抗凝固薬の効果に影響するため、量や頻度を急に変えず、医師や管理栄養士に相談しながら食べてください。運動はウォーキングや水中歩行など、脚に負担が少ないものがおすすめです。
精神的健康と心の健康
DVTの回復中は、血栓が再発しないか、出血が起きないかと不安を感じることがあります。また、治療の長期化や生活の制限にストレスを感じる方もいます。そうした気持ちは自然なことです。一人で抱え込まず、医師や看護師、家族に相談しましょう。
予防
完全に防ぐことはできませんが、リスクを減らすことはできます。長時間動かないときはこまめに足を動かす、適正体重を保つ、水分をしっかりとる、禁煙するなどが大切です。手術後は医師の指示に従い、早期から歩くなどして血流を促します。
合併症
治療しない場合
- 肺塞栓症(血栓が肺の血管に詰まり、息苦しさや胸の痛みを起こす。命に関わることもある)
- 血栓後症候群(脚の慢性的な腫れ、痛み、色素沈着、潰瘍など、治療が遅れると後遺症が残ることがある)
- 血栓の再発
長期的な見通し
早期に診断して適切な治療を受ければ、ほとんどの人は合併症なく回復します。治療後も再発予防のために生活習慣や経過観察が大切ですが、多くの人が日常生活に戻ることができます。希望を持って、医師と一緒に管理を続けましょう。
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最終更新: 2026年7月30日
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