妊娠中の慢性B型肝炎 – お母さんと赤ちゃんを守るために知っておきたいこと
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
慢性B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)に感染した後、ウイルスが体の中に長期間(6か月以上)とどまり続ける状態です。肝臓に炎症が起きていても、長い間症状が現れないことがあります。妊娠中にこの状態にあると、出産時に赤ちゃんにウイルスがうつる可能性がありますが、適切なケアで防ぐことができます。
重要な事実
- 慢性B型肝炎は、多くの場合、症状がなくても肝臓に影響を及ぼし続けます。
- 妊娠中でも、ウイルスを抑える治療(抗ウイルス薬)を受けられる場合があります。
- 生まれた赤ちゃんにすぐにB型肝炎ワクチンと抗体(免疫グロブリン)を接種することで、感染をほぼ防げます。
B型肝炎は世界中で見られますが、特にアジアやアフリカなどで多く、日本でも一定数の方が慢性感染しています。妊娠する年齢の女性にもみられます。
主に、B型肝炎ウイルスに感染した状態で妊娠したすべての女性が対象です。赤ちゃんにうつすリスクがあるため、妊娠中から出産後まで特別なケアが必要です。
症状
- 突然の激しい腹痛や腹部の腫れ
- 吐血(血を吐く)、または黒いタールのような便
- 意識がもうろうとする、混乱する
- ⚠黄疸が急にひどくなった(皮膚や白目が濃い黄色)
- ⚠尿の色がコーラのように濃くなった
- ⚠いつもよりひどいだるさや吐き気が続く
一般的な症状
- 多くの場合、症状はありません。
- だるさ、疲れやすさ
- 食欲が落ちる、吐き気
- 右上腹部(肝臓のあたり)の違和感
子供の症状
- 幼い子どもは感染してもほとんど症状が出ません。
- 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)が現れることがあります。
- 長期間感染が続くと、成長とともに肝臓に影響が出ることがあります。
高齢者の症状
- 症状は若い人と似ていますが、肝臓の炎症が進みやすくなることがあります。
- 肝硬変や肝臓がんのリスクが高まるため、定期的な検査が重要です。
原因
主な原因
- B型肝炎ウイルス(HBV)への感染。妊娠中の女性が感染している場合、出産時に赤ちゃんにうつることがあります(垂直感染)。
- 感染経路は、血液や体液を介するもの(例:感染した母親から子どもへの分娩時感染、注射器の使い回し、輸血、性的接触など)。
リスク要因
- B型肝炎ウイルスに感染している母親から生まれた(特に予防接種を受けていない場合)
- B型肝炎が多い地域(東アジア、アフリカなど)での出生または居住
- 注射器の共用(薬物使用を含む)
- 複数の性的パートナー、または感染しているパートナーとの無防備な性行為
- 医療従事者など、血液に触れる仕事
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上記の緊急症状や急な症状の悪化がある場合
定期受診を予約すべき場合:
- 妊娠がわかったらすぐに、または妊娠を計画しているときに、肝臓の状態とウイルス量を検査しましょう。
- 妊娠中は定期的に産科医と肝臓専門医の診察を受けてください。
- 赤ちゃんが生まれたら、速やかにB型肝炎ワクチンと免疫グロブリンを接種する手配をします。
診断
血液検査でB型肝炎ウイルスの表面抗原(HBs抗原)が陽性かどうかを調べます。陽性の場合、さらにウイルスの量(HBV DNA)や肝臓の働き(肝機能検査)を確認します。
行われる可能性のある検査
- HBs抗原検査:B型肝炎に感染しているかを調べる
- HBV DNA定量:血液中のウイルスの量を測る
- 肝機能検査(AST、ALTなど):肝臓の炎症の程度を調べる
- 腹部超音波検査:肝臓の状態を画像で確認する(必要に応じて)
診察で予想されること
妊娠中の診断は通常の血液検査で行われます。陽性とわかっても慌てる必要はありません。医師が妊娠経過に合わせて、どのくらいの頻度で検査が必要か、治療が必要かを判断します。赤ちゃんの感染予防策についても詳しく説明があります。
治療
治療の目的は、お母さんの肝臓の健康を守り、赤ちゃんへの感染リスクをできるだけ下げることです。ウイルスの量が多く、肝機能に異常がある場合は、妊娠中でも安全に使える抗ウイルス薬による治療が検討されます。出産後も定期的な経過観察が必要です。
自宅でのセルフケア
- バランスの良い食事をとり、十分な休息を心がける
- アルコールは完全に避ける
- 医師から指示された場合以外は、薬やサプリメントを自己判断で服用しない
- かかりつけ医に妊娠していることを伝え、すべての薬の使用について相談する
医療治療
ウイルスの量が多い場合や肝機能に異常がある場合、妊娠中でも使用可能な経口の抗ウイルス薬(核酸アナログ製剤の一種)が処方されることがあります。これによりウイルスの量を減らし、赤ちゃんへの感染リスクを下げます。治療の開始や変更は必ず医師の判断で行います。
手術が検討される場合
慢性B型肝炎そのものに対する手術はありません。ただし、肝臓がんなどの合併症が生じた場合には、手術やその他の治療が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
妊娠中は通常の妊婦健診に加えて、肝臓の状態を定期的にチェックします。ウイルス量や肝機能の数値に応じて、医師の指示に従い生活してください。多くの女性は日常生活に大きな制限なく過ごせます。
生活習慣のアドバイス
- 十分な睡眠と休息をとる
- 感染予防のため、血液や体液が付いたもの(歯ブラシ、カミソリなど)の共用を避ける
- パートナーに感染のリスクを伝え、必要に応じてワクチン接種や検査を勧める
- ストレスをためすぎないようにする(リラックスできる時間を作る)
食事と運動
特別な食事制限はありませんが、肝臓に負担をかけないよう、栄養バランスの良い食事を心がけましょう。激しい運動は避け、軽い散歩など医師に相談した範囲で体を動かすと良いです。アルコールは絶対に避けてください。
精神的健康と心の健康
妊娠中に慢性の病気があると、赤ちゃんへの影響や将来の健康について不安を感じることがあるでしょう。そうした気持ちは自然なことです。信頼できる医師やパートナー、家族に相談し、必要ならカウンセリングなどを利用することも検討してください。
予防
B型肝炎ウイルスそのものの感染は、ワクチン接種で予防できます。妊娠中に慢性B型肝炎と診断された場合でも、赤ちゃんへの感染は、出生直後からのワクチンと免疫グロブリンの接種によって約95%防げます。また、母親のウイルス量が多い場合は妊娠後期からの抗ウイルス治療でさらにリスクを減らせます。
ワクチン
すべての赤ちゃんに、生まれたらすぐにB型肝炎ワクチン(通常3回)を接種することが推奨されています。母親が慢性B型肝炎の場合、生後12時間以内にワクチンと同時に免疫グロブリン(抗体)を注射します。これにより、ほぼ完全に感染を予防できます。
検診プログラム
妊娠初期の血液検査でB型肝炎のスクリーニング(HBs抗原検査)が行われます。これは日常的に行われている検査で、早期発見・早期対策が可能です。
合併症
治療しない場合
- 肝臓の炎症が進行し、肝硬変や肝臓がんになるリスクが高まる
- 出産時に赤ちゃんにウイルスがうつり、赤ちゃんが慢性B型肝炎になる可能性が高くなる(約90%が慢性化)
- 妊娠中に肝機能が急激に悪化する(肝炎の急性増悪)ことがある
長期的な見通し
慢性B型肝炎の女性の多くは、適切な管理と治療を受ければ、健康な妊娠・出産が可能です。赤ちゃんへの感染も、出産直後の予防策でほとんど防げます。お母さん自身も、定期的な検査と生活の工夫で肝臓の健康を長く保つことができます。希望を持って、医療チームと一緒に進んでいきましょう。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月30日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。