結節性多発動脈炎(PAN)とともに生きる
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
結節性多発動脈炎(PAN)は、からだの中小の動脈(心臓から送り出される血液を運ぶ血管)に炎症が起こる、まれな病気です。炎症によって血管が傷つき、血液が十分に流れなくなると、腎臓、皮膚、神経、消化管など、さまざまな臓器に影響が出ることがあります。早期に診断して治療を始めれば、症状をうまくコントロールできる方が多い病気です。
重要な事実
- 血管の壁に炎症が起きる自己免疫性の病気です(自分を守る免疫が、誤って自分の血管を攻撃してしまうこと)。
- 発熱、体重減少、筋肉痛・関節痛、しびれ、皮膚の赤紫色の発疹など、全身にさまざまな症状があらわれる可能性があります。
- 日本では指定難病に認定されており、医療費の助成を受けられる場合があります。
- 治療の中心は炎症を抑え、免疫の働きを調整することです。最近の治療の進歩により、多くの方が社会生活を続けながら療養しています。
結節性多発動脈炎はとてもまれな病気です。日本では約1,000人から2,000人程度の患者さんがいるとされており、難病の一つに数えられています。
40代から60代を中心に、男性にやや多くみられます。ただし、子どもでも発症することがあります。原因は完全にはわかっていませんが、感染症(特にB型肝炎ウイルス)がきっかけになることがあるとされています。
症状
- ひどい胸の痛みやお腹の激痛
- 突然の激しい頭痛
- まひやしゃべりにくさ、片側の手足の力が入らない
- 突然、目が見えなくなる・物が二重に見える
- 血を吐く・血便が出る・意識がもうろうとする
- ⚠高い発熱が続く
- ⚠新しく皮膚の斑点や発疹が広がる
- ⚠強い痛みがあるが、救急車を呼ぶほどではない
- ⚠むくみや急な体重増加
- ⚠しびれや筋力の低下を強く感じる
一般的な症状
- 長く続く発熱や寝汗
- 体重が減る・食欲が落ちる
- 全身のだるさ(疲れやすさ)
- 筋肉や関節の痛み・こわばり
- 皮膚に赤紫色の斑点やしこり(結節)ができる
- 手足のしびれや力が入りにくい(神経の症状)
- お腹の痛み・血便・嘔吐
- 高血圧・腎臓の障害(尿異常やむくみ)
子供の症状
- 発熱や全身のだるさなど、風邪に似た症状が続くことがあります。
- 湿疹のような発疹や関節の痛みなどが目立つことがあります。
- 成長や発達に影響が出る可能性もあるため、異変を感じたら小児科を受診することが大切です。
高齢者の症状
- 動脈の炎症による血流低下が起こりやすく、脳卒中(めまい・ふらつき・しゃべりにくさ)や心臓の症状がみられやすくなります。
- 神経の症状(しびれ・感覚が鈍い)が強く出ることがあります。
- 転倒や食べにくさ、認知機能の低下など、年齢による変化と重なって見落とされやすいことがあります。
原因
主な原因
- まだ完全には解明されていませんが、免疫のシステムが自分の血管を攻撃することが原因と考えられています(自己免疫の異常)。
- 一部の例では、B型肝炎ウイルスなどへの感染がきっかけになることが知られています。
- 親から子へ遺伝することはまれな病気です。
リスク要因
- B型肝炎ウイルスへの感染
- 中高年(特に40~60代)
- 特定の薬剤への反応(ただしまれ)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上記の「急いで受診が必要な症状」がある場合
- 原因不明の発熱、体重減少、関節痛、しびれ、発疹が数日から数週間続く場合
定期受診を予約すべき場合:
- だるさや疲れが続く
- 最近、体重が意図しないのに減った
- 手足の感覚がおかしい、力が入りにくい
診断
診断は、問診、身体の診察、血液検査、尿検査、画像検査、そして組織検査(生検)を組み合わせて行います。血管の炎症を証明することが診断のポイントなので、ときに複数の検査が必要です。専門医(リウマチ科・膠原病内科など)が担当します。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(炎症の程度、免疫の異常、B型肝炎などのウイルス感染を調べます)
- 尿検査(腎臓の障害を確認します)
- 腹部エコー(超音波)、CT、MRI(血管や内臓の状態を画像で調べます)
- 血管造影(血管に色素を入れて、細い血管の変化を詳しくみる検査)
- 組織検査(生検)(皮膚や筋肉の一部を小さく採って顕微鏡で調べます)
診察で予想されること
診断がつくまでに時間がかかることがあります。症状が多様で、ほかの病気と似ているためです。検査のために何度か通院が必要になることもありますが、一つひとつの検査の意味を医師が説明してくれます。必要に応じて入院して検査を進める場合もあります。
治療
治療の目的は、血管の炎症をしっかり抑えて、壊れた血管による臓器のダメージを防ぐことです。診断が早いほど、治療の効果も高まりやすくなります。多くは外来で通院治療ができますが、症状が重いときは入院して治療します。
自宅でのセルフケア
- 処方されたお薬は、医師の指示どおりに飲み続ける(自分で判断してやめない)
- 記録をつける(体温、体重、痛みの部位や程度、しびれなど、気づいたことをメモする)
- 症状が落ち着いていても、定期的な通院と検査を続ける
- 疲れたときは休む。無理をせず、自分の体調に合わせて活動量を調整する
- 感染症の予防(手洗い、うがい、人混みを避けるなど)に気をつける
医療治療
治療では、強い炎症を抑えるお薬と、免疫の働きを調整するお薬が中心になります。症状の重さや障害される臓器によって、お薬の組み合わせや量を医師が決めます。治療中は、感染症や副作用のリスクを減らすための工夫も大切です。具体的な治療法は、患者さんごとに異なるので、医師とよく相談してください。
手術が検討される場合
通常は薬による治療が中心で、手術が必要になることは多くありません。ただし、血管がこぶのように膨らんだり(動脈瘤)、腸など臓器に穴があいてしまった場合には、緊急の手術が必要になることがあります。
この病気と共に生きる
結節性多発動脈炎は波がある病気です。調子のよいときと悪いときがあります。大切なのは、自分の体調を見守りながら、無理のない範囲で生活のリズムを保つことです。通院や検査を続けながら、痛みやしびれ、疲れに対しては、早期に医療者へ相談しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を心がける(喫煙は血管に大きな負担をかけます)
- ストレスをためない工夫をする(趣味、軽い運動、休息など)
- 感染症を予防する(冬期はマスクや手洗い、人混みを避ける)
- 体の冷えや過労を避け、睡眠をしっかりとる
- かかりつけ医と専門医を決め、薬歴などの情報を共有しておく
食事と運動
基本的にはバランスのよい食事を心がけてください。高血圧を合併する場合は塩分を控え、腎臓に障害がある場合はたんぱく質やカリウムの摂取について医師や管理栄養士のアドバイスを受けることをおすすめします。運動は、痛みや炎症が強いときは安静が第一です。体調が落ち着いていれば、ウォーキングなどの軽い有酸素運動を取り入れ、活動量を少しずつ増やしていきましょう。
精神的健康と心の健康
原因がわからない症状に長く悩むことや、将来への不安は大きなストレスになります。気分が落ち込みやすい、眠れない、食欲がないなどがあれば、我慢せずに医師や看護師、医療ソーシャルワーカーに相談してください。必要に応じて心理カウンセリングや精神科の受診を勧められることもあります。
予防
結節性多発動脈炎そのものを予防する方法は見つかっていません。ただし、早期に発見し、治療によって炎症を抑えることで、重大な合併症を予防することができます。また、B型肝炎などの感染症を予防することは、発症のリスクを下げる可能性があります。
ワクチン
感染症は症状悪化のきっかけになることが知られています。インフルエンザや肺炎球菌などの予防接種は感染症を防ぐために大切ですが、ところが、特に免疫に影響のある治療をしている場合は、予防接種を受けられるかどうか医師に確認してください。
合併症
治療しない場合
- 腎臓の障害が進み、むくみや高血圧が悪化する
- 神経が傷つき、しびれやまひが残る
- 心臓や脳の血管が傷つき、心筋梗塞や脳卒中を起こしやすくなる
- 血管瘤(血管のこぶ)が破れて、大出血を起こす
- 消化管の血流が悪くなり、腸に穴があく(穿孔)
長期的な見通し
結節性多発動脈炎は、現在では治療の選択肢が増え、多くの人で症状を落ち着かせることができるようになってきました。治療を続けることで、「寛解」と呼ばれる状態(症状がほとんどなく安定した状態)を目指せます。ただし、長く付き合う病気でもあります。あきらめず、医療チームと一緒に自分に合った対策を見つけながら、前向きに生活していくことが大切です。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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