子どもの甲状腺機能低下症(甲状腺の働きが弱い病気)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
甲状腺機能低下症とは、甲状腺(のどぼとけの下にある蝶のような形の臓器)が、体に必要なホルモンを十分に作れなくなる病気です。このホルモンは体の代謝(エネルギーを使う働き)を調整するため、不足すると成長や発達に影響が出ることがあります。治療により、ほとんどの子どもは健康に育つことができます。
重要な事実
- 甲状腺ホルモンは体の成長や脳の発達に欠かせません。
- 新生児マススクリーニング(生まれたときに行う検査)で早期に見つかることが多いです。
- 治療は毎日薬を飲むことで、不足するホルモンを補います。
- 適切に治療すれば、普通の生活や学校生活が送れます。
それほど珍しい病気ではありません。日本では新生児約2,000~4,000人に1人程度の割合で見つかります。
赤ちゃんから思春期の子どもまで、どの年齢でも発症する可能性があります。先天性(生まれつき)のものと後天性(成長してから起こる)のものがあります。
症状
- 意識がもうろうとする、呼びかけに反応しない
- 呼吸がゆっくりになる、または苦しそう
- 体温が低く(35℃以下)、冷や汗をかく
- ⚠極度の疲れで食事や水分がほとんど取れない
- ⚠ひどい便秘やお腹の張りが続く
- ⚠いつもと違う異常な眠気や無気力
一般的な症状
- 疲れやすい、元気がない
- 体重が増えやすい(食欲がないのに太る)
- 寒がりになる
- 肌が乾燥する、髪の毛がパサつく
- 便秘がち
- 集中力が続かない、忘れっぽい
子供の症状
- 成長が遅い(身長の伸びが悪い)
- 思春期の始まりが遅れる
- 学校の成績が落ちる、授業中にぼんやりする
- 動作がゆっくりになる
- 声がかすれる、声が低くなる
高齢者の症状
- この記事は子どもの病気についてです。高齢者では症状が異なる場合があるため、別途情報をご確認ください。
原因
主な原因
- 先天性甲状腺機能低下症:生まれつき甲状腺がうまく作られていない、または正しい位置にない。
- 橋本病(自己免疫性甲状腺炎):体の免疫が甲状腺を攻撃してしまう病気。思春期以降の子どもに多い。
- 甲状腺の手術や放射線治療の後遺症(まれ)
- 薬の影響(一部のてんかん薬など)
リスク要因
- 家族に甲状腺の病気を持つ人がいる
- ダウン症候群やターナー症候群などの染色体の異常がある
- 女の子の方が橋本病になりやすい
- ヨウ素の極端な不足(日本ではまれ)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上記の緊急症状がある場合はすぐに救急車(119番)を呼んでください。
- 意識レベルの低下や呼吸の異常がある場合
定期受診を予約すべき場合:
- 成長の遅れや、学校で集中できないなど気になる症状が続く場合
- 慢性の疲れや便秘、体重増加がある場合
- 甲状腺の腫れ(のどぼとけの下がはれる)に気づいた場合
- 学校の健診などで甲状腺の異常を指摘された場合
診断
問診(症状の聞き取り)と血液検査で診断します。新生児の場合は、生後数日に行われるマススクリーニングで血液を調べます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査:甲状腺刺激ホルモン(TSH)と甲状腺ホルモン(FT4)の値を測定
- 必要に応じて甲状腺のエコー(超音波)検査やシンチグラフィー(放射性同位元素を使う検査)
- 先天性の場合、原因を調べるための画像検査や遺伝子検査を行うこともある
診察で予想されること
採血は腕やかかとから行います。子どもにはなるべく負担が少ない方法で実施します。結果が出るまで数日~1週間程度かかることがありますが、診断がつけばすぐに治療を始められます。
治療
治療の基本は、不足している甲状腺ホルモンを薬で補うことです。毎日1回、決まった時間に飲む錠剤(または細粒)を医師が処方します。一度始めたら、ほとんどの場合生涯続ける必要があります。
自宅でのセルフケア
- 毎日決まった時間に薬を飲む習慣をつける(朝起きてすぐ、など)
- 薬を飲み忘れた日は、気づいたらすぐに飲む。ただし、次の服用時間が近い場合は1回飛ばすか医師に相談
- 定期的に通院し、血液検査で薬の量が適切か確認する
- 他の薬を飲む場合は、必ず医師や薬剤師に甲状腺の病気を伝える
医療治療
医師の指導のもと、甲状腺ホルモン薬を毎日内服します。用量は年齢、体重、血液検査の結果に応じて調整されます。薬は安全で、副作用はほとんどありませんが、量が多すぎると動悸やイライラなどが現れることがあります。その場合は医師に相談してください。
手術が検討される場合
通常、甲状腺機能低下症の治療に手術は必要ありません。ただし、甲状腺がんなど別の病気が原因の場合は、手術が必要になることがあります。
この病気と共に生きる
治療を続ければ、学校生活やスポーツなど普通の活動ができます。薬を飲む習慣さえ身につければ、日常生活に大きな制限はありません。定期的な通院と血液検査を続けることが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい生活リズムを保つ(睡眠、食事、運動)
- ストレスをためすぎないようにする
- 薬を飲み忘れないための工夫(カレンダーにチェック、アラーム設定など)
- 学校の先生に病気のことを伝え、理解を得ておく
食事と運動
特別な食事制限はありませんが、バランスの良い食事を心がけましょう。ヨウ素を多く含む食品(昆布、わかめなど)を過剰に摂ると治療の効果に影響することがあるため、適量を守りましょう。運動は普通に行って大丈夫です。
精神的健康と心の健康
病気についての理解や、治療の継続が必要なことから、子どもが不安を感じることがあります。思春期になると外見や周りとの違いを気にする場合もあります。家族や学校のサポートが大切です。気分が落ち込んだり、学校に行きづらくなったりしたら、早めに医師やカウンセラーに相談しましょう。
予防
先天性のものは予防できませんが、早期発見・早期治療で健康な発育をサポートできます。後天性のものも橋本病など原因によっては完全に予防する方法はありません。定期的な健康診断で早期発見を目指しましょう。
ワクチン
この病気を予防するワクチンはありません。ただし、定められた予防接種は通常通り受けて問題ありません。
検診プログラム
日本では、すべての新生児を対象に先天性甲状腺機能低下症のマススクリーニング(血液検査)が行われています。早期発見に非常に有効です。
合併症
治療しない場合
- 成長障害(低身長)
- 知的発達の遅れ(特に乳幼児期の治療開始が遅れると重くなることがある)
- 思春期の遅れや不妊
- 体重増加や肥満
- 慢性的な疲労感やうつ状態
- 重症の場合は粘液水腫性昏睡(意識障害や低体温)という命に関わる状態になることがある
長期的な見通し
適切な治療を続ければ、ほとんどの子どもは正常な成長と発達を遂げ、普通の生活を送ることができます。治療は生涯にわたる場合が多いですが、薬は安全で効果的です。定期的な医療フォローアップにより、健康を維持することができます。希望を持って治療に取り組みましょう。
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- 日本小児内分泌学会 ↗ · 日本
- 甲状腺疾患協会 ↗ · 日本
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月29日
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