高齢者の甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
甲状腺機能亢進症は、首の前にある甲状腺という器官が、体に必要な甲状腺ホルモンを作りすぎてしまう病気です。ホルモンが多すぎると、体の代謝(エネルギーを使う速度)が異常に速くなり、さまざまな症状が出ます。高齢者では症状がわかりにくいこともあります。
重要な事実
- 高齢者では、動悸や体重減少などの典型的な症状が現れにくいことがあります。
- 治療をせずにいると、心臓の負担や骨粗しょう症のリスクが高まります。
- 治療は薬、放射線、手術などがあり、年齢や体の状態に合わせて選びます。
日本では、人口の約0.5~1%が甲状腺機能亢進症とされています。高齢者では女性に多くみられますが、中年に比べるとやや頻度は低くなります。
特に40~60歳の女性に多いですが、高齢者(65歳以上)でも発症します。男性では高齢になってからの発症が比較的多いです。バセドウ病(自己免疫が原因)が最も多いタイプです。
症状
- 体温が急に40度以上の高熱になる
- 脈拍が異常に速く(1分間に140回以上)、息苦しい
- 意識がもうろうとする、混乱する
- 激しい動悸や胸の痛みがある
- ⚠体重が急激に減った(1か月で5キロ以上など)
- ⚠安静にしていても脈が速い(120以上)
- ⚠めまいやふらつきが続く
- ⚠息切れがひどくなった
一般的な症状
- 動悸(心臓がドキドキする)
- 体重が減る(食欲はあるのに)
- 汗をよくかく、暑がりになる
- 手のふるえ
- 疲れやすい、イライラする
- 便の回数が増える、下痢
子供の症状
- 成長が促進される(背が伸びすぎる)
- 集中力が低下、学校の成績が落ちる
- 落ち着きがない、興奮しやすい
- 食欲が増すのに体重が減る
高齢者の症状
- 体重減少(食欲がない場合も)
- 無気力、だるさ(うつのような症状)
- 心房細動(不整脈)による動悸や息切れ
- 骨粗しょう症による骨折リスク上昇
- 眠れない、イライラが少ない(むしろおとなしい)
原因
主な原因
- バセドウ病(自己免疫の異常で甲状腺が刺激され続ける)
- 甲状腺結節(しこり)がホルモンをつくってしまう
- 甲状腺炎の一部(亜急性甲状腺炎など、炎症でホルモンが漏れ出る)
リスク要因
- 女性であること(特に30~60代)
- 家族に甲状腺の病気がある
- 他の自己免疫疾患(橋本病など)を持っている
- ストレスや感染がきっかけになることもある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に脈が速くなったり、息苦しくなった
- 意識がぼんやりする、うまく話せない
- 体温が高く(38.5度以上)かつ動悸がある
定期受診を予約すべき場合:
- 体重が減ってきた
- 動悸やふるえが続く
- 疲れやすく、イライラする
- 便の回数が増えた
診断
医師が問診と身体診察を行い、血液検査で甲状腺ホルモン(FT3、FT4)とTSHというホルモンの値を調べます。必要に応じて超音波(エコー)や放射性ヨウ素取り込み検査も行います。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(TSH、FT3、FT4)
- 甲状腺超音波(エコー)検査
- 放射性ヨウ素取り込み試験(甲状腺がどれだけ活発かをみる)
- 心電図(不整脈の有無を調べる)
診察で予想されること
診断は通常、血液検査で簡単に行えます。結果が出るまで数日かかることがあります。検査前に特別な準備は必要ありませんが、ヨウ素を含む薬(造影剤など)を最近使ったかどうか医師に伝えてください。
治療
治療の目標は、甲状腺ホルモンの量を正常に戻し、症状を抑え、合併症を防ぐことです。高齢者では、体への負担が少なく、安全な方法を優先して選びます。必ず医師の指導のもとで治療を受けましょう。
自宅でのセルフケア
- 処方された薬は指示通りに飲み、勝手にやめない
- カフェイン(コーヒー、エナジードリンク)を控える(動悸を悪化させる)
- 規則正しい生活と十分な睡眠をとる
- ストレスをためすぎない(リラックス法を取り入れる)
医療治療
主な治療法には、抗甲状腺薬(甲状腺ホルモンの産生を抑える薬)、放射性ヨウ素治療(甲状腺を少し小さくする)、手術(甲状腺の一部または全部を切除)があります。薬の効果がない場合や副作用が強い場合は、放射性ヨウ素治療や手術が検討されます。年齢や持病に合わせて医師が最適な方法を提案します。
手術が検討される場合
手術は、甲状腺が大きく腫れて気道を圧迫する場合や、薬や放射性ヨウ素治療が難しい場合に検討されます。高齢者では手術のリスクを考慮し、他の治療が優先されることが多いです。
この病気と共に生きる
甲状腺機能亢進症は、治療を続ければ多くの場合コントロール可能です。定期的に血液検査を受け、甲状腺ホルモンの値が安定しているか確認しましょう。高齢者では、心臓や骨の健康にも気を配ることが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 軽い運動(ウォーキングなど)を習慣にする(激しい運動は避ける)
- 禁煙する(喫煙は症状を悪化させる)
- アルコールは控えめにする(心臓に負担がかかる)
- 外出時は帽子や日焼け止めで紫外線対策(目が突出する場合があるため)
食事と運動
バランスの良い食事をとりましょう。特にカルシウムやビタミンDを十分に摂ることで骨粗しょう症を予防できます(牛乳、小魚、豆腐など)。ヨウ素を多く含む食品(昆布、わかめなど)は控えめにするとよいですが、医師の指示に従ってください。運動は無理のない範囲で行いましょう。
精神的健康と心の健康
ホルモンの異常でイライラしたり、不安や落ち込みを感じることがあります。治療がうまくいけば症状は改善しますが、つらいときは医師や家族に相談してください。高齢者ではうつ病と間違われることもあるので、気分の変化を伝えましょう。
予防
甲状腺機能亢進症の多くは自己免疫が原因のため、完全に予防する方法はありません。ただし、バセドウ病の場合は禁煙やストレス管理が発症リスクを下げる可能性があるといわれています。
ワクチン
予防接種とは直接関係ありませんが、インフルエンザなど感染症にかかると症状が悪化することがあるため、医師と相談の上で必要に応じてワクチン接種を検討してもよいでしょう。
検診プログラム
特に症状がなければ、一般の健康診断で甲状腺ホルモンの検査が行われることは少ないです。気になる症状があれば、医師に相談して検査を受けることが大切です。
合併症
治療しない場合
- 心房細動(心臓の不整脈)による脳梗塞(脳卒中)のリスク上昇
- 骨粗しょう症による骨折(特に脊椎や股関節)
- 甲状腺危機(甲状腺ストーム)という命に関わる状態
- 全身の衰弱や筋肉の萎縮
長期的な見通し
適切な治療を受ければ、多くの高齢者の方で症状は改善し、合併症を予防できます。治療には時間がかかることもありますが、医師と相談しながら無理せず続けることが大切です。あきらめずに前向きに取り組みましょう。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月30日
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