甲状腺の働きが強すぎる(甲状腺機能亢進症)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
甲状腺機能亢進症とは、甲状腺という首の前側にある臓器が、体に必要な量よりも多くの甲状腺ホルモンを作り出してしまう病気です。甲状腺ホルモンは体の代謝(エネルギーを使うはたらき)を調整するため、ホルモンが多すぎると、体のさまざまな機能が速くなりすぎます。この状態を「甲状腺機能亢進症」と呼びます。
重要な事実
- 甲状腺機能亢進症は、女性に多く見られ、男性の約5~10倍の割合で発症します。
- 最も多い原因はバセドウ病(Basedow病)で、自己免疫の異常によって甲状腺が刺激されます。
- 適切に治療すれば、多くの場合、症状は改善し普通の生活が送れます。
はい、比較的一般的な病気です。日本では人口の約0.5~1%が甲状腺機能亢進症とされています。
主に20~50歳の女性に多く見られますが、男性や高齢者、子どもでも発症することがあります。家族に甲状腺の病気を持つ人がいる場合、リスクが高まることがあります。
症状
- 高熱(38度以上)とともに、心拍数が異常に速い(安静時でも120以上)
- 意識がもうろうとする、混乱する
- 激しい動悸で横になれない
- 呼吸が苦しい
- ⚠急速に体重が減る(1か月で5kg以上)
- ⚠動悸が続き、日常生活に支障がある
- ⚠頻繁に吐き気や下痢がある
- ⚠目の症状(突出、充血、痛み)が急に悪化した
一般的な症状
- 動悸(心臓がドキドキする)
- 手のふるえ
- 汗を多くかく、暑がり
- 体重が減る(食欲はあるのに)
- 疲れやすい、イライラする
- 眠れない
- 便の回数が増える、下痢
- 首の前が腫れる(甲状腺腫)
子供の症状
- 落ち着きがなくなる、集中力の低下
- 学校の成績が落ちる
- 体の成長が早すぎる(骨年齢が進む)
- 感情の変動が激しい
高齢者の症状
- 動悸や息切れ(心房細動という不整脈を起こしやすい)
- 体重減少、筋力低下
- 無気力、うつ状態のように見えることもある
- 食欲不振
原因
主な原因
- バセドウ病:自己免疫によって甲状腺が刺激され、ホルモンが過剰に作られる。
- 甲状腺結節(しこり):一部のしこりが自律的にホルモンを作り出す(プランマー病など)。
- 甲状腺炎:炎症によって一時的にホルモンが漏れ出る(亜急性甲状腺炎など)。
- ヨウ素の過剰摂取:薬やサプリメントなどでヨウ素を多くとりすぎた場合。
リスク要因
- 女性であること
- 家族に甲状腺疾患のある人
- 別の自己免疫疾患(1型糖尿病、関節リウマチなど)を持っている
- ストレスや妊娠がきっかけになることがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上記の緊急症状(高熱、意識障害など)がある場合はすぐに119番に連絡してください。
- 急に動悸が強くなり、胸が締め付けられるような痛みがある。
定期受診を予約すべき場合:
- 動悸や手のふるえが続く
- 疲れやすく、体重が減っている
- 首の前が腫れてきた
- イライラや不眠が続く
診断
医師が問診と診察を行った後、血液検査で甲状腺ホルモンの量を調べます。必要に応じて超音波(エコー)検査や放射性ヨウ素摂取率検査などを行うこともあります。
行われる可能性のある検査
- 血液検査:TSH、FT3、FT4というホルモンの値を測定します。TSHが低く、FT3・FT4が高いと機能亢進症が疑われます。
- 甲状腺超音波(エコー)検査:首の甲状腺の大きさやしこりの有無を調べます。
- 放射性ヨウ素摂取率検査:甲状腺がどれだけヨウ素を取り込むか調べ、原因を特定します(妊娠中は避けます)。
- 抗体検査:バセドウ病の原因となるTSH受容体抗体(TRAb)を調べます。
診察で予想されること
診察では、首の触診や心拍数・血圧の測定があります。血液検査は腕から採血するだけで、数日で結果がわかります。検査の前に、服用中の薬やサプリメントがあれば伝えてください。
治療
治療の目的は、甲状腺ホルモンの量を正常に戻し、症状を改善することです。主な治療法には、薬による治療、放射性ヨウ素による治療、手術の3つがあります。どの治療法が適しているかは、年齢、症状の程度、妊娠の有無などによって医師が提案します。
自宅でのセルフケア
- 十分な休息と睡眠をとる
- カフェイン(コーヒー、緑茶、エナジードリンク)を控える
- ストレスをためないようにする(リラックス法や趣味を取り入れる)
- 定期的に体重を測り、変化を記録する
- 医師の指示なしに薬をやめない
医療治療
薬による治療では、甲状腺ホルモンの産生を抑える抗甲状腺薬が使われます。また、動悸やふるえなどの症状を和らげるためにβ遮断薬と呼ばれる薬が一時的に使われることもあります。これらの薬は医師の処方のもとで使用します。放射性ヨウ素治療は、甲状腺の一部を壊してホルモン産生を減らす方法で、内服薬として服用します。治療後は甲状腺機能低下症になることがあり、その場合は補充療法が必要です。いずれの治療も、必ず医師と相談して決めてください。
手術が検討される場合
甲状腺が大きく腫れて気管を圧迫している場合、抗甲状腺薬で効果が不十分な場合、またはがんが疑われる場合に、甲状腺の一部または全部を切除する手術が行われることがあります。
この病気と共に生きる
治療を続けながら日常生活を送ることができます。定期的に病院で血液検査を受け、甲状腺ホルモンの値を正常に保つことが大切です。症状が落ち着いていれば、仕事や家事、運動も通常通り行えます。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい生活リズムを心がける
- 過度な運動や激しいスポーツは避け、軽いウォーキングなどから始める
- アルコールは控えめにする
- 禁煙する(喫煙はバセドウ病の目の症状を悪化させることがあります)
- 暑さに弱くなるので、室温調整やこまめな水分補給を
食事と運動
食事はバランスよくとることが基本です。ヨウ素を多く含む食品(昆布、わかめなどの海藻類)は控えめにしましょう。ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料となるため、過剰摂取は症状を悪化させる可能性があります。運動は、心臓に負担がかからない範囲で行ってください。ウォーキングやヨガなどリラックスできる運動がおすすめです。
精神的健康と心の健康
甲状腺ホルモンが多すぎると、イライラや不安、気分の落ち込みが出やすくなります。これは病気の症状の一つです。治療が進むにつれて改善しますが、つらいと感じたら医師や家族に相談しましょう。必要に応じて心療内科やカウンセリングのサポートを受けることもできます。
予防
甲状腺機能亢進症の多くは自己免疫が原因であり、完全に予防する方法はありません。ただし、早期発見・早期治療が重要です。症状に気づいたら早めに受診しましょう。
ワクチン
該当なし
検診プログラム
特に定期的なスクリーニングは推奨されていませんが、家族に甲状腺疾患が多い場合や妊娠を考えている場合は、医師に相談するとよいでしょう。
合併症
治療しない場合
- 心房細動など不整脈のリスクが高まり、心不全を起こすことがある
- 骨密度が低下し、骨粗しょう症になりやすい
- 甲状腺クリーゼ(甲状腺機能亢進症の急激な悪化)という命に関わる状態になる可能性がある
- バセドウ病の場合、目の症状(眼球突出、複視)が進むことがある
長期的な見通し
適切な治療を受ければ、ほとんどの方は症状が改善し普通の生活を送ることができます。治療中は定期的な通院が必要ですが、長期的に安定することが多いです。怖がらずに、医師と一緒に治療を続けていきましょう。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月30日
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