アルポート症候群とともに生きる
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
アルポート症候群(アルポートしょうこうぐん)は、腎臓、耳、目に影響をおよぼす遺伝性の病気です。主に腎臓のろ過装置がうまく働かなくなり、血尿やたんぱく尿、腎機能の低下が起こります。同時に、高音域の聞こえにくさや目の異常が現れることもあります。
重要な事実
- 遺伝子の変化によって引き起こされる病気で、親から子に伝わることがあります。
- 早く気づいて治療すれば、腎臓の機能の低下をゆっくりにすることができます。
- 診断には、尿検査や血液検査だけでなく、遺伝子検査やかんたんな聴力検査などが使われることがあります。
アルポート症候群は比較的まれな病気です。およそ5,000人から10,000人に1人の割合で発症すると考えられています。
この病気は男性と女性のどちらにも起こりますが、男性の方が症状が強く出ることが多く、腎機能の低下が進みやすいといわれています。女性では無症状または軽い症状で経過することもあります。
症状
- 急に息苦しくなる
- 胸の痛みが続く
- 意識がもうろうとする
- けいれんが起きる
- 尿が急に出なくなる
- ⚠足や顔が急にむくむ
- ⚠血圧がとても高くなる
- ⚠血尿とともに強い腰や背中の痛みがある
- ⚠めまいや強いだるさが続く
一般的な症状
- 最初のうちは、血尿(おしっこに血が混じる)が見られることが多いです。
- たんぱく尿(おしっこにたんぱくが混じる)によって、目や足がむくむことがあります。
- 進行すると、高血圧や腎機能の低下が起こります。
- 思春期以降に、高音の聞こえにくさが現れることがあります。
- 目の中のレンズの形が変わったり、網膜に変化が現れたりすることがあります。
原因
主な原因
- アルポート症候群は、遺伝子の変化が原因で起こります。特定の遺伝子(COL4A3、COL4A4、COL4A5)に変化があると、腎臓や耳、目の組織を支えるコラーゲンというたんぱく質がうまく作られません。
- この病気は親から子どもに遺伝することがあります。男の子では症状が強く出やすく、女の子では軽い場合が多いですが、遺伝することがあります。
リスク要因
- 家族にアルポート症候群の人がいる場合
- 家族に原因不明の腎不全や難聴の人がいる場合
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 尿に血が混ざっている
- 耳が突然聞こえにくくなった
- 目のかすみや異常を感じる
定期受診を予約すべき場合:
- 家族にアルポート症候群の人がいるので、自分も心配なとき
- 健診で尿検査を再検査と言われた、またはたんぱく尿を指摘された
- 高音の聞こえにくさや目の違和感が続く場合
診断
アルポート症候群の診断は、問診(症状や家族の情報)、尿検査、血液検査、聴力検査、眼科検査、そして必要に応じて遺伝子検査などを組み合わせて行われます。
行われる可能性のある検査
- 尿検査(血尿やたんぱく尿を調べます)
- 血液検査(腎機能を評価します)
- 聴力検査(高音域の難聴をみつけます)
- 眼科検査(目の変化を調べます)
- 遺伝子検査(遺伝子の変化を確認します)
- 腎生検(腎臓の組織を小さく取り出して調べる検査で、必要に応じて行われます)
診察で予想されること
診断までには、これらの検査を数回に分けて受けることがあります。結果をもとに、専門の医師があなたの腎臓の状態を説明し、今後の方針を一緒に考えてくれます。
治療
アルポート症候群を完全に治す根本的な治療法はまだありません。しかし、腎臓の機能を保つための治療を早くから始めることで、病気の進行をゆっくりにすることができます。
自宅でのセルフケア
- かかりつけの医師が決めた血圧の管理を続ける
- お酒を飲みすぎない、たばこを吸わない
- 腎臓の状態に合わせた食事(塩分やたんぱく質の量)を守る
- 規則正しい生活と適度な運動を心がける
- 聴力や視力の変化を感じたら、早めに相談する
医療治療
治療では、主に血圧を下げる薬や、尿中にたんぱくが漏れるのを減らす薬が使われます。これにより腎臓への負担を減らし、腎機能の低下を遅らせることを目指します。難聴に対しては補聴器、目の症状には、それぞれの症状に合わせた治療が検討されます。薬の選び方や治療の進め方は、あなたの状態に合わせて医師が判断します。
手術が検討される場合
腎機能が大きく低下し、透析が必要になった場合でも、腎移植という治療が選択肢となることがあります。腎移植は外科的な治療で、健康な腎臓を提供してもらうことで、透析の必要がなくなる可能性があります。
この病気と共に生きる
アルポート症候群とともに生きるには、定期的な通院と検査がとても大切です。毎日の生活では、血圧を測るなどして体の変化に気を配り、医師と話し合いながら計画的に過ごしましょう。
生活習慣のアドバイス
- 毎日、無理のない範囲で体を動かす
- 睡眠をしっかりとり、ストレスをためないようにする
- 医師や管理栄養士と相談しながら、塩分やたんぱく質の量を意識した食事をする
- 聴こえにくさには補聴器を使い、目の変化は眼科で定期的に診てもらう
食事と運動
食事は腎臓の状態によって適切な内容が変わります。むやみに制限をするのではなく、医師や管理栄養士の指示を聞きながら進めることが大切です。運動は、疲れすぎない程度のウォーキングやストレッチがすすめられます。
精神的健康と心の健康
慢性の病気と向き合うことは、不安やストレスを感じることもあります。そうした気持ちは自然なことです。ひとりで抱え込まずに、家族や友達、医療者に話したり、同じ経験を持つ人たちとつながったりすることが助けになります。
予防
アルポート症候群を予防する方法は今のところありません。ただ、早期に発見して適切な治療を続けることで、腎機能の低下を遅らせたり、合併症を防いだりすることはできます。
ワクチン
感染症にかかると腎臓に負担がかかることがあるため、かかりつけ医と相談して、インフルエンザや肺炎球菌などの予防接種を検討してもよいでしょう。
検診プログラム
家族にアルポート症候群の人がいる場合は、症状がなくても尿検査や血液検査を受けて、腎臓の状態を確認することがすすめられます。また、将来子どもをもつかどうかについて遺伝カウンセリングで情報を得ることもできます。
合併症
治療しない場合
- 腎機能が次第に低下し、末期腎不全に至る可能性があります
- 高血圧が続くことで心臓や血管に負担がかかります
- 難聴が進行することがあります
- 目の異常(水晶体の変形や視力低下)が生じることがあります
長期的な見通し
アルポート症候群は治療が難しい病気ではありますが、近年の治療の進歩により、腎臓の働きを長く保てる人も増えています。たとえ腎移植が必要になっても、多くの人が社会で活躍しながら生活しています。あなたを支える医療者や周りの人と一緒に、前向きに過ごせる方法を探していきましょう。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。