肺動脈性肺高血圧症とともに生きる
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
肺動脈性肺高血圧症(はいどうみゃくせい はいけつあつしょう)は、心臓から肺へ血液を送る「肺動脈」という血管の中の血圧が、通常よりも高くなってしまう病気です。血圧が高い状態が続くと、心臓が血液を送り出すために負担がかかります。症状はゆっくり進むことが多く、早く見つけて治療を始めることが大切です。
重要な事実
- 肺動脈性肺高血圧症は、めずらしい病気のひとつです。
- 早期に発見して適切な治療を続けると、症状を抑えながら生活することができます。
- 息切れや倦怠感などの症状が、体を動かしたときにあらわれやすくなります。
- 治療と生活管理の両方が、この病気とうまく付き合う鍵になります。
肺動脈性肺高血圧症は、とてもめずらしい病気です。日本では、人口100万人あたり数人程度と報告されています。
どの年齢でも発症する可能性がありますが、特に20代から40代の女性に多く見られます。また、ほかの病気(膠原病(こうげんびょう)や肝臓の病気など)がある方や、家族にこの病気の方がいる場合も、発症リスクが高まります。
症状
- 呼吸が苦しくてじっとしていられない
- 突然の激しい胸の痛み
- 失神(気を失う)
- 血の混じった痰や喀血(かっけつ)がある
- ⚠息切れが以前より明らかに悪化した
- ⚠足のむくみが急に強くなった
- ⚠胸の痛みを頻繁に感じる
- ⚠動悸や息苦しさが休んでもよくならない
一般的な症状
- 体を動かしたときの息切れ
- 立ちくらみやめまい
- 疲れやすさ、倦怠感
- 胸の痛み
- 動悸(心臓がドキドキする感じ)
- 足やくるぶしのむくみ
- 唇や爪が青っぽく見える(チアノーゼ)
子供の症状
- 赤ちゃんや子どもでは、哺乳力の低下や体重増加の不良が見られることがあります。
- 活動前に休むことが増え、遊びを嫌がるようなそぶりを見せることもあります。
- 成長の遅れや、運動時に唇が青くなることもサインのひとつです。
高齢者の症状
- 加齢による体力低下やほかの持病と間違われやすく、見つかりにくいことがあります。
- 階段や坂道で息切れが強くなり、家事や身の回りのことがつらくなることがあります。
- 足のむくみや、食事中の息苦しさなどの症状も出やすくなります。
原因
主な原因
- 原因がはっきりしない「特発性肺動脈性肺高血圧症」
- 家族に同じ病気の人がいる場合の「遺伝性肺動脈性肺高血圧症」
- 膠原病、肝臓の病気、心臓の生まれつきの病気など、ほかの病気に伴って起こる場合
- 食欲抑制薬などの特定の薬や毒物による場合
リスク要因
- 女性であること
- 家族歴(同じ病気の親族がいる)
- 膠原病(強皮症など)を視野に入れている、または持っている
- 肝臓の病気や HIV感染症などの持病がある
- 血管に影響する薬剤を服用したことがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息切れが悪化して、会話や入浴がつらくなった
- 胸痛や失神を繰り返す
- 突然、足のむくみが強くなる
- すぐに息が切れて次の一歩も歩けない
定期受診を予約すべき場合:
- 息切れや疲れやすさが数週間以上つづいている
- 動悸やめまいをよく感じる
- 足のむくみが出てきた、または続いている
診断
肺動脈性肺高血圧症の診断は、問診や身体診察に加えて、心臓や肺の状態を調べるいくつかの検査を組み合わせて行います。確定診断には、心臓カテーテル検査が必要です。
行われる可能性のある検査
- 心エコー検査:心臓の形や働き、心臓内部の圧力を推定します。
- 血液検査:心臓に負担がかかると出る物質や、ほかの病気の有無を調べます。
- 胸部X線検査・CT(断層撮影):肺の状態を見ます。
- 肺機能検査:呼吸の状態を確認します。
- 右心カテーテル検査:肺動脈の血圧を直接測定する、確定診断のための検査です。
診察で予想されること
診断の流れは、まず外来で息切れや疲れやすさなどの症状を聞き、そのうえで検査を行います。心エコー検査などで肺高血圧症が疑われると、専門的な治療ができる病院を紹介されます。確定診断のためには、入院してのカテーテル検査が必要になることもありますが、検査自体は一般的な負担の範囲です。担当医が詳しく説明しながら進めてくれます。
治療
肺動脈性肺高血圧症の治療は、病気の進行を抑え、症状を和らげ、生活の質を保つことを目的とします。症状の強さや患者さんの状態に合わせて、薬物療法や酸素療法、リハビリテーションなどを組み合わせます。治療は必ず専門の医師の指示のもとで行ってください。
自宅でのセルフケア
- 通院や服薬の指示を守りましょう。
- 自分のペースで無理のない運動を続けましょう。
- 体重を毎日測るなど、むくみや息切れの変化に注意しましょう。
- 禁煙し、受動喫煙も避けましょう。
- 感染症予防のため、手洗いやうがいを徹底しましょう。
医療治療
治療には、肺の血管を広げて血圧を下げるお薬、血栓(けっせん)ができないようにするお薬、体液を調整するお薬などが用いられます。また、酸素が不足している場合には在宅酸素療法が行われることがあります。どの治療法を選ぶかは、患者さんの状態をよく評価して医師が決めます。
手術が検討される場合
薬で効果が十分に得られず、進行した場合には、肺移植(はいしょく)という手術が選択肢となることがあります。これは高度な専門医療機関で行われ、移植チームが詳しく適応を判断します。
この病気と共に生きる
肺動脈性肺高血圧症と診断されても、多くの方が治療を続けながら仕事や家庭生活を全うしています。体調の波を上手に把握し、疲れを感じたら早めに休むこと、そしてできることを増やしていく工夫が大切です。医療者とよく相談しながら、自分に合った生活ペースを作りましょう。
生活習慣のアドバイス
- 深呼吸やストレッチなど、無理なくリラックスできる習慣を持ちましょう。
- 疲れやすい日は行き先や予定を調整して、無理をしない工夫をしましょう。
- 感情のストレスは症状に影響します。リラックス法を身につけ、気分転換の時間を持ちましょう。
- ほかの人に病気を理解してもらい、必要な時は助けを求めましょう。
食事と運動
塩分の取りすぎはむくみや血圧の上昇につながるため、普段から薄味を心がけましょう。水分の取りすぎも負担になる場合があるので、医師の指示に従いましょう。運動は、ウォーキングや軽いストレッチなど、息が上がりすぎない程度であれば症状の維持に役立ちます。運動量は必ず医師に相談して決めてください。
精神的健康と心の健康
治療が長期にわたる病気では、不安や落ち込みを感じることが自然にあります。「うまく生きられない」と感じるのはあなたのせいではありません。必要な時は、医師や看護師に心のつらさを相談してください。また、精神科の医師や臨床心理士などの専門家につながることもできます。
予防
肺動脈性肺高血圧症そのものを予防することは難しいですが、早期発見・早期治療により進行を遅らせることができます。特に、持病がある方はその治療をしっかり続けることが、結果として肺高血圧症の予防や悪化防止につながります。
ワクチン
インフルエンザや肺炎などの感染症にかかると症状が悪化しやすくなります。予防接種を検討し、時期や種類について医師に相談しましょう。
検診プログラム
家族歴がある方や、強皮症などのリスクがある方は、症状がなくても定期的に心エコー検査などを受けることをおすすめします。当てはまる方は、医師に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 右心不全(心臓が肺に血液を送りきれなくなり、体にむくみや水がたまる状態)
- 不整脈の悪化
- 肺動脈内に血栓(血のかたまり)ができる
- 突然の増悪(症状が急に悪くなること)
長期的な見通し
肺動脈性肺高血圧症と診断されても、近年の治療の進歩により、症状をコントロールしながら生活できる方が多くいます。治療を休まずに続け、体調の変化をこまめに医師に伝えることで、より良い状態を保つことができます。あきらめずに、医療者と一緒に前を向いて歩んでいきましょう。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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