妊娠中の深部静脈血栓症(DVT)の回復について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
深部静脈血栓症(DVT)は、体の深いところにある静脈(特に脚)に血栓(血の塊)ができる病気です。妊娠中は血液が固まりやすくなり、また大きくなった子宮が血管を圧迫するため、DVTのリスクが高まります。適切な治療を受ければ、ほとんどの方は元気に回復できます。
重要な事実
- 妊娠中はDVTになるリスクが通常の5~10倍に上がります。
- DVTの治療には、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)が使われます。
- 放置すると血栓が肺に飛ぶ肺塞栓症(はいそくせんしょう)という命に関わる状態になることがあります。
- 妊娠中のDVTは適切に管理すれば、多くの女性が健康な赤ちゃんを出産できます。
妊娠中のDVTは比較的まれですが、妊娠していない女性に比べるとリスクは高くなります。特に産後6週間以内はリスクが最も高まります。
妊娠中のどの女性にも起こりえますが、特に肥満、高齢出産、多胎妊娠、帝王切開、過去に血栓症の既往がある方でリスクが高まります。
症状
- 突然の息苦しさや呼吸が速くなる
- 胸の痛み(特に息を吸うと悪化する)
- 血の混じった咳
- 意識がもうろうとする、または失神する
- ⚠脚の腫れや痛みが急にひどくなる
- ⚠脚の皮膚が紫色や青白くなる
- ⚠発熱を伴う脚の赤みや熱感
一般的な症状
- 片方の脚(特にふくらはぎや太もも)が急に腫れる
- 脚の痛みや圧痛(押すと痛い)
- 皮膚が赤くなったり、温かく感じる
- 脚の重だるさやつっぱり感
子供の症状
- 子どもにDVTが起こることは非常にまれですが、症状は大人と似ています:脚の腫れ、痛み、皮膚の色の変化など。
高齢者の症状
- 高齢者では症状がわかりにくいことがあり、脚のむくみや痛みを加齢によるものと間違えやすいです。また、動けなくなることでリスクが高まります。
原因
主な原因
- 妊娠に伴う血液の凝固能の亢進(血が固まりやすくなる)
- 大きくなった子宮による骨盤内の静脈の圧迫
- 妊娠中の運動不足や安静による血流の滞り
リスク要因
- 肥満(BMI 30以上)
- 35歳以上の高齢出産
- 多胎妊娠(双子など)
- 帝王切開での出産
- 過去のDVTや肺塞栓症の既往
- 遺伝性の血液凝固異常
- 長期間の安静(床安静など)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上記の緊急症状(突然の息苦しさなど)がある場合
- 脚の症状が急に悪化した場合
定期受診を予約すべき場合:
- 妊娠中に脚のむくみや痛みが続く場合
- DVTと診断された後の定期的な経過観察
- 産後も症状が続く場合
診断
医師が症状やリスクを評価した上で、画像検査を行います。妊娠中でも安全に行える検査が優先されます。
行われる可能性のある検査
- 超音波検査(エコー):脚の静脈の血流を調べ、血栓の有無を確認します。
- 血液検査(Dダイマー):血栓ができていると数値が上がることがありますが、妊娠中は自然に上がるため、単独では診断できません。
- MRIやCTが必要になることもありますが、妊娠中は放射線の影響を考慮して慎重に行われます。
診察で予想されること
まず産科医と循環器内科医が連携して診断を進めます。検査は痛みを伴わないものが多く、結果はその場である程度わかることもあります。診断が確定したら、速やかに治療が始まります。
治療
DVTの治療の中心は、血栓が大きくなるのを防ぎ、肺に飛ばないようにする薬(抗凝固薬)です。妊娠中でも安全に使える薬が選ばれます(ただし、特定の薬は避けられます)。治療は通常、出産後も一定期間続けられます。
自宅でのセルフケア
- 医師の指示に従って、弾性ストッキング(着圧ソックス)を正しく着用する。
- 脚を高くして休む(心臓より高い位置に)。
- 長時間同じ姿勢を避け、こまめに動く(歩く、足首を回すなど)。
- 水分をしっかりとる(脱水は血液を濃くするため)。
- 喫煙は避ける(血管を傷つける)。
医療治療
治療には、血液を固まりにくくする注射薬や内服薬が使われます。妊娠中は胎盤を通らない種類の薬が選ばれます。投与量は定期的に血液検査で調整します。治療期間は出産後も含めて数か月間続くことが一般的です。薬の種類や量は必ず医師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
非常にまれですが、薬で血栓が溶けない場合や肺塞栓症のリスクが高い場合は、カテーテルを使って血栓を取り除く手術(血栓除去術)や、下大静脈(かだいじょうみゃく)にフィルターを留置する処置が検討されることがあります。妊娠中の手術はリスクが高いため、慎重に判断されます。
この病気と共に生きる
DVTの治療中は、日常生活で血栓が悪化しないように注意しながら過ごします。医師から指示された弾性ストッキングを毎日履き、脚の症状(腫れや痛み)をチェックしましょう。旅行など長距離の移動がある場合は、事前に医師に相談してください。
生活習慣のアドバイス
- 毎日軽い運動(ウォーキングなど)を心がける。
- 長時間座ったり立ったりしない。
- 寝るときは脚を少し高くする。
- 十分な水分補給をする。
- 禁煙を徹底する。
食事と運動
特別な食事制限はありませんが、バランスの良い食事を心がけ、塩分を控えめにすることでむくみを軽減できます。運動はウォーキングや妊婦向けのストレッチなど、無理のない範囲で行いましょう。激しい運動は避けてください。
精神的健康と心の健康
DVTの診断や治療は、妊娠中という時期もあり、不安やストレスを感じることがあるかもしれません。感情を一人で抱え込まず、パートナーや家族、医療者に相談してください。必要に応じて、心のケアの専門家(カウンセラーなど)のサポートも検討しましょう。
予防
完全に予防することはできませんが、リスクを減らすことは可能です。妊娠中は適度な運動、水分補給、長時間の安静を避けることが大切です。また、DVTのリスクが高い方は、医師と相談の上、予防的に弾性ストッキングを着用したり、血液をサラサラにする薬の使用を検討することもあります。
ワクチン
DVTを予防するワクチンはありません。
検診プログラム
妊娠中の全ての女性にDVTのスクリーニング検査が推奨されているわけではありませんが、リスクが高い方は医師が個別に評価を行います。
合併症
治療しない場合
- 肺塞栓症(肺の血管に血栓が詰まる):突然の呼吸困難や胸痛を引き起こし、命に関わることがあります。
- 血栓後症候群:治った後も脚の慢性的な腫れ、痛み、皮膚の変色が残ることがあります。
- 深部静脈不全:静脈の弁が傷つき、血液の逆流が起こることで症状が長引くことがあります。
長期的な見通し
適切な治療を早く受ければ、DVTの予後は良好です。妊娠中でも安全な治療法があり、多くの女性が合併症なく回復し、健康な赤ちゃんを出産できます。治療後も定期的なフォローアップが重要ですが、日常生活に戻ることは十分可能です。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月30日
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