乳児の甲状腺機能亢進症(こうじょうせんの働きが活発すぎる状態)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
甲状腺機能亢進症は、のどぼとけの下にある甲状腺という臓器が、体に必要なホルモンを出しすぎる病気です。赤ちゃんではまれですが、治療が必要な状態です。
重要な事実
- 甲状腺ホルモンは体の新陳代謝(エネルギー消費)を調節します。
- ホルモンが多すぎると、心臓の動きが速くなったり、体重が増えにくくなります。
- 早期に発見して治療すれば、多くの赤ちゃんは健康に育ちます。
いいえ、乳児ではまれな病気です。新生児の約4000人に1人程度と言われています。
主に生後数か月までの赤ちゃんに見られます。特に、お母さんがバセドウ病(甲状腺機能亢進症の一種)などの甲状腺疾患を持っている場合に起こりやすいです。
症状
- 呼吸が苦しそう、息が荒い
- 意識がもうろうとしている、呼びかけに反応しない
- けいれん(ひきつけ)を起こしている
- ⚠高熱(38度以上)が続く
- ⚠心拍数が極端に速く(安静時でも180以上)、ぐったりしている
- ⚠激しい下痢や嘔吐で水分が取れない
一般的な症状
- 心拍数が速い(頻脈)
- 汗をかきやすい
- 機嫌が悪く、イライラしている
- 体重が増えにくい、または減る
- 食欲がとてもあるのに痩せる
- 便の回数が多い、下痢気味
子供の症状
- 動悸(心臓がドキドキする)
- 手の震え
- 集中力の低下
- 眠れない
- 学校での成績低下
高齢者の症状
- 体重減少
- 疲れやすさ
- 筋肉の弱り
- 不整脈(心臓のリズムが乱れる)
原因
主な原因
- お母さんから赤ちゃんに移った抗体(自己抗体)が原因で起こる新生児バセドウ病
- 甲状腺自体にできる結節(しこり)がホルモンを過剰に作る
- 甲状腺炎(甲状腺の炎症)による一過性のホルモン過剰
リスク要因
- お母さんがバセドウ病などの甲状腺疾患を持っている
- お母さんが妊娠中に甲状腺の治療を受けていた
- 家族に甲状腺疾患の人がいる(遺伝的な要素)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上記の緊急症状(呼吸困難、意識障害、けいれん)がある場合
- 高熱とともに心拍数が非常に速い場合
定期受診を予約すべき場合:
- 体重が増えない、または減っている
- いつもより機嫌が悪い、イライラしている
- 皮膚がいつもより熱っぽい、汗を多くかく
- 心拍数が速い(赤ちゃんの安静時の心拍数は通常120~160程度ですが、それ以上)
診断
医師が問診と診察を行い、血液検査で甲状腺ホルモン(T3、T4)とTSH(甲状腺刺激ホルモン)の値を調べます。また、必要に応じて超音波(エコー)検査で甲状腺の形や大きさを確認します。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(甲状腺ホルモン、TSH、抗体など)
- 超音波(エコー)検査
- 場合によっては甲状腺シンチグラフィ(放射性物質を使う検査)
診察で予想されること
赤ちゃんから採血するため、少し負担がかかりますが、医療スタッフが安全に行います。検査結果は数日でわかります。
治療
治療の目標は、甲状腺ホルモンの量を正常に戻し、赤ちゃんの成長や発達を助けることです。主に薬を使った治療が行われます。
自宅でのセルフケア
- 赤ちゃん自身のセルフケアは必要ありませんが、保護者が医師の指示を守り、通院や薬の投与を確実に行うことが大切です。
医療治療
抗甲状腺薬(甲状腺ホルモンの産生を抑える薬)が第一選択です。症状に応じて心拍数を抑える薬(β遮断薬)を併用することもあります。治療は数か月から数年続くことがありますが、徐々に薬を減らしていきます。薬の種類や量は医師が赤ちゃんの状態に合わせて決めます。
手術が検討される場合
薬が効かない場合や、甲状腺が大きくて圧迫症状がある場合など、ごくまれに手術(甲状腺の一部切除)が必要になることがあります。しかし、乳児ではほとんど行われません。
この病気と共に生きる
定期的に小児科または小児内分泌科を受診し、血液検査でホルモンの値を確認します。薬は指示通りに飲ませ、副作用(発疹、発熱など)がないか注意します。
生活習慣のアドバイス
- 赤ちゃんの様子をよく観察し、ぐったりしていないか、呼吸が苦しそうでないかを確認する。
- 室温や服装を調節して、汗をかきすぎないようにする。
- 体重測定を定期的に行い、成長を記録する。
食事と運動
特に制限はありませんが、赤ちゃんの食欲に応じて母乳やミルクをしっかり与えてください。もし母乳育児でお母さんが甲状腺治療薬を服用している場合は、医師に相談してください。
精神的健康と心の健康
赤ちゃんの病気に不安を感じるのは当然です。保護者自身のストレスケアも大切です。周りの人に助けを求めたり、同じ経験をする家族と情報交換すると気持ちが楽になることがあります。
予防
完全に予防することはできませんが、お母さんが甲状腺疾患を持つ場合は、妊娠前や妊娠中に甲状腺の状態をしっかり管理することで、赤ちゃんへの影響を減らせる可能性があります。
ワクチン
なし
検診プログラム
お母さんが甲状腺疾患を持つ場合、出生後に赤ちゃんの甲状腺機能を調べる検査(新生児マススクリーニングとは別に)が行われることがあります。
合併症
治療しない場合
- 心不全(心臓のポンプ機能が低下する)
- クリーゼ(甲状腺ホルモンが急激に増え、高熱や意識障害を起こす危険な状態)
- 発育障害(体重や身長の伸びが悪くなる)
- 目の突出(バセドウ病の場合)
長期的な見通し
早期に発見し、適切な治療を受ければ、ほとんどの赤ちゃんは正常に成長・発達します。治療は続きますが、多くの場合、1~3年で薬を中止できるようになります。一部の赤ちゃんでは思春期まで治療が必要なこともありますが、見通しは明るいです。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月30日
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