エーラス・ダンロス症候群(EDS)について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
エーラス・ダンロス症候群(EDS)は、体の結合組織※という部分に生まれつき問題がある病気のグループです。結合組織は、皮膚・血管・関節・内臓などを支えています。この病気では、関節がよく動きすぎる、皮膚が伸びやすくてもろい、血管や内臓が破れやすいなど、さまざまな症状が現れることがあります。※結合組織とは、体の組織と組織をつなぎ、体を支える組織です。
重要な事実
- 主な症状は、関節の過度な柔らかさ、皮膚の伸びやすさ、血管や内臓がもろくなりやすいことです。
- 症状や重症度は人によって大きく異なり、日常生活に支障がほとんどない人もいれば、慢性的な痛みや合併症に悩む人もいます。
- 現在は根本的な治療法はありませんが、症状を和らげたり、まわりのケアで生活の質を高めることは可能です。
まれな病気です。正確な患者数は不明ですが、世界的には5,000人に1人程度の頻度とされています。日本では指定難病の対象となっています。
どの年齢・性別でも発症する可能性がありますが、遺伝が関係するため、家族に同病の人がいる場合はリスクが高くなります。女性が診断されることが多いとされていますが、これは症状に気づかれやすいことと関連するとも言われています。
症状
- 突然の強い胸の痛み・背中の痛み(血管の破裂や大動脈の病気が疑われます)
- 突然の強いおなかの痛み(腸や内臓の破れが疑われます)
- 突然の息苦しさ・呼吸困難
- 突然、片方の手足の麻痺が生じる、言葉が話せない(脳卒中の可能性)
- けがをしていないのに強い痛みや腫れが起こる
- ⚠力を入れると激痛がある、関節が完全に外れて戻らない
- ⚠皮膚や粘膜から血が止まらずに出る
- ⚠尿や便に血が混じる
- ⚠いつもと違う強い頭痛や吐き気がある
一般的な症状
- 関節が正常な範囲を超えてよく動く(過可動性)
- 皮膚が伸びやすく、もろい
- あざができやすい
- 傷が治りにくい、ケロイド状の傷あとが残りやすい
- 関節が外れやすい(脱臼・亜脱臼)
- 慢性的な関節や筋肉の痛み
- 強い疲労感
- おなかの張りや便秘などの消化器症状
原因
主な原因
- エーラス・ダンロス症候群に関連する遺伝子の変化(変異)が原因です。
- 遺伝子の変化は親から受け継がれることもありますが、本人に突然起こることもあります。
- 遺伝子の変化により、結合組織を作るコラーゲンというたんぱく質の量や質に問題が生じ、症状が現れます。
リスク要因
- 家族にエーラス・ダンロス症候群の患者がいる場合、発症リスクが高くなります。
- 型によって遺伝のしかたは異なりますが、常染色体優性遺伝が多いため、親が保因者であれば子にも伝わりやすくなります。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上の「緊急の症状」に該当する場合は、ためらわずに119番に電話してください。
- 関節が外れて元に戻せない、または腫れや激痛がある場合は、すぐに整形外科や救急外来を受診しましょう。
定期受診を予約すべき場合:
- 関節の痛みや疲れが日常生活に影響している場合
- よく脱臼する、傷が治りにくい、あざが多いなどが続く場合
- かかりつけ医に相談し、必要に応じて膠原病内科・皮膚科・整形外科・遺伝子科などの専門医を紹介してもらいましょう。
診断
診断は、医師による問診と身体診察(関節の動きや皮膚の状態を調べる)から始まり、必要に応じて遺伝子検査が行われます。エーラス・ダンロス症候群は複数の型があるため、専門的な知識を持つ医療機関(難病医療拠点病院など)での診断が勧められます。
行われる可能性のある検査
- 関節の過可動性を評価する診察(ベイトンスコア)
- 皮膚の伸びやすさ・弾力の評価
- 遺伝子検査(血液で特定の遺伝子の変化を調べる)
- 心臓の超音波検査(心エコー)や眼科検査(型によって必要な場合)
診察で予想されること
診断には時間がかかることがあります。複数の専門科が協力して、症状を総合的に評価します。診断を受ける際には、これまでの症状や家族歴をメモしておくと診察がスムーズです。
治療
現時点で、エーラス・ダンロス症候群そのものを治す治療法はありません。しかし、一人ひとりの症状に合わせた痛みの管理・リハビリテーション・生活指導などを行うことで、症状を和らげ、日常生活をより快適にすることができます。
自宅でのセルフケア
- 理学療法士の指導のもとで筋力をつけ、関節を安定させる運動を行う
- 痛みが強いときは無理をせず、十分に休む
- 肌の乾燥や紫外線を避ける(保湿剤・日焼け止めを使う)
- 自宅の段差や滑りやすい場所を整理し、転倒を防ぐ
- サポーターや装具を必要に応じて使用する
医療治療
治療は主に症状の緩和が目的です。痛みに対しては、医師が処方する適切な痛み止めや、理学療法、装具による関節の安定化などが用いられます。血管型の場合は、血圧を安定させる薬物療法が検討されることもあります。どの治療が適しているかは、必ず専門医の診察に基づいて決定されます。自己判断での服薬は避けてください。
手術が検討される場合
関節の脱臼や損傷がひどく、保存的治療(運動・装具など)で効果が得られない場合は、手術が検討されることがあります。ただし、結合組織がもろいため、手術のリスクと効果を慎重に見極める必要があります。
この病気と共に生きる
毎日の生活では、関節に負担がかからない動き方を学ぶことが大切です。例えば、重い物を持ち上げるときは、ひざを曲げて腰を使わない、無理に体をひねらない、といった工夫です。疲労をためないことも重要で、疲れを感じたら休憩を取り、睡眠を十分に確保しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 無理のない範囲で定期的に体を動かす(関節を守る運動を選ぶ)
- 転倒防止のための住まいの整備(段差の解消・照明を明るく)
- 喫煙を避ける(血管に負担をかけ、結合組織を弱めるため)
- ストレス対策(リラックスできる時間を作る、誰かに話す)
- 規則正しい生活リズムを整える
食事と運動
骨や血管の健康を助けるため、栄養バランスの良い食事を心がけましょう。特に、たんぱく質・カルシウム・ビタミンD・ビタミンCは、結合組織の健康に関わります。運動は、関節の衝撃が少ない水泳・歩行・自転車などが適しており、関節周りの筋肉を鍛えることで安定性が増します。運動を始める際は、医師や理学療法士に相談することをおすすめします。
精神的健康と心の健康
慢性的な痛みやつらさが続くと、気分が落ち込んだり、不安になったりすることがあります。これは病気を持つ多くの人が経験する反応です。一人で抱え込まず、家族や友人、医療者に気持ちを伝えることが大切です。また、必要に応じて精神科・心療内科や各地の「こころの健康相談センター」などを利用することも選択肢の一つです。あなたは決して一人ではありません。
予防
エーラス・ダンロス症候群そのものを予防する方法はありません。しかし、正しい診断と適切なケアによって、関節のケガや血管の合併症を予防し、症状の悪化を防ぐことはできます。早期に医療機関を受診し、生活指導を受けることが大切です。
ワクチン
ワクチンは一般の人と同じように接種することが勧められます。ただし、皮膚の状態や服用している薬によっては接種前に医師に相談したほうがよい場合もあります。
検診プログラム
家族にエーラス・ダンロス症候群の人がいる場合は、症状がなくても一度専門医の診察を受けることを検討しましょう。特に血管型の可能性がある場合は、定期的な心臓血管の検査(心エコーや画像検査)が勧められます。
合併症
治療しない場合
- 関節の反復性脱臼や変形性関節症による慢性的な痛み
- 皮膚の創傷治癒不全や縫合不全
- 内臓や血管の破裂(血管型の場合)
- 妊娠中の合併症(早産・骨盤の不安定など)のリスク上昇
長期的な見通し
エーラス・ダンロス症候群は生涯つづく病気ですが、多くの方は、診断と適切なケアを受けることで、活発で質の高い生活を送っています。重症の血管型でも、定期的な管理によりリスクを減らすことができます。希望を持って、医療者と一緒に自分に合ったケアを続けていきましょう。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
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