心不全とともに生きる – 患者さん向けガイド
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
心不全(しんふぜん)とは、心臓のポンプの力が弱くなり、全身に十分な血液を送れなくなる状態です。心臓が「止まった」わけではありません。適切な治療と生活の工夫で、症状をコントロールしながら穏やかに暮らすことができます。
重要な事実
- 心不全は心臓の病気の一種で、突然起こるものと徐々に進行するものがあります
- 早期発見と適切な治療で、多くの人が症状を改善できます
- 生活習慣の見直しが症状の安定に大きく役立ちます
- 定期的な医療機関の受診が大切です
心不全は日本でも増加傾向にあり、高齢になるほど多く見られます。厚生労働省の調査によると、65歳以上の約10人に1人が心不全のリスクがあるとされています。決して珍しい病気ではありません。
心不全は主に高齢者に多く見られますが、高血圧や糖尿病、心筋梗塞などの生活習慣病を持つ方、心臓の弁の異常がある方、心筋症(心臓の筋肉に異常がある病気)の方にも起こり得ます。若い方でも、遺伝的な要因や特定の病気が原因で発症することがあります。
症状
- 突然の激しい息苦しさで座っていられない
- ピンク色の泡のような痰が出る
- 意識がもうろうとする、声をかけても反応が悪い
- 胸の痛みや圧迫感が続く
- ⚠普段よりひどい息切れやむくみが急に出た
- ⚠体重が1日で1~2キロ以上増えた
- ⚠市販のむくみ止めや利尿薬を使っても改善しない
- ⚠夜間の呼吸困難がひどくなり、眠れない
一般的な症状
- 息切れ(特に運動時や横になったとき)
- むくみ(足首、足、ふくらはぎ)
- 疲れやすくなる
- 夜中に息苦しくなって目が覚める
- 体重が増える(むくみのせい)
- 咳やゼーゼーという呼吸音
子供の症状
- 赤ちゃんが母乳やミルクを飲むときにすぐ疲れてしまう
- 体重増加が悪い
- 顔色が青白い、唇が紫色になる
- 呼吸が速い、息を吸うときに胸やおなかがへこむ
高齢者の症状
- 階段を上るだけで息切れする
- 日常の動作(掃除や買い物)がつらくなる
- 疲労感が目立つ、動くのがおっくうになる
- 夜に何度もトイレに起きる(むくんだ水分が戻るため)
- 食欲が落ちる、ぼんやりすることがある
原因
主な原因
- 冠状動脈疾患(心臓に血液を送る血管が狭くなる病気、例:心筋梗塞)
- 長期にわたる高血圧
- 心臓弁膜症(心臓の弁の開きが悪くなる病気)
- 心筋症(心臓の筋肉の働きが弱くなる病気)
- 不整脈(特に心房細動)
- がん治療の一部(特定の抗がん剤や放射線治療)
リスク要因
- 過度の飲酒
- 運動不足
- 脂質異常症(悪玉コレステロールが多い)
- 心臓病の家族歴
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に息苦しくなった場合(上記の緊急症状参照)
- 体重が短期間に大きく増えた場合
- 夜間の呼吸困難が改善しない場合
定期受診を予約すべき場合:
- 自覚症状がなくても、心臓病のリスクがある方は年に1回は医師の診察を受ける
- すでに心不全と診断されている方は、医師の指示に従って定期的に受診する
- 薬の調整や生活指導を受けるために受診する
診断
心不全の診断は、問診(症状や生活習慣を聞く)、身体診察(聴診器で心臓の音を聞く、むくみを調べる)、さらにさまざまな検査を組み合わせて行われます。
行われる可能性のある検査
- 心エコー(超音波で心臓の動きや大きさを調べる検査)
- 血液検査(心臓の負担を示すBNPやNT-proBNPという物質を測る)
- 心電図(不整脈や心臓の電気的な異常を調べる)
- 胸部X線(肺のうっ血や心臓の大きさを確認)
- 運動負荷試験(歩くなどして心臓の反応を見る)
- 心臓カテーテル検査(細い管を血管に入れて心臓の状態を直接調べる)
診察で予想されること
検査は基本的に痛みを伴わないものが多く、外来で受けられます。心臓カテーテル検査は入院が必要な場合がありますが、すべての人が受けるわけではありません。結果が出るまでは不安かもしれませんが、医師が一つひとつ説明してくれます。
治療
心不全の治療は、症状を和らげ、心臓の負担を減らし、進行を遅らせることを目指します。薬物療法と生活習慣の改善が中心で、必要に応じて手術や医療機器を使うこともあります。
自宅でのセルフケア
- 毎日体重を測り、急な増加がないかチェックする
- 塩分を控えめにした食事を心がける(厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」で1日6g未満が推奨されています)
- 水分の摂りすぎに注意し、医師から指示がある場合は水分制限を守る
- 禁煙する
- アルコールは控えめにする(できれば禁酒)
- 医師の許可を得て、無理のない範囲で軽い運動(散歩など)を続ける
- 疲れたら無理をせず休む
医療治療
薬物療法としては、心臓の負担を減らす薬(血圧を下げる薬、尿の出をよくする薬、心臓のポンプ力を助ける薬など)が用いられます。これらは医師が症状や状態に合わせて個別に処方します。また、体内に埋め込むペースメーカーや、補助人工心臓などの機器を使うこともあります。治療法は一人ひとり違うので、必ず主治医と相談してください。
手術が検討される場合
薬物療法で効果が不十分な場合や、原因となっている心臓弁膜症や冠状動脈疾患がある場合、手術(弁形成術・弁置換術・冠動脈バイパス術など)が検討されることがあります。また、重症の心不全では心臓移植の適応となることもありますが、多くの場合は薬と生活管理で安定します。
この病気と共に生きる
心不全と診断されても、日常生活の工夫次第で快適に過ごせます。体調に合わせて活動量を調整し、休憩をこまめにとることが大切です。体重やむくみの変化に気をつけ、症状が悪化したら早めに医師に連絡しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 体重を毎日同じ時間(朝のトイレ後、食事の前)に測る
- 塩分を控え、野菜や果物を多く食べる
- 水分は1日1~1.5リットルを目安に(医師の指示があればそれに従う)
- 禁煙する(禁煙外来の利用も検討)
- アルコールは基本的に控える
- 適度な運動(医師の許可のもと、ウォーキングなど)
- 十分な睡眠とストレス管理
食事と運動
食事は減塩が基本です。しょうゆやみそ、加工食品(ハム、漬物、インスタント食品)などに含まれる塩分を控えましょう。カリウムを多く含む食品(バナナ、トマト、ほうれん草など)は、むくみの改善に役立ちますが、薬によっては制限が必要な場合もあるので医師に相談してください。運動は、医師と相談して無理のない範囲で行います。最初は1日10~15分の散歩から始め、徐々に時間を伸ばすと良いでしょう。
精神的健康と心の健康
心不全の治療は長期間にわたるため、時には不安や落ち込みを感じることがあるかもしれません。そうした気持ちは自然なことです。家族や友人に話す、同じ病気を持つ人と交流するなど、気持ちを共有することが助けになります。どうしてもつらいときは、医師やカウンセラーに相談してください。日本では、全国どこでも電話やオンラインで相談できる「こころの健康相談統一ダイヤル」などがあります(お住まいの自治体の保健所に問い合わせてください)。
予防
心不全の原因となる病気(高血圧、糖尿病、冠状動脈疾患など)を予防したり、早期に治療することで、心不全の発症リスクを下げることができます。健康な生活習慣(バランスの良い食事、適度な運動、禁煙、節酒)を続けることが重要です。すでに心臓病がある方は、医師の指導に従って治療を継続することで、心不全への進行を遅らせることができます。
ワクチン
心不全の患者さんは、インフルエンザや肺炎球菌などの感染症にかかると重症化しやすいため、ワクチン接種を検討すると良いでしょう。詳しくはかかりつけ医に相談してください。
検診プログラム
定期的な健康診断で血圧や血糖値、コレステロール値をチェックすることが、心不全の予防につながります。また、心臓病の家族歴がある方は、若いうちから心臓の検査を受けることも勧められます。
合併症
治療しない場合
- 肺水腫(肺に水がたまって呼吸困難になる)
- 不整脈の悪化(特に心室頻拍や心房細動)
- 腎機能の低下(心臓から腎臓への血流が減るため)
- 肝機能障害(肝臓に血液が滞るため)
- 栄養失調(食欲低下や吸収不良)
- 突然死のリスク増加
長期的な見通し
心不全は進行性の病気ですが、適切な治療と生活管理によって、症状を安定させ、長く穏やかな生活を送ることができます。多くの人が日常生活を楽しみながら、仕事や趣味を続けています。病気と向き合いながらも、希望を持って前を向いていくことが大切です。医療の進歩により、新しい治療法も次々と開発されています。あなた一人ではありません。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月30日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
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