子どもの甲状腺機能亢進症(バセドウ病)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)は、のどの前側にある甲状腺(こうじょうせん)という器官から、甲状腺ホルモンという物質が過剰(かじょう)に分泌(ぶんぴつ)される病気です。このホルモンが多すぎると、体の代謝(たいしゃ)が速くなり、さまざまな症状があらわれます。子どもの場合は、成長や学校生活に影響が出ることがあります。
重要な事実
- 甲状腺ホルモンは、体のエネルギー消費や心拍数、体温などを調節しています。
- 子どもの甲状腺機能亢進症の多くは、自己免疫(じこめんえき)という、自分の免疫が誤って甲状腺を攻撃する病気(バセドウ病)が原因です。
- 治療を続ければ、ほとんどの子どもが普通の生活を送れるようになります。
- 治療中は定期的に血液検査を受け、甲状腺ホルモンの量を適切にコントロールすることが大切です。
子どもの甲状腺機能亢進症は、それほど多くない病気です。子ども全体で0.1~0.5%程度の頻度(ひんど)で見られます。
どの年齢の子どもでも起こりえますが、特に11~15歳の女の子に多く見られます。男の子より女の子のほうが約5倍多いとされています。
症状
- 高熱(38度以上)が続く
- 心臓が非常に速く打つ(安静時でも1分間に120回以上)
- 意識がもうろうとする、呼びかけに反応しない
- 激しい動悸(どうき)や息切れがある
- 嘔吐(おうと)や下痢が続く
- ⚠体重が短期間で急に減った(例:1か月で5kg以上)
- ⚠安静にしていても心拍数が速い(1分間に100回以上)
- ⚠日常生活に支障が出るほどのイライラや不安
- ⚠目の異常(突出(とっしゅつ)や充血、まぶたの腫れ)
一般的な症状
- 体重が減る(食欲はあるのに痩せる)
- 心臓がドキドキする(頻脈(ひんみゃく))
- 汗をたくさんかく、暑がりになる
- イライラしやすい、落ち着きがない
- 手が震える(ふるえる)
- 疲れやすい、筋力が落ちる
- 便がゆるくなる、下痢(げり)がち
- 首の前が腫れる(甲状腺腫(こうじょうせんしゅ))
子供の症状
- 学校の成績が下がる、集中できない
- 感情の起伏が激しくなる、怒りっぽくなる
- 成長が通常より早くなることもある(一時的に背が伸びるが、最終的には低身長になることも)
- 眠れない、寝つきが悪い
- 食欲はあるのに体重が減る、または増えない
高齢者の症状
- この情報は子ども向けのため、高齢者の症状は省略します。
原因
主な原因
- バセドウ病(Basedow病):最も多い原因で、自分の免疫が甲状腺を攻撃し、ホルモンを過剰に作らせます。
- 甲状腺結節(しゅうけつ)や甲状腺炎(こうじょうせんえん):甲状腺の一部が異常に働いたり、炎症によってホルモンが漏れ出ることがあります。
- 薬の影響:一部の薬(例:アミオダロンなど)が原因となることもありますが、子どもではまれです。
リスク要因
- 家族に甲状腺の病気(特にバセドウ病)の人がいる
- 女の子である(特に思春期前後)
- 他の自己免疫疾患(1型糖尿病や橋本病など)を持っている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上記の緊急症状がある場合
- 体重が急激に減っている
- 意識の変化や激しい動悸がある
定期受診を予約すべき場合:
- 子どもに「なんとなく元気がない」「学校に行きたがらない」「体重が増えない」などの症状が続く場合
- 首の前が腫れているのに気づいた場合
- 家族に甲状腺の病気がいる場合
診断
医師が子どもの症状を聞き、のどや心臓の診察を行います。その後、血液検査などで甲状腺ホルモンの値を調べます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査:甲状腺刺激ホルモン(TSH)、遊離T3、遊離T4というホルモンの値を測定します。
- 甲状腺自己抗体検査:バセドウ病かどうかを調べる血液検査です。
- 甲状腺シンチグラフィー(放射性ヨウ素を取り込む検査):甲状腺の活動状態を見るために、ごく少量の放射性物質を使って撮影します。
- 超音波(エコー)検査:のどの超音波で、甲状腺の大きさやしこりの有無を調べます。
診察で予想されること
診断には通常、数日から1週間ほどかかります。血液検査を受ける際は、子どもが怖がらないように説明し、可能なら保護者も一緒に付き添いましょう。医師は結果をもとに、子どもに合った治療法を提案します。
治療
治療の目的は、甲状腺ホルモンの量を正常に戻し、症状を抑え、子どもが健やかに成長できるようにすることです。治療法は、薬による治療、放射性ヨウ素(ほうしゃせいヨウそ)療法、手術の3つに大きく分けられます。子どもの年齢や状態に合わせて医師が最適な方法を選びます。
自宅でのセルフケア
- 十分な休息と睡眠をとる。
- カフェインを含む飲み物(コーラ、エナジードリンク、コーヒーなど)は控える。カフェインは心拍数をさらに上げ、症状を悪化させることがある。
- ストレスをためないようにする。リラックスする時間を作る。
- 規則正しい生活を心がける。
医療治療
薬による治療が最初に行われることが多いです。甲状腺ホルモンの過剰な分泌を抑える薬(抗甲状腺薬)を長期間(通常1~2年以上)服用します。また、動悸や震えを和らげるための薬(β遮断薬)を一時的に使うこともあります。放射性ヨウ素療法は、10歳以上の子どもに検討されることがありますが、日本では子どもへの使用は慎重に判断されます。いずれの治療も、医師の指示を必ず守ってください。
手術が検討される場合
薬が効果を示さない、または副作用が強い場合や、甲状腺が大きく圧迫症状がある場合に、甲状腺の一部または全部を切除する手術が行われることがあります。手術後は、甲状腺ホルモン補充が生涯必要になることがあります。
この病気と共に生きる
甲状腺機能亢進症の子どもは、治療を続けながら普通の学校生活を送ることができます。定期的な通院と血液検査が必要ですが、多くの活動に参加できます。ただし、症状が強い時期には無理をせず、休むことも大切です。
生活習慣のアドバイス
- 主治医の指示に従い、定期的に血液検査を受ける。
- 感染症(かぜなど)に気をつける。病気になるとホルモン値が乱れることがある。
- 学校の先生に病気のことを伝えておくと、体調が悪いときに休ませてもらいやすくなる。
- スポーツや運動は、心拍数が上がりすぎないように注意しながら行う。医師と相談して許可を得た範囲で行う。
食事と運動
食事はバランスよく、特にヨウ素(ようそ)を多く含む食品(昆布、わかめなどの海藻類)は過剰に摂取しないように注意しましょう。ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料になるため、取りすぎると症状が悪化する可能性があります。運動は、ウォーキングやストレッチなど、負担の少ないものから始め、医師の許可を得て徐々に強度を上げてください。
精神的健康と心の健康
甲状腺機能亢進症は、イライラや不安、気分の変動を引き起こすことがあります。子ども自身もその変化に戸惑うことがあります。また、外見の変化(首の腫れや眼球突出)に悩むこともあります。そうした気持ちを家族や学校の先生、医師に話せる環境が大切です。必要に応じて、小児心理士やカウンセラーのサポートを受けることも検討しましょう。
予防
甲状腺機能亢進症を完全に予防する方法は今のところありません。しかし、早期に発見して治療を始めることで、症状を悪化させずに管理できます。家族に甲状腺の病気がある場合は、子どもの様子をよく観察し、定期健診を受けましょう。
合併症
治療しない場合
- 甲状腺クリーゼ(甲状腺機能亢進症が急激に悪化した状態):高熱、意識障害、心不全など命に関わることがあるため、緊急治療が必要。
- 成長障害:骨の成熟が早まり、最終的な身長が低くなることがある。
- 心臓への負担:長期間続くと心不全や不整脈(ふせいみゃく)のリスクが高まる。
- 骨粗しょう症(こつそしょうしょう):骨がもろくなりやすくなる。
- 眼球突出(がんきゅうとっしゅつ):まぶたが閉じにくくなり、角膜(かくまく)を傷めることがある。
長期的な見通し
適切な治療を受ければ、これらの合併症の多くは防ぐことができます。治療を続けることで、子どもの成長や発達は正常に近づき、ほとんどの子どもが将来、仕事や結婚など普通の生活を送れるようになります。治療には時間がかかることもありますが、医師と一緒に根気よく続けていきましょう。
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重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月30日
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