妊娠中の脂肪肝:病気の理解と対処法
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
脂肪肝(しぼうかん)とは、肝臓に脂肪がたまりすぎた状態です。妊娠中は、ホルモンの変化や体重増加などで脂肪肝になりやすくなることがあります。ほとんどの場合は軽度で心配ありませんが、まれに重症化し、緊急の対応が必要となることもあります。
重要な事実
- 妊娠中の脂肪肝は、一般に「非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)」と呼ばれるものと、非常にまれな「急性妊娠脂肪肝(AFLP)」の2種類があります。
- 多くの場合、自覚症状がなく、健康診断などで偶然見つかります。
- 急性妊娠脂肪肝は、妊娠後期(妊娠28~40週)に突然起こることがあり、肝臓や腎臓の機能障害を引き起こす危険な状態です。
- 肥満や糖尿病、高血圧がある方は、脂肪肝になりやすいといわれています。
妊娠中の脂肪肝(特に軽度のもの)は、妊婦さんの約10~30%に見られるといわれており、まれではありません。ただし、重症の急性妊娠脂肪肝は、約1万~2万人に1人の割合で発生する非常にまれな病気です。
特に肥満や糖尿病、高血圧を抱える妊婦さんに多く見られます。また、初めての妊娠、双子以上の多胎妊娠、妊娠後期の方に急性妊娠脂肪肝が起こりやすい傾向があります。
症状
- 突然の強い上腹部痛(みぞおちの痛み)
- 吐き気や嘔吐が続く
- 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
- 意識がもうろうとする、または異常な眠気
- 出血しやすい(歯ぐきの出血、鼻血など)
- ⚠持続する吐き気や食欲不振
- ⚠全身のかゆみ
- ⚠強い疲労感や体のだるさ
- ⚠尿の色が濃くなる(コーラ色)
- ⚠便の色が白っぽくなる
一般的な症状
- 多くの場合、症状はなく、健康診断や血液検査で偶然見つかることがほとんどです。
- 軽度の疲れやだるさを感じることがあります。
子供の症状
- 妊娠中は胎児に関する症状は直接現れません。ただし、母体の脂肪肝が重症化すると、胎児の発育に影響を与える可能性があります。
高齢者の症状
- 高齢の妊婦さんは、高血圧や糖尿病などのリスクが高く、脂肪肝になりやすくなる可能性があります。症状は他の妊婦さんと同様です。
原因
主な原因
- 妊娠中のホルモンバランスの変化(特にエストロゲンやプロゲステロン)
- 体重増加や肥満
- 脂質や糖分の多い食事
- もともと脂肪肝や肥満、糖尿病がある
- 非常にまれなケースですが、遺伝的要因が関与する急性妊娠脂肪肝
リスク要因
- 妊娠前からの肥満(BMI 25以上)
- 妊娠中の過度な体重増加
- 妊娠糖尿病
- 高血圧(妊娠高血圧症候群)
- 高脂血症
- 初めての妊娠、または多胎妊娠
- 過去の妊娠で急性妊娠脂肪肝を経験したことがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上記の緊急症状(強い腹痛、黄疸、意識障害など)が一つでもある場合は、すぐに救急車(119番)を呼んでください。
- 持続する吐き気や食欲不振、全身のかゆみなどがある場合は、すぐに産婦人科を受診しましょう。
定期受診を予約すべき場合:
- 妊娠中は定期的な産婦人科健診を受けましょう。
- 特に症状がなくても、体重増加が急だったり、血糖や血圧が高いと指摘された場合は、医師に相談してください。
- 妊娠前に脂肪肝と診断されたことがある方や、肥満がある方は、妊娠初期から医師と生活習慣の改善について話し合いましょう。
診断
妊娠中の脂肪肝は、主に血液検査と超音波(エコー)検査で診断されます。急性妊娠脂肪肝が疑われる場合は、より詳しい検査が行われます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査:肝機能(AST、ALTなど)や胆道系の酵素、ビリルビン、血小板数などを調べます。
- 超音波(エコー)検査:お腹の上から超音波を当てて、肝臓の脂肪の程度を調べます。赤ちゃんへの影響はありません。
- 急性妊娠脂肪肝の疑いがある場合:さらに詳しい血液検査や、CTやMRIなどの画像検査、場合によっては肝臓の組織を採取する生検が行われることもあります。
診察で予想されること
医師から検査結果について説明があります。脂肪肝と診断された場合でも、ほとんどのケースでは経過観察と生活習慣の指導で十分です。急性妊娠脂肪肝と診断された場合は、すぐに入院し、赤ちゃんの分娩を含めた緊急対応が必要になります。
治療
妊娠中の脂肪肝の治療は、原因や重症度によって異なります。軽度の脂肪肝では特別な薬は必要なく、生活習慣の改善が中心です。急性妊娠脂肪肝の場合は、母体と赤ちゃんの命を守るために、即時に入院し、分娩と集中的な治療が必要です。
自宅でのセルフケア
- バランスの良い食事を心がけましょう。特に、脂質や糖分の多い食事を控え、野菜、果物、全粒穀物、良質なタンパク質(魚、大豆製品など)を多く取り入れましょう。
- 適度な運動を続けましょう。妊婦さんに安全な運動(ウォーキング、マタニティヨガなど)を医師に相談して行ってください。
- 体重の増えすぎに注意しましょう。妊娠中の体重増加の目安は、妊娠前のBMIによって異なりますので、医師の指導に従ってください。
- 十分な休息と睡眠をとり、ストレスをためないようにしましょう。
医療治療
軽度の脂肪肝には特定の薬は必要ありません。急性妊娠脂肪肝と診断された場合は、入院して点滴や輸血などで全身状態を安定させた後、できるだけ早く赤ちゃんを分娩します。出産後、母体の肝機能は通常回復しますが、一時的に集中治療が必要になることもあります。脂溶性ビタミン(ビタミンKなど)の補給や肝保護のための治療が行われることがありますが、具体的な薬の名称や用量については医師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
急性妊娠脂肪肝の治療には、帝王切開による分娩が必要になることがあります。また、ごくまれに肝不全が進行した場合、肝移植が検討されることもありますが、妊娠中にここまで進行することは非常にまれです。
この病気と共に生きる
脂肪肝と診断されても、ほとんどの場合、特別な生活制限はありません。赤ちゃんの成長に合わせた体重管理と、健康的な食事と運動を続けることが大切です。ストレスを感じたら、パートナーや家族、医療スタッフに相談しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 毎日30分程度の軽い散歩を習慣にしましょう。
- 揚げ物や甘いお菓子、清涼飲料水を控えめにしましょう。
- 加工食品よりも、旬の野菜や果物、魚、豆類を積極的に選びましょう。
- 十分な睡眠(7~8時間)をとり、昼間に短い休憩を入れるとよいでしょう。
- アルコールは妊娠中は禁止です。脂肪肝の悪化につながるため、必ず控えてください。
食事と運動
バランスの良い食事と適度な運動が基本です。具体的には、医師や管理栄養士と相談しながら、カロリー制限ではなく栄養バランスの良い食事(野菜中心、脂質控えめ)を心がけてください。運動はウォーキングや水中ウォーキングなど、母体と赤ちゃんに負担の少ないものを選びましょう。
精神的健康と心の健康
妊娠中の病気は不安を感じやすいものです。脂肪肝と診断されたことで、「赤ちゃんに影響があるのでは」「自分の体は大丈夫なのか」と心配になる方もいるでしょう。そうした気持ちは自然なことです。一人で抱え込まず、パートナーや家族、信頼できる医療者に話してみてください。必要に応じて、カウンセリングを受けることも選択肢の一つです。
予防
完全に予防することはできませんが、健康的な生活習慣を心がけることでリスクを減らすことができます。妊娠前から適正体重を維持し、バランスの良い食事と運動を習慣にしておくことが大切です。
合併症
治療しない場合
- 軽度の脂肪肝が治療されなくても、多くの場合は出産後に自然に改善します。
- しかし、放置して肥満や糖尿病が悪化すると、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクが高まることがあります。
- 急性妊娠脂肪肝は放置すると、肝不全、腎不全、出血傾向、意識障害などを引き起こし、母体と胎児の命に関わる危険な状態になります。
長期的な見通し
ほとんどの妊娠中の脂肪肝は軽度で、出産後には自然に改善します。適切な体重管理や食事、運動を続ければ、将来の肝硬変や肝がんなどのリスクも減らせます。急性妊娠脂肪肝は危険な病気ですが、早期に発見・治療されれば、母体の回復は良好で、赤ちゃんも健康に育つことが多いです。希望を持って、医師の指導に従いましょう。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月30日
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