好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)と共に生きる
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(こうさんきゅうせいたはつけっかんえんせいにくげしゅしょう、EGPA)は、体の免疫システムが自分の血管を攻撃して炎症を起こす、まれな自己免疫疾患です。血液中に「好酸球」という白血球の一種が増えて、血管や臓器に炎症や傷が生じます。かつては「チャーグ・ストラウス症候群」と呼ばれていました。肺や皮膚、神経、腎臓などさまざまな臓器に影響を及ぼすことがありますが、適切な治療で多くの方は症状を抑えられます。
重要な事実
- 血管に炎症が起こる「血管炎」の一種で、全身の臓器が影響を受けることがあります。
- 血液中の好酸球(寄生虫やアレルギー反応で増える白血球)が異常に増えます。
- ぜんそくやアレルギー性鼻炎を持つ人に発症しやすい傾向があります。
- 原因は完全には解明されていませんが、免疫のバランスの異常が関わると考えられています。
- 早期診断と治療が大切で、適切に治療すれば多くの場合病気を落ち着かせられます。
EGPAは非常にまれな病気です。日本では難病(指定難病)に指定されており、患者さんの数は全国で数千人程度と考えられています。
大人に多い病気で、特に40代から50代で発症することが多いですが、高齢者や、まれに子どもでも発症することがあります。男女比はほぼ同じか、やや女性に多いという報告もあります。ぜんそくやアレルギー体質を持つ人に発症しやすい傾向があります。
症状
- 突然の強い息苦しさ、呼吸困難
- 胸の強い痛み、圧迫感
- 突然の片側の手足のまひやしびれ、顔のゆがみ
- 言葉が話しにくい、相手の言葉が理解できない
- 意識がもうろうとする
- 大量の血を吐く、コーヒーかすのような吐物
- 激しい腹痛が突然現れた
- ⚠高熱が続く
- ⚠新しい発疹や皮下のしこりが急速に広がる
- ⚠手足のしびれや痛みが次第に強くなる
- ⚠血尿や尿の出が減る
- ⚠ひどい頭痛、めまい
- ⚠吐き気や嘔吐が続く
- ⚠急激な体重減少
一般的な症状
- ぜんそくのような症状(せき、ゼーゼーする呼吸、息苦しさ)
- 鼻づまりや鼻水、副鼻腔炎を繰り返す
- 皮膚に赤い発疹(ほっしん)やしこり、紫あざが現れる
- 手足のしびれ、痛み、力が入りにくい(神経の炎症)
- 筋肉や関節の痛み
- 発熱、倦怠感(だるさ)、体重減少
- 腹痛、下痢、血便など消化器の症状
- 血尿やむくみなど腎臓の症状
- 動悸(どうき)や胸の痛みなど心臓の症状
子供の症状
- 子どものEGPAは非常にまれですが、発症した場合は大人と同様に、ぜんそく症状、皮膚の発疹、神経の症状、発熱などが現れることがあります。
- 子どもでは症状が非典型的で、気づかれにくいこともあります。繰り返すぜんそくや原因不明の発疹・しびれがある場合は、早めに小児科を受診しましょう。
高齢者の症状
- 高齢者では、だるさ、疲れやすい、体重減少などの漠然とした症状が先行することがあります。
- 神経の症状や心臓の症状が重症化しやすい傾向があるため、少しでも異変を感じたら早めに医療機関を受診することが大切です。
- 他の病気(脳卒中や糖尿病の合併症など)と症状が似ていることがあり、診断が遅れることもあります。
原因
主な原因
- 正確な原因はまだわかっていませんが、免疫システムが誤って自分の血管や組織を攻撃する「自己免疫反応」が関わると考えられています。
- 遺伝的な体質と、感染症や環境要因(化学物質、薬剤など)がきっかけとなって発症する可能性がありますが、はっきりとした原因は特定されていません。
- アレルギーやぜんそくの既往が、発症の背景にあることが多く、アレルギー反応に関わる好酸球が異常に増えて組織を傷つけることが知られています。
リスク要因
- ぜんそく(特に大人になってからのぜんそく)
- アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎
- 薬剤アレルギーやアレルギー体質
- 男性よりも女性でやや多い可能性があります
- 40歳以上の成人(子どもや高齢者でも発症する場合があります)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- ぜんそく症状が急に悪化して、息苦しさが強い
- 胸の痛み、動悸、めまいがある
- 手足のしびれや力の入りにくさが急に出た
- 血尿が見られた、尿量が急に減った
- 皮膚の症状が急速に広がる、または高熱を伴う
- 強い腹痛や下痢・血便が続く
定期受診を予約すべき場合:
- ぜんそくや副鼻腔炎の症状がなかなかよくならない
- 原因不明の発疹、しびれ、筋肉痛、関節痛が続く
- だるさや疲れが続き、体重が減ってきた
- 血液検査で好酸球が多いと指摘された
- 持病のぜんそくが突然悪化するようになった
診断
診断は、症状の問診、身体診察、血液検査(好酸球の数や炎症のマーカー、ANCA抗体など)、尿検査、胸部X線やCTなどの画像検査、必要に応じて組織を採取して顕微鏡で調べる「生検」を組み合わせて総合的におこなわれます。診断には専門的な知識や検査が必要なため、リウマチ・膠原病内科などの専門医が担当することが一般的です。
行われる可能性のある検査
- 血液検査:好酸球の数、炎症の程度、ANCA抗体の有無、腎機能などを調べます
- 尿検査:腎臓の障害がないかを確認します
- 胸部X線・CT検査:肺や気管支の炎症の有無を調べます
- 神経伝導検査:しびれや運動障害の原因を評価します
- 生検(組織検査):皮膚、肺、神経などの一部を採取し、血管炎の特徴がないか顕微鏡で調べます
- 心電図・心エコー検査:心臓の状態を確認するために行うことがあります
診察で予想されること
診断がつくまでに数週間から数か月かかることがあります。症状はさまざまで、他の病気と区別することが難しいからです。専門医は、あなたの症状、検査結果、経過を総合して診断します。診断が確定したら、重症度に応じて治療方針を話し合います。治療は長期にわたることが多いため、あなたの生活スタイルや不安も相談しながら進めていきましょう。
治療
EGPAの治療の目標は、血管の炎症を速やかに抑え、臓器の障害を防ぐことです。症状の重症度やどの臓器が影響を受けているかに応じて、治療の強さや方法が決まります。治療は通常、リウマチ・膠原病内科を中心に、必要に応じて呼吸器科、皮膚科、腎臓内科、神経内科などの専門医が連携しておこなわれます。多くの場合、薬物療法が中心となり、治療中は定期的な通院と検査が必要です。
自宅でのセルフケア
- 医師の指示に従って薬を飲み続け、自己判断で止めないこと
- ぜんそくや鼻炎などの症状を日頃からしっかり管理すること
- 感染症の予防(手洗い、うがい、人混みを避けるなど)を心がけること
- 体調の変化を記録し、受診時に医師へ伝えること
- 禁煙し、受動喫煙を避けること
- 十分な睡眠と休息を取り、疲れをためないこと
医療治療
治療の中心となるのは、炎症を抑える「副腎皮質ステロイド薬」という薬です。症状が強い時期には、ステロイド薬を静脈注射や経口薬でしっかり使い、症状が落ち着いてきたら少しずつ減らしていきます。重症の場合や、ステロイド薬だけでは効果が不十分な場合は、免疫の働きを調整する「免疫抑制薬」などを併用することがあります。ただし、具体的な薬の種類や量は、症状や体質によって一人ひとり異なりますので、必ず医師の指示に従ってください。治療中は副作用のチェックなども定期的に行われます。
手術が検討される場合
EGPA自体に対して外科手術が行われることはほとんどありません。ただし、診断のために組織を採取する生検(皮膚、肺、神経など)や、重症の副鼻腔炎などに対して手術が検討されることはあります。
この病気と共に生きる
EGPAは再発と落ち着きを繰り返すことがある慢性の病気です。治療を休むと再発しやすいため、たとえ症状が落ち着いても通院と薬の継続が大切です。日常生活では、体調の変化に気を配り、無理をせず、自分のペースで生活しましょう。仕事や家事との両立については、主治医や看護師、相談支援員などに相談しながら、上手に調整していくことが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙をする(煙はぜんそくや血管炎の症状を悪化させることがあります)
- 規則正しい生活を送り、十分な睡眠をとる
- ストレスをため込まない工夫をする(趣味、ゆっくり入浴、深呼吸など)
- 感染症を予防する(手洗い、うがい、流行期のマスク着用など)
- 服薬を毎日の習慣に組み込む(服薬カレンダーやアプリを活用する)
- 定期的に血圧や体重を測り、むくみや体重急増に注意する
食事と運動
特別に避けなければならない食品はありませんが、ステロイド薬の治療中は食欲が増したり、血糖や血圧が上がりやすくなったりすることがあります。バランスの良い食事を心がけ、塩分や糖分のとりすぎに注意しましょう。運動は、体調が良いときは軽いウォーキングやストレッチなど無理のない範囲で行うと、体力維持や気分転換に役立ちます。息苦しさや動悸などがあるときは運動を控え、主治医に相談してください。
精神的健康と心の健康
まれな病気と診断されることは、不安や恐怖を感じるものですが、一人で抱え込まないでください。症状の変化、治療の副作用、将来への不安など、精神的な負担は大きくなることがあります。感情の波や不眠が続く場合は、遠慮なく医師や看護師、相談機関に伝えましょう。必要に応じて心のケアの専門家につないでもらえます。希望を持って治療を続けることが、病気のコントロールにもつながります。
予防
EGPA自体を予防する方法は、現在のところわかっていません。しかし、ぜんそくやアレルギーをしっかり管理し、喫煙を避け、感染症を予防することで、発症や再発のリスクを減らせる可能性があります。持病のある方は、定期的に医療機関でフォローを受けることが大切です。
ワクチン
治療で免疫が抑えられていると、感染症にかかりやすくなることがあります。インフルエンザや肺炎球菌などのワクチン接種は、感染症を予防するために役立つ場合がありますが、治療内容によっては接種できないこともあります。必ず主治医と相談してから接種を決めてください。
検診プログラム
EGPAはまれな病気のため、特に症状のない人を対象にした定期的なスクリーニング検査はありません。ただし、ぜんそくやアレルギーがあり、原因不明の症状(しびれ、発疹、発熱など)が続く場合は、血液検査で好酸球の数を調べるなど、早期診断につながる検査を受けることがあります。
合併症
治療しない場合
- 神経の障害が進行し、手足のしびれやまひが残ることがある
- 腎臓の炎症が進んで、腎不全になることがある
- 心筋炎や心膜炎などを起こし、心不全や不整脈の原因になることがある
- 肺の障害が悪化して呼吸不全になることがある
- 消化管の血管炎により、腸穿孔(腸に穴があく)などの重い合併症が起こることがある
長期的な見通し
EGPAは治療を行えば、病気の進行を抑えて多くの方が寛解(病気の活動性が落ち着いた状態)を達成できます。再発することもありますが、症状が出現するたびに適切な治療を受けることで、長い間普通に近い生活を送ることが可能です。診断後の経過は人それぞれですが、医療の発達により予後は大きく改善しています。焦らず、医師と二人三脚で治療を続けていきましょう。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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