選択的IgA欠損症
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
選択的IgA欠損症とは、血液や鼻・のど・腸などの粘膜を守る免疫物質(抗体)のひとつであるIgAが、先天的に少ない体質のことです。IgA以外の抗体は正常なので、多くの人は症状がなく、特別な治療を受けずに健康に暮らしています。ただし、かぜや肺炎などの感染症にかかりやすくなることや、アレルギー・自己免疫疾患を合併しやすくなることがあります。
重要な事実
- 生まれつきIgAという抗体の量が少ない状態です。
- 多くの人は無症状で、特別な治療は必要ありません。
- 感染症やアレルギー、自己免疫疾患などの合併症に注意が必要です。
最も多い原発性免疫不全症のひとつです。地域や調査によって異なりますが、およそ3000人から6000人に1人程度と報告されています。
どの年齢でも見つかりますが、多くは小児期に診断されます。性別による大きな差はなく、家族内で見られることもあります。
症状
- 突然の呼吸困難や息苦しさ
- 顔やのどのはれ、声のかすれ、全身じんましん(輸血後に起こる重いアレルギー反応の可能性)
- 震えが止まらないほどの高熱と、意識がもうろうとする
- 血が混ざった下痢や、がまんできない腹痛が続く
- ⚠高熱が続いて水分が取れない
- ⚠せきやたんがひどくなり、胸が痛む
- ⚠下痢や嘔吐が続いて、尿量が減っている
- ⚠関節のはれや痛みが強くなっている
一般的な症状
- 症状がないことが最も多い
- 繰り返す副鼻腔炎(びくうえん)、中耳炎、肺炎などの感染症
- 下痢や胃腸炎などの消化管の感染症
- アレルギー性鼻炎、喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患
子供の症状
- 子どもの場合は、繰り返す中耳炎や副鼻腔炎、しつこいかぜを引き起こしやすい傾向があります。
- 成長や体重増加が気になることもあります。
- 保育園や学校でかぜをもらう頻度が高いように感じられるかもしれません。
高齢者の症状
- 高齢者では、加齢による免疫機能の低下と重なるため、感染症が重症化しやすくなることがあります。
- 関節リウマチや甲状腺疾患などの自己免疫疾患を合併することもあります。
- すでにある慢性の病気の症状と似ているため、見逃されることもあります。
原因
主な原因
- 原因は完全には解明されていませんが、生まれつき免疫システムにIgAを作るよう指示が伝わりにくい状態と考えられています。
- 一部の家族では遺伝的な要因が関わることがありますが、多くの人は家族に同じ病気の人がいません。
- 特定の薬や環境要因が影響するケースもあるとも言われますが、まだ十分にわかっていません。
リスク要因
- 家族にIgA欠損症やほかの原発性免疫不全症の人がいる場合
- 関節リウマチ、甲状腺疾患、セリアック病などの自己免疫疾患を持つ場合
- IgA欠損症と診断された人の一部では、のちに免疫不全が進む可能性があります
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 高熱が続いたり、せきやたんがひどくなったりする場合は、すぐに医療機関を受診してください。
- 輸血後に息苦しさや体の腫れなどの症状が出たら、直ちに119番へ連絡してください。
- 激しい腹痛や血便などがあって、ぐったりしている場合は救急外来を受診してください。
定期受診を予約すべき場合:
- 感染症を繰り返す、アレルギー症状が強い、家族にIgA欠損症の人がいるなどの場合、かかりつけ医に相談しましょう。
- 血液検査で偶発的にIgAの低さが見つかった場合は、免疫科(アレルギー科)を受診するとよいでしょう。
診断
血液検査で免疫グロブリンの量を測定し、IgAの値が年齢の基準値より大幅に低いことを確認します。IgGやIgMなどのほかの免疫グロブリンが正常であることも確認します。診断は、感染症やアレルギーなどの症状を伴う場合には専門医(免疫科・小児科・アレルギー科)が行います。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(免疫グロブリン定量)
- 血中の抗体価(過去の感染やワクチンへの反応)
- アレルギー検査(アレルゲン特異的IgEなど)
- 症状に応じて、胸部X線や副鼻腔CTなどの画像検査
診察で予想されること
診断には、繰り返し血液検査を受けたり、年齢に応じた基準値と照らし合わせたりする必要があります。診断が確定するまでに時間がかかることもありますが、検査は血液を採るだけの簡単なものがほとんどです。
治療
現在のところ、IgAそのものを増やす根本的な治療法はありません。多くの人は治療の必要がなく、症状が出た場合には、感染症やアレルギーなどへの対症療法を行います。自分に合った管理方法を見つけることが大切です。
自宅でのセルフケア
- 手洗い・うがいをこまめに行い、感染症を予防しましょう。
- 規則正しい生活と十分な睡眠で、免疫力を整えましょう。
- 流行期には人ごみを避け、必要に応じてマスクを使いましょう。
- 輸血を受ける可能性があるときは、必ず医療者に「IgA欠損症」であることを伝えましょう。
医療治療
感染症には抗菌薬、アレルギーには抗アレルギー薬や吸入薬など、その都度の症状に合わせた治療を行います。予防的に抗菌薬を使う場合もありますが、薬の種類や使い方は医師が患者ごとの状態をみて判断します。IgAを含む血液製剤や輸血は、重いアレルギー反応を起こす可能性があるため、特別な場合を除いて行われません。自分で薬を選んだり、他人の薬を使ったりせず、必ず医師や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
通常、IgA欠損症そのものに対して外科手術が必要になることはありません。ただし、手術や輸血を予定している場合は、事前に麻酔科医や担当医にIgA欠損症であることを必ず伝えましょう。
この病気と共に生きる
IgA欠損症があっても、多くの人は普段どおりの生活を送ることができます。繰り返す感染症やアレルギーなどでつらい症状がある場合も、早めに受診して適切な対処をすれば、充実した日常生活を続けられます。
生活習慣のアドバイス
- バランスのよい食事をとる
- 無理のない範囲で体を動かす習慣をつくる
- 十分な睡眠を確保する
- ストレスをため込まないように工夫する
- 感染症予防のための手洗い・うがいを習慣にする
食事と運動
特別な食事制限はありません。免疫力を保つためにも、野菜やたんぱく質を含む栄養バランスのよい食事を心がけましょう。運動は、ウォーキングなど軽く息がはずむ程度のものを毎日続けるのがおすすめです。
精神的健康と心の健康
「免疫が弱いのでは」という不安を感じる人もいますが、多くの人は健康な人と同じように過ごせます。合併症や症状に悩んで気持ちが沈む場合は、一人で抱えず、家族や医師に相談しましょう。必要に応じて、心の専門家(精神科医や公認心理師)のサポートを受けることも選択肢の一つです。
予防
生まれつきの体質であるため、IgA欠損症そのものを予防することはできません。ただし、感染症を予防し、合併症を早期に見つけることで、健康に過ごすことができます。
ワクチン
ワクチン(予防接種)は、IgA欠損症の人でも多くの場合安全で、有益です。ただし、風疹・おたふくかぜ・水ぼうそうなどの生ワクチンは、免疫状態によっては接種に注意が必要なことがあります。予防接種を受ける前には、必ず主治医と相談してください。
検診プログラム
新生児の血液スクリーニングでは通常見つかりません。多くの人は、健康診断や別の病気の血液検査で偶然見つかります。気になる症状があれば、医療機関で検査を受けられます。
合併症
治療しない場合
- 繰り返す感染症により、慢性の副鼻腔炎や気管支拡張症(きかんし拡張症)など呼吸器の障害が残ることがあります。
- アレルギー性の喘息やアトピー性皮膚炎などが悪化しやすくなります。
- 関節リウマチ、甲状腺疾患、自己免疫性肝炎などの自己免疫疾患を発症するリスクが高まります。
- 輸血時にIgA抗体による重いアレルギー反応を起こす可能性があります。
長期的な見通し
多くの人は無症状のまま生涯を過ごし、健康な人と比べて寿命に大きな差はありません。症状がある人でも、感染症の予防・治療と合併症への対応をきちんと行えば、日常生活にほとんど支障なく暮らせます。一部の人は後になって免疫不全が進行することがありますが、定期的に医師のフォローを受けることで安心して生活できます。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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