遺伝性球状赤血球症について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
遺伝性球状赤血球症は、赤血球(血液中で酸素を運ぶ細胞)の形が、通常の丸い円盤状ではなく、丸くてつぶれた球形になる遺伝性の病気です。この赤血球は壊れやすく、脾臓(ひぞう)で早く壊されてしまうため、貧血や黄疸(おうだん)などの症状が現れることがあります。
重要な事実
- 赤血球の膜をつくるたんぱく質に異常があることで起こります。
- 症状の程度は人によって大きく異なり、無症状に近い人から重症まであります。
- 適切な管理と治療で、多くの人が普通に近い生活を送ることができます。
比較的まれな病気で、人口のおおよそ2,000人から5,000人に1人程度といわれています。日本では、遺伝性の溶血性貧血(赤血球が壊れやすい貧血)の中では比較的多い病気です。
どの年齢でも診断されますが、子どもで見つかることが多いです。家族に同じ病気の人がいるとリスクが高まります。男女による差はあまりありません。
症状
- 息をするのが苦しく、呼吸が速い場合は、すぐに119番を呼んでください。
- 意識がもうろうとする、呼びかけに反応が弱い場合は、すぐに119番を呼んでください。
- 突然の強い腹痛で動けない場合は、すぐに119番を呼んでください。
- ほとんど立てないほどの強い脱力感や、ひどい顔色不良がある場合は、すぐに119番を呼んでください。
- ⚠高熱が出て、いつもより顔色が悪い
- ⚠黄疸が急に強くなった
- ⚠尿の色が濃い茶色になった
- ⚠赤ちゃんがぐったりして、哺乳ができない
- ⚠めまいやふらつきが強く、立っていられない
一般的な症状
- 疲れやすさ、息切れなどの貧血症状
- 皮膚や白目が黄色くなる黄疸(おうだん)
- 脾臓が大きくなることによる左わき腹の違和感
- 胆石による右上腹部や背中の痛み
子供の症状
- 新生児期の黄疸が長引く
- 顔色が青白い
- ミルクや食事の進みが悪い
- 体重が増えにくい
- 風邪や感染症のあとに急に貧血が進む
高齢者の症状
- 長く続く疲労感
- 動悸や息切れ
- 胆石による腹部や背中の痛み
- 脚の皮膚潰瘍(まれ)
原因
主な原因
- 遺伝子の変化(突然変異)によって、赤血球の膜をつくるたんぱく質が異常になることが原因です。
- 常染色体優性遺伝(親のどちらか一方が持つ異常な遺伝子が子どもに伝わる)が約7割を占めます。
- 常染色体劣性遺伝(両親から異常な遺伝子を受け継ぐ)や、家族にいない新たな突然変異による場合もあります。
リスク要因
- 家族に遺伝性球状赤血球症の人がいること
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 強い疲労感や脱力感で日常生活が送れない
- 少し動いただけで息切れや動悸がする
- 黄疸が目立ってきた
- 発熱に伴って貧血の症状が普段より強い
- 尿の色が濃い茶色になった
定期受診を予約すべき場合:
- 顔色が悪い、疲れやすいなどの症状が1週間以上続く
- 黄疸が出たり消えたりする
- 健康診断などで貧血を指摘された
- 腹部の違和感や痛みが続く
診断
問診、診察、血液検査などを組み合わせて総合的に診断されます。特に、血液を顕微鏡で観察して赤血球の形を確認することが大切です。
行われる可能性のある検査
- 血算、網状赤血球数、ビリルビンなどの血液検査
- 末梢血塗抹検査(血液を薄くのばして顕微鏡で赤血球の形を見る検査)
- 直接クームス試験(免疫の異常による溶血を区別する検査)
- 浸透圧脆弱性試験(赤血球がどのくらい壊れやすいかを調べる検査)
- 遺伝子検査(診断が難しい場合に行われることがあります)
診察で予想されること
診断後は、血液内科(血の病気を専門に診る診療科)で経過を見ることが多いです。症状の程度や年齢に合わせて、検査の頻度や治療方針が決まります。
治療
治療は、貧血の程度や合併症の有無によって異なります。軽症では治療をせず、定期的に外来で経過をみるだけのこともあります。中等症以上では、貧血の改善や合併症の予防を目的とした治療が行われます。
自宅でのセルフケア
- 規則正しい生活と十分な睡眠を心がけ、疲れをためないようにしましょう。
- 発熱や感染症にかかったときは、早めに医療機関を受診しましょう。
- 手術や歯科治療を受けるときは、主治医にこの病気のことを必ず伝えましょう。
- 黄疸や尿の色の変化に注意し、気になる症状をメモしておきましょう。
医療治療
貧血が強い場合には輸血が行われることがあります。また、医師が必要と判断した場合には、脾臓(ひぞう)を摘出する手術や、胆石に対する手術、感染症を予防するためのワクチン接種などが検討されます。薬については、医師が症状や原因に合わせて適切なものを選択します。
手術が検討される場合
脾臓の摘出は、重症の貧血や胆石、溶血による生活への影響が大きい場合に検討されます。小さな子どもの場合は、感染症のリスクを考えて、可能な限り免疫機能が成熟する年齢まで待つことがあります。手術前には、肺炎球菌などのワクチンや抗生物質による予防について、医師から説明があります。
この病気と共に生きる
症状のない軽症の場合は、普段の生活がほとんど制限されません。定期的に通院して、貧血や黄疸、脾臓の大きさの変化をチェックすることが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 激しいスポーツを含め、多くの場合で生活制限は少ないですが、貧血が強いときは無理をせず休息をとりましょう。
- けがや手術、歯科治療で出血する可能性がある場合は、事前にかかりつけ医に相談しましょう。
- 家族や職場・学校に病気のことを伝え、緊急時の連絡方法を決めておくと安心です。
食事と運動
特別な食事制限はありません。バランスのよい食事と、無理のない範囲の運動を心がけてください。胆石がある場合は、脂肪の多い食事を一度に大量にとると痛みが出ることがあるため、量と内容に注意しましょう。
精神的健康と心の健康
慢性の病気であるため、ときには不安や疲れを感じることもあるでしょう。気分の落ち込みが続く場合は、一人で抱え込まず、医師や看護師、臨床心理士などの専門家に相談してください。
予防
この病気自体を予防することはできません。しかし、貧血の悪化や合併症を防ぐために、定期的な受診と感染症対策、体調の変化への早めの対応が重要です。
ワクチン
インフルエンザや肺炎球菌など、感染症を予防するワクチンは、溶血が進むきっかけを減らすのに役立つことがあります。特に脾臓を摘出した後は感染症のリスクが高まるため、ワクチンのスケジュールについて医師に相談してください。
検診プログラム
家族に発症者がいる場合は、本人だけでなく家族が検査を受けることを勧められる場合があります。遺伝子検査や遺伝カウンセリングについても、医師や認定遺伝カウンセラーに相談できます。
合併症
治療しない場合
- 重症の貧血が続き、日常生活に支障をきたすことがあります。
- 胆石や胆のう炎、黄疸が悪化することがあります。
- 感染症(特にパルボウイルスB19)がきっかけで赤血球の産生が一時的に止まり、急性の重度貧血(再生不良性発作)が起こることがあります。
- 脾臓が大きくなり、腹部の圧迫感や痛みを感じることがあります。
長期的な見通し
遺伝性球状赤血球症の多くは、適切な管理と治療によって、日常生活をほぼ普通に送ることができます。軽症の人は治療を必要とせず、中等症以上でも脾臓の摘出などの治療で症状が大きく改善することがあります。合併症はありますが、早期に発見して対処すればコントロールできることが多いので、希望を持って治療を続けてください。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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