乳幼児の難聴(にゅうようじのなんちょう)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
難聴とは、耳が音をうまく聞き取れない状態のことです。乳幼児の難聴は、生まれつきの場合と、成長してから起こる場合があります。早く見つけて支援することで、ことばの発達やコミュニケーションに役立ちます。
重要な事実
- 日本では、生まれた赤ちゃんの約1000人に1人が、何らかの難聴をもっているといわれています。
- 新生児の聴覚スクリーニング(生まれた後の簡単な聴こえの検査)が全国の多くの病院で行われています。
- 難聴は早期に発見し、早くから補聴器や療育(りょういく)を始めることが大切です。
難聴は乳幼児ではあまり多くありませんが、決して珍しいものではありません。特に生まれつきの難聴は、約1000人に1人の割合で見られます。
難聴は男の子にも女の子にも起こります。また、早産で生まれた赤ちゃんや、家族に難聴の方がいる場合など、リスクが高まることもありますが、誰にでも起こりうるものです。
症状
- 急に聴こえなくなった(例:頭をぶつけた後)
- 耳から血や膿(うみ)が出ている
- 激しい耳の痛みを訴えている
- 意識がもうろうとしている
- ⚠耳だれ(耳から液体が出る)が続く
- ⚠高熱と一緒に耳を痛がる
- ⚠片方の耳だけ聴こえが悪くなったようだ
- ⚠難聴と一緒にめまいや吐き気がある
一般的な症状
- 大きな音に驚かない、または振り返らない
- 話しかけても反応が乏しい
- テレビやおもちゃの音に気づかない
子供の症状
- 名前を呼んでも振り返らない
- ことばの出るのが遅い(1歳で意味のあることばが出ないなど)
- 周りの音に敏感でない
- 発音が不明瞭(ふめいりょう)である
原因
主な原因
- 遺伝子の変異(生まれつきの原因)
- 妊娠中のお母さんの感染症(風疹など)や薬の影響
- 出生時のトラブル(低酸素状態など)
- 中耳炎(ちゅうじえん)などの感染症が繰り返す
- 大きな音や頭部のけが
リスク要因
- 家族に難聴の方がいる
- 早産や低出生体重で生まれた
- 新生児集中治療室(NICU)に入院したことがある
- おたふくかぜや髄膜炎(ずいまくえん)にかかったことがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 赤ちゃんが急に音に反応しなくなった
- 耳の痛みや発熱が続く
- 耳から出血や膿が出ている
定期受診を予約すべき場合:
- 新生児聴覚スクリーニングで「要再検査」と言われたら、必ず専門医を受診しましょう。
- ことばの発達が気になる(1歳で意味のあることばが出ないなど)
- 集団健診(健康診査)で聴こえのチェックが「要観察」となった
- 何度も中耳炎を繰り返す
診断
新生児期には「自動聴性脳幹反応検査(じどうちょうせいのうかんはんのうけんさ)」という、寝ている間に機械で聴こえを調べる検査が行われます。成長後は、音に反応する様子を見る行動検査や、鼓膜の動きを調べる検査などを行います。
行われる可能性のある検査
- 自動聴性脳幹反応検査(AABR)
- 耳音響放射検査(OAE)
- 鼓膜の動きを調べるインピーダンス検査
- 年齢に応じた聴力検査(遊戯聴力検査など)
診察で予想されること
医師がお子さんの様子を観察し、いくつかの検査を組み合わせて聴こえの程度を調べます。検査は痛みがなく、多くの場合、お子さんが静かにしていれば短時間で終わります。結果がすぐに出ないこともありますが、必要に応じて追加の検査や専門施設を紹介されます。
治療
難聴の治療は、原因や程度によって異なります。早くから適切な支援を始めることが、ことばの発達や学習にとって非常に大切です。治療の目的は、耳の機能を補い、お子さんが音を聞き取れるようにすることです。
自宅でのセルフケア
- 家庭で大きな騒音を避け、静かな環境で話しかける
- お子さんの顔を見ながら、ゆっくりはっきり話す
- 絵本を読んだり、歌を歌ったりして音やことばに触れる機会を増やす
- 補聴器や人工内耳(じんこうないじ)を使う場合は、正しく使えるようにケアする
医療治療
軽度から中等度の難聴には補聴器(ほちょうき)が使われます。補聴器は耳に合わせて調整が必要で、定期的に医師や言語聴覚士(げんごちょうかくし)の指導を受けることが大切です。重度の難聴には人工内耳(じんこうないじ)という手術で埋め込む機器が検討されることがあります。どの治療が適切かは、お子さんの聴力や発達状況、そして家族の希望をよく相談して決めます。
手術が検討される場合
薬で治らない慢性的な中耳炎が原因の難聴には、鼓膜にチューブを入れる手術が行われることがあります。また、重度の難聴で補聴器の効果が不十分な場合には、人工内耳の手術が検討されます。これらの手術の適応については、専門医と十分に話し合ってください。
この病気と共に生きる
難聴があっても、早期に補聴器や療育を始めれば、多くのお子さんが通常の学校で学び、健やかに成長しています。家庭では、視覚的な情報(絵カードや手話、口の動き)を活用しながらコミュニケーションをとることが役立ちます。毎日の生活の中で、お子さんが安心して過ごせる環境を整えましょう。
生活習慣のアドバイス
- テレビや音楽は適切な音量で聞かせ、長時間の大音量は避ける
- 聴こえにくい場所(騒がしい部屋など)では、お子さんの近くで話す
- 定期的に聴力検査を受け、補聴器などの機器の状態を確認する
- 地域の子育て支援センターや難聴児の親の会に参加して情報交換する
食事と運動
難聴そのものに特別な食事制限はありませんが、バランスのよい食事と適度な運動は全身の健康に役立ちます。特に中耳炎を繰り返す場合は、栄養状態を整えることも大切です。
精神的健康と心の健康
お子さんの難聴がわかった時、親御さんはショックや不安を感じるのは自然なことです。また、お子さん自身も聴こえにくさからストレスを感じることがあります。家族や周囲の理解とサポートがとても重要です。必要なら、心理カウンセリングやペアレントトレーニングなどの支援を利用してください。
予防
すべての難聴を予防することはできませんが、一部の原因は予防可能です。例えば、妊娠中の風疹(ふうしん)の予防接種や、大きな騒音を避けること、中耳炎を早めに治療することが役立ちます。また、新生児聴覚スクリーニングを受けることで早期発見につながります。
ワクチン
おたふくかぜや髄膜炎などの感染症が難聴の原因になることがあります。これらを予防するためのワクチン(おたふくかぜワクチン、ヒブワクチンなど)は、定期接種として推奨されています。
検診プログラム
日本では、多くの病院で新生児聴覚スクリーニングが行われています。生後すぐに実施する簡単な検査で、もし異常があれば早期に専門医へつなぐことができます。すべての赤ちゃんにこの検査を受けることが勧められています。
合併症
治療しない場合
- ことばの発達の遅れや、コミュニケーションに困難が生じる
- 学習に遅れが生じることがある(特に学校に入ってから)
- 社会的な孤立や心理的なストレスを感じやすくなる
- 二次的な行動の問題(かんしゃく、引っ込み思案など)が現れることがある
長期的な見通し
難聴があっても、早期に適切な支援(補聴器、療育、必要に応じて人工内耳など)を受ければ、多くのお子さんが普通の学校で学び、友達と遊び、将来は社会で活躍することができます。親御さんの愛情と周囲の理解があれば、可能性は大きく広がります。希望を持って、一歩ずつ進んでいきましょう。
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最終更新: 2026年7月30日
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