Mastitis
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
乳腺炎(にゅうせんえん)とは、乳房の組織が炎症を起こす状態です。主に授乳中の女性に起こりますが、まれに男性や授乳していない女性にも起こることがあります。炎症は感染が原因で生じることもあります。
重要な事実
- 乳腺炎は母乳育児中の女性に最も多く見られます。
- 適切なケアを行えば、数日から1週間程度で改善することがほとんどです。
- 放置すると膿瘍(のうよう:膿のたまり)ができる可能性があります。
はい、乳腺炎は授乳中の女性の約10~20%が経験する比較的一般的な症状です。
主に授乳中の女性(特に産後数週間から数ヶ月の間)に起こりますが、授乳していない女性やまれに男性にも発症することがあります。
症状
- 急激な高熱(40度以上)
- 胸の痛みが急に悪化した
- 呼吸が苦しい、または意識がもうろうとする
- 乳房全体が赤黒くなり、強い痛みがある
- ⚠乳房に強い痛みや熱感があり、市販の鎮痛剤で痛みが和らがない
- ⚠発熱が3日以上続く
- ⚠乳房の一部が硬く腫れて、触ると激しく痛む(膿瘍の可能性あり)
一般的な症状
- 乳房の一部が赤く腫れる
- 触ると熱っぽい、痛みがある
- 母乳の出が悪くなる、または母乳が苦い味がする(感染時)
- 38度以上の発熱、悪寒(おかん:寒気がして震えること)
- 全身のだるさや筋肉痛
子供の症状
- 小児の乳腺炎は非常にまれですが、赤ちゃんの乳房が腫れる、赤くなる、痛がるなどの症状があります。
高齢者の症状
- 高齢者の乳腺炎は稀ですが、乳房にしこりや痛み、発赤、排膿(はいのう:膿が出ること)が見られることがあります。
原因
主な原因
- 母乳が乳房にうっ滞(滞って溜まる)すること
- 乳首の傷から細菌(主に黄色ブドウ球菌)が入り込み感染すること
- 授乳の間隔が空きすぎたり、赤ちゃんの吸い付きが悪いこと
リスク要因
- 授乳中の乳首の傷やひび割れ
- 過去に乳腺炎を起こしたことがある
- 強いストレスや疲労による免疫力低下
- 不適切な授乳方法や頻繁な授乳中断
- タバコを吸う
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 高熱が続く(38.5度以上が2日以上)
- 乳房の痛みや腫れがひどく、動くのもつらい
- 膿のような分泌物が出る
定期受診を予約すべき場合:
- 軽い腫れや痛みがあるが、自己ケアで改善しない場合
- 授乳がうまくいかない、乳首の痛みが続く場合
診断
医師が問診と診察を行います。乳房の状態を確認し、場合によっては乳汁の培養検査や超音波検査(エコー)を行うこともあります。
行われる可能性のある検査
- 問診:症状や授乳の状況について詳しく聞かれます
- 診察:乳房の腫れや痛み、発赤の程度を確認します
- 乳汁培養検査:感染の原因菌を調べるため、母乳を採取して検査します
- 超音波検査(エコー):膿瘍(膿のたまり)がないか確認します
診察で予想されること
診察は通常数分から10分程度で終わります。痛みを伴う検査ではありませんが、乳房を押す際に少し痛みを感じることがあります。医師から授乳方法や自己ケアのアドバイスを受けられます。
治療
治療の基本は、乳房内の母乳をこまめに排出することです。感染が疑われる場合は抗生物質による治療が行われます。痛みや発熱に対しては解熱鎮痛薬が用いられます。膿瘍ができた場合は、針で膿を吸引する処置が必要になることがあります。
自宅でのセルフケア
- 授乳を続ける:痛みがあっても中断せず、頻回に授乳または搾乳して母乳を出す
- 冷罨法(れいあんぽう):授乳後に冷たいタオルで腫れた部分を冷やす(痛みや腫れを和らげる)
- 温罨法(おんあんぽう):授乳前に温かいタオルで乳房を温めると母乳の出が良くなることがある
- 水分をしっかりとる
- 休養を十分にとり、体を温かく保つ
医療治療
医師は状況に応じて抗生物質(感染症治療薬)を処方します。必ず処方された期間は飲み切ってください。痛みや発熱には解熱鎮痛薬が用いられます。授乳中でも安全な薬を医師が選びます。
手術が検討される場合
膿瘍ができた場合は、針で膿を抜く処置(穿刺吸引)が必要になることがあります。まれに切開して排膿することもありますが、外来で行える処置で、通常は数分で終わります。
この病気と共に生きる
乳腺炎の間は、こまめな授乳・搾乳を続けることが最も大切です。痛みがあっても可能な限り母乳を排出することで治りが早まります。体を休め、水分補給をこまめに行いましょう。
生活習慣のアドバイス
- 疲れを溜めず十分な睡眠をとる
- ストレスを減らす工夫(軽いストレッチ、深呼吸など)
- 乳首のケア:授乳後は清潔にし、保湿クリームを使って傷を予防する
- 正しい授乳姿勢を確認する(助産師や医師に相談すると良い)
食事と運動
特別な食事制限はありませんが、バランスの良い食事と十分な水分摂取が大切です。激しい運動は避け、状態が落ち着いてから徐々に再開してください。
精神的健康と心の健康
乳腺炎の痛みや授乳の困難さは、不安やイライラ、授乳への自信喪失につながることがあります。これは決してあなたのせいではなく、多くの母親が経験するものです。辛いときは家族や医療者に相談してください。
予防
完全に予防することは難しいですが、リスクを減らすことは可能です。頻回に授乳し、母乳が滞らないようにすること、乳首のケアを丁寧に行うこと、疲労やストレスをためないことが予防に役立ちます。
ワクチン
乳腺炎の予防に特化したワクチンはありませんが、インフルエンザなどの予防接種を定期的に受けて免疫力を保つことは間接的に役立つ可能性があります。
検診プログラム
乳腺炎を対象にした特別な検診はありません。ただし、乳房の異常に気づいたら早めに医師に相談することが重要です。
合併症
治療しない場合
- 膿瘍(のうよう):膿のたまりができ、針や切開で排出する処置が必要になる
- 菌血症(きんけつしょう):細菌が血液に入り全身に感染が広がる(まれだが重篤)
- 慢性化:繰り返し乳腺炎を起こすことがある
- 授乳の中断に伴う赤ちゃんの栄養不足(適切な代替栄養が必要)
長期的な見通し
乳腺炎は適切な治療を行えば、ほとんどの場合数日から1週間以内に改善します。膿瘍ができても適切な処置で治癒し、その後も母乳育児を継続できます。早期に治療を始めることで、合併症のリスクを最小限に抑えられます。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月17日
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