高齢者の甲状腺機能低下症について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)は、のどぼとけの下にある小さな臓器「甲状腺(こうじょうせん)」が、体に必要な甲状腺ホルモンを十分に作れなくなる病気です。このホルモンは新陳代謝(しんちんたいしゃ)を調整しており、不足すると体のいろいろな働きがゆっくりになります。
重要な事実
- 甲状腺機能低下症は高齢者によく見られる病気です。
- 女性に多く、加齢とともにリスクが高まります。
- 適切な治療を受ければ、症状は改善し普通の生活が送れます。
はい、特に60歳以上の方に比較的多く見られる病気です。日本では高齢になるほど有病率が上がります。
主に60歳以上の女性に多く見られますが、男性にも起こります。また、甲状腺の手術や放射線治療を受けたことのある方、家族に甲状腺疾患の方がいる方も発症しやすいです。
症状
- 意識がもうろうとする
- 高熱(38℃以上)が出る
- 呼吸が苦しい
- 脈が遅くなる(1分間に50回以下など)
- ⚠顔や手足がひどくむくむ
- ⚠急に動きにくくなる
- ⚠話すことが難しくなる
一般的な症状
- 疲れやすくなる
- 体重が増える(食欲は変わらないのに)
- 寒がりになる
- 肌が乾燥する
- 声がかすれる
- 便秘になる
高齢者の症状
- 記憶力や集中力の低下
- 気分が落ち込む(うつ症状)
- 動作がゆっくりになる
- 関節や筋肉の痛み
- 血圧が上がる
- コレステロール値が高くなる
原因
主な原因
- 自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)の一種「橋本病(はしもとびょう)」が最も多い原因です。体の免疫システムが誤って甲状腺を攻撃し、ホルモンを作る細胞が壊れます。
- 甲状腺の手術で甲状腺の一部または全部を摘出した後
- 甲状腺に放射線治療を行った後
- 甲状腺の炎症(亜急性甲状腺炎など)の後
リスク要因
- 女性であること
- 60歳以上であること
- 家族に甲状腺疾患の人がいる
- 首のあたりに放射線治療を受けたことがある
- 他の自己免疫疾患(1型糖尿病、関節リウマチなど)を持っている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 意識がもうろうとする
- 高熱が出て体調が急に悪化した
- 呼吸が苦しい、脈が遅い
定期受診を予約すべき場合:
- 疲れやすさや寒がりが続く
- 体重が増えたのに理由がわからない
- 記憶力の低下や気分の落ち込みがある
- 便秘や皮膚の乾燥が改善しない
診断
血液検査で甲状腺ホルモン(FT4)と、脳から甲状腺を指示するホルモン(TSH)の量を調べます。基準値より値が低い・高いかを確認します。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(TSH、FT4の測定)
- 甲状腺エコー(超音波)検査(必要に応じて)
- 抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(抗TPO抗体)の検査
診察で予想されること
検査は簡単で、採血をするだけです。結果は通常数日でわかります。医師が結果を説明し、必要に応じて治療を始めます。検査の前後に特別な準備は必要ありません。
治療
甲状腺機能低下症の治療は、不足した甲状腺ホルモンを薬で補うことが基本です。薬は毎日1回、同じ時間に飲むと効果が安定します。治療を始めると数週間から数ヶ月で症状が改善します。一度飲み始めたら、医師の指示なしに中止しないでください。
自宅でのセルフケア
- 毎日決められた時間に薬を飲む(朝起きてすぐなど)
- 他の薬やサプリメントと飲み合わせを確認する(医師や薬剤師に相談)
- 定期的に医師の診察と血液検査を受ける
- 症状の変化(良くなった・悪くなった)をメモしておく
医療治療
主な治療は甲状腺ホルモン補充療法です。医師が患者さんの体重や症状に合わせて適切な量を処方します。治療開始後は定期的に血液検査を行い、量を調整します。薬は長期にわたって服用する必要がありますが、副作用はほとんどなく安全に使えます。
手術が検討される場合
甲状腺機能低下症そのものに対して手術は必要ありません。ただし、原因となった病気(甲状腺がんや大きな甲状腺腫など)に対して手術が行われることがあります。
この病気と共に生きる
毎日の薬の服用が基本です。飲み忘れを防ぐために、朝の習慣に組み込むと良いでしょう。また、定期的に医師に診てもらい、血液検査でホルモンの値を確認することが大切です。症状が落ち着いていても、自己判断で薬をやめないでください。
生活習慣のアドバイス
- バランスの良い食事を心がける(特にヨウ素(ようそ)の摂取に注意:昆布などは食べ過ぎない)
- 適度な運動(散歩やストレッチなど)を日課にする
- ストレスをためないようにする(趣味や人との交流を大切に)
- 十分な睡眠をとる
食事と運動
特別な食事制限はありませんが、甲状腺ホルモンの材料になるヨウ素を多く含む食品(昆布、わかめなどの海藻類)は適量にしましょう。緑黄色野菜やたんぱく質を意識してとると良いです。運動は無理のない範囲で続けることが大切です。ウォーキングや水中運動など、関節に負担のかからない運動がおすすめです。
精神的健康と心の健康
甲状腺機能低下症は気分の落ち込みや意欲の低下を引き起こすことがあります。治療がうまくいけば改善しますが、もし気分が続くようであれば医師に相談しましょう。認知機能の低下(もの忘れなど)も治療で良くなることが多いです。
予防
甲状腺機能低下症のほとんどは予防できませんが、早期に発見して治療を始めることで悪化を防ぐことができます。特に高齢の方は、年に一度の健康診断で甲状腺のチェックを受けることをおすすめします。
検診プログラム
症状がない場合でも、特にリスクの高い方(甲状腺疾患の家族歴がある方、他の自己免疫疾患を持っている方)は、医師に相談して血液検査を受けることができます。
合併症
治療しない場合
- 心臓の病気(心不全、不整脈)のリスクが高まる
- 認知症に似た症状(記憶障害、判断力の低下)が現れる
- コレステロール値が上がり、動脈硬化が進む
- うつ病のリスクが高まる
- まれに「粘液水腫性昏睡(ねんえきすいしゅせいこんすい)」という命に関わる状態になる(特に高齢者や寒冷環境で)
長期的な見通し
心配しすぎる必要はありません。甲状腺機能低下症は適切に治療すれば、ほとんどの方が健康な人と変わらない生活を送ることができます。治療を続けることで症状は改善し、合併症のリスクも大きく減らせます。医師と一緒に長く付き合っていく病気だと考えて、焦らず治療を続けましょう。
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重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月29日
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