疥癬
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
疥癬(かいせん)は、ヒゼンダニという小さな虫が皮膚に寄生して起こる感染症です。ダニが皮膚の下にトンネルを掘り、強いかゆみを引き起こします。うつる病気ですが、適切な治療で治すことができます。
重要な事実
- 強いかゆみが特徴で、特に夜間に悪化します。
- 直接の皮膚接触や、寝具・衣類を共有することでうつります。
- 適切な治療で完治する病気です(治療には医師の診察と薬が必要です)。
世界中で見られる一般的な皮膚感染症で、日本でも年間に多くの患者さんが報告されています。特に集団生活を送る施設などで流行することがあります。
年齢や性別に関係なく誰でもかかる可能性があります。特に、免疫力が弱い方、高齢者施設や保育園などで集団生活を送る方、衛生状態が良くない環境で暮らす方はリスクが高くなります。
症状
- 激しいかゆみで眠れない、または日常生活が送れない
- 発疹から膿(うみ)が出て、熱が出ている(細菌感染の可能性)
- 全身に広がる痛みや赤みを伴う(重症感染のサイン)
- ⚠かゆみが数日以上続く、または家族や周囲の人にも同じ症状が出た
- ⚠市販のかゆみ止めを使っても症状が改善しない
一般的な症状
- 強いかゆみ(特に夜間に悪化)
- 小さな赤い発疹や線状の盛り上がり(ダニのトンネル跡)
- 手の指の間、手首、ひじの内側、脇の下、腰回り、陰部などにできやすい
子供の症状
- 顔や頭皮、手のひら、足の裏にも発疹が出やすい
- かゆみが強く、夜泣きや不機嫌になることがある
- しばしば湿疹(しっしん)と間違われることがある
高齢者の症状
- かゆみが比較的弱いことがあるため、診断が遅れやすい
- 高齢者施設などで集団発生しやすい
- 免疫力が低下していると、ノルウェー疥癬(角化型疥癬)という重症型になることがある
原因
主な原因
- ヒゼンダニ(疥癬虫)という肉眼では見えない小さな虫が皮膚に寄生すること
- ダニのメスが皮膚の角質層にトンネルを掘り、そこで卵を産む
- 感染した人との直接の皮膚接触(長時間の接触が必要)
リスク要因
- 感染している人との同居や濃厚接触
- 寝具やタオル、衣類の共有
- 介護施設や寮などの集団生活
- 免疫力の低下(ステロイド薬の長期使用やHIVなど)
- 衛生環境が不十分な場合
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 強いかゆみで夜眠れない、または生活に支障がある
- 家族や同居者にも同じ症状が出た
定期受診を予約すべき場合:
- 原因不明の皮膚のかゆみが1週間以上続く
- 発疹が広がる、またはなかなか治らない
診断
医師が皮膚の状態を観察し、特徴的な発疹やトンネル跡を確認します。また、皮膚を少し削って顕微鏡でダニや卵を確認する検査を行うことがあります。
行われる可能性のある検査
- 皮膚の観察(ダーモスコピーという拡大鏡で見ることもあります)
- 皮膚を軽く削って顕微鏡検査(スクラッチテスト)
- 必要に応じて血液検査(二次感染の確認など)
診察で予想されること
診察は特別な準備は必要なく、痛みもほとんどありません。皮膚科を受診し、症状や接触歴について医師に伝えてください。検査結果はその日のうちにわかることが多いです。
治療
疥癬の治療は、ダニを退治するための薬を使います。処方された薬を正しく使うことが大切です。また、寝具や衣類の処理も併せて行います。治療は通常1~2週間続きますが、症状が治まるまでにはもう少し時間がかかることがあります。
自宅でのセルフケア
- 処方された軟膏やクリームは、必ず医師の指示通りに全身に塗ってください(指示された回数と日数を守る)
- 寝具、下着、タオル、衣類は熱湯(60℃以上)で洗うか、乾燥機の高温設定で処理する
- 洗えないものは、密閉できる袋に1週間以上入れてダニを死滅させる
- かゆみが強い場合は、冷たいタオルで冷やすか、かゆみ止めの内服薬を医師に相談する(自己判断で市販薬を使わない)
- 爪を短く切り、かきむしりによる傷を防ぐ
医療治療
皮膚科医が処方するダニを退治するための外用薬(塗り薬)が中心です。重症の場合や免疫力が低下している方には、内服薬(飲み薬)が使われることもあります。治療は医師の指示に従って確実に行うことが重要です。薬の名前や用量は患者さんによって異なるため、必ず医師の指導を受けてください。
手術が検討される場合
通常、手術は必要ありません。ただし、重症型で皮膚が厚くなった場合など、ごくまれに外来で病変を除去することがありますが、標準治療ではありません。
この病気と共に生きる
治療中はかゆみが続きますが、薬を正しく使えばダニは死滅します。かゆみはダニがいなくなってからもしばらく続くことがあります。かゆみを和らげるために、清潔を保ち、刺激の少ないスキンケアを心がけましょう。家族や周囲の人にうつさないよう、寝具やタオルは分けて使い、肌の直接接触を避けてください。完治するまでは、プールや温泉などの共有施設は控えましょう。
生活習慣のアドバイス
- 治療中は家族や同居者も一緒に治療を行うことが多い(症状がなくてもダニが潜んでいる可能性があるため)
- 入浴は毎日行って清潔を保つが、ゴシゴシこすらず優しく洗う
- 衣類や寝具は毎日交換し、熱処理する
- 学校や仕事は、医師の許可が出るまで休む必要はないが、プールや体育の授業などは控える
食事と運動
食事や運動に特別な制限はありません。栄養バランスの良い食事を心がけ、十分な睡眠をとることで免疫力を高めましょう。かゆみが強いときは、激しい運動で汗をかくと余計にかゆくなることがあるので、無理のない範囲で行ってください。
精神的健康と心の健康
強いかゆみや見た目への不安、周囲にうつしてしまうかもしれないという心配から、ストレスや抑うつ感を感じることがあります。かゆみそのものも睡眠不足やイライラの原因になります。こうした気持ちは自然な反応です。信頼できる人に話したり、医療機関で相談することも大切です。
予防
完全に予防するのは難しいですが、感染している人との直接の皮膚接触を避け、寝具や衣類を共有しないことでリスクを減らせます。集団生活では、早期発見と適切な治療が最も効果的な予防策です。施設などでは、厚生労働省のガイドラインに沿った対策が推奨されています。
検診プログラム
感染が疑われる場合は定期的な皮膚のチェックが役立ちます。特に集団発生時には、症状がなくても医師の診察を受けることが勧められます。
合併症
治療しない場合
- 強いかゆみで皮膚をかきむしることで、細菌による二次感染(とびひ、せつよう炎など)を起こす
- 症状が慢性化し、皮膚が厚くなる(苔癬化)
- 免疫力が低下している場合、ノルウェー疥癬(重症型)になり、大量のダニが皮膚に寄生して広範囲に広がる
- 集団生活の場合、他の人への感染が拡大する
長期的な見通し
疥癬は適切に治療すれば完治する病気です。治療を始めればダニはすぐに死滅しますが、かゆみや発疹は完全に消えるまでに数週間かかることがあります。再発を防ぐためには、指示された治療を最後まで行うことと、周囲の方の治療も併せて行うことが大切です。早期に皮膚科を受診すれば、合併症なく治る見込みが高いです。
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最終更新: 2026年7月29日
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