妊娠中の甲状腺機能低下症(甲状腺が十分に働かない状態)- 知っておきたいこと
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
甲状腺機能低下症(甲状腺が十分に働かない状態)は、首の前にある甲状腺という小さな臓器から出るホルモンが不足する病気です。このホルモンは体のエネルギーを調整する重要な役割をしています。妊娠中は赤ちゃんの脳や神経の発達にも必要なので、しっかり管理することが大切です。
重要な事実
- 妊娠中は甲状腺ホルモンの必要量が増えるため、普段よりも薬の調整が必要になることがあります。
- 適切に治療すれば、ほとんどの方は健康な妊娠・出産が可能です。
- 甲状腺の数値は妊娠中は定期的に血液検査で確認します。
- 治療は甲状腺ホルモン薬(薬の名前は医師が決めます)を服用します。自己判断で量を変えてはいけません。
妊娠中の甲状腺機能低下症は100人に2~3人程度に見られるといわれており、決して珍しい状態ではありません。
もともと甲状腺機能低下症がある方(橋本病など)や、甲状腺の手術や放射線治療を受けたことのある方に多く見られます。また、妊娠中に初めて発見されることもあります。
症状
- 意識がもうろうとする、呼びかけに反応しにくい
- 呼吸が苦しい、胸の痛みがある
- 激しい頭痛や視野の異常がある
- 自分ではとてもつらくて動けないと感じる場合
- ⚠極度の倦怠感で起き上がれない
- ⚠むくみが急に強くなった(顔や手足)
- ⚠吐き気や嘔吐がひどくて薬が飲めない
- ⚠体重増加が急激すぎる
一般的な症状
- 疲れやすい、だるい
- 体重が増えやすい(妊娠による増加以上)
- 冷えやすい、寒がり
- 皮膚や髪の毛が乾燥する
- 集中力の低下、物忘れ
- 気分が落ち込みやすい
子供の症状
- 赤ちゃんに直接症状が出ることはまれですが、治療が不十分だと神経発達に影響する可能性があります。
高齢者の症状
- 年齢が高い妊婦さんでは、症状が強く出ることがありますが、やはり適切な治療で管理します。
原因
主な原因
- 橋本病(自己免疫性甲状腺炎):免疫の異常で甲状腺が壊され、ホルモンが出にくくなる。
- 甲状腺の手術や放射線治療の後遺症。
- 薬の影響(一部の抗不整脈薬など)
- 先天性の甲状腺機能低下症
リスク要因
- 甲状腺疾患の家族歴がある
- 過去に甲状腺機能低下症と診断されたことがある
- 甲状腺の手術や放射線治療を受けたことがある
- 他の自己免疫疾患(1型糖尿病、セリアック病など)がある
- ヨウ素が不足している(日本ではまれですが、妊娠中は注意が必要)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上記の緊急症状がある場合はすぐに救急車(119番)を呼んでください。
- 妊娠中に甲状腺機能低下症と診断されたが、今まで通院していない方
定期受診を予約すべき場合:
- 妊娠がわかったら、すぐに産科医と甲状腺の専門医に相談しましょう。
- 定期的な血液検査で甲状腺ホルモンの値をチェックします(通常4~6週ごと)。
- 薬の量が適切かどうかは医師が判断します。自分で変えないでください。
- かかりつけの医師に妊娠を伝え、甲状腺治療について相談してください。
診断
血液検査で甲状腺刺激ホルモン(TSH)と甲状腺ホルモン(FT4)の値を測定します。妊娠中は基準値が通常と異なるため、妊娠週数に応じた評価が必要です。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(TSH、FT4、場合によっては甲状腺抗体)
- 妊娠中の超音波検査(甲状腺の状態を確認するため)
診察で予想されること
採血の結果は数日でわかります。医師がその結果をもとに治療の必要性や薬の量を決めます。妊娠中は数週間おきに採血を行い、最適な状態を維持します。
治療
治療の中心は甲状腺ホルモンを補充する薬(いわゆる甲状腺ホルモン薬)を毎日服用することです。妊娠中は胎盤を通して赤ちゃんにも必要なホルモンが届くよう、薬の量を調整します。自己判断で中止したり増減したりせず、必ず医師の指示に従ってください。
自宅でのセルフケア
- 規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠をとる。
- ストレスをためすぎないようにする(軽い散歩やヨガなどリラックス法を取り入れる)。
- 妊婦健診を必ず受ける。
- 薬を飲み忘れた場合は、次の服用時に2回分を一緒に飲まない。忘れた分は飛ばして通常のスケジュールに戻す。
医療治療
甲状腺ホルモン薬(一般にレボサイロキシンなどと呼ばれるもの)を医師の処方に従って服用します。妊娠中は通常より多い量が必要になることが多く、妊娠初期から中期にかけて特に調整が重要です。薬の名前や用量は医師が決め、血液検査の結果をもとに増減します。決して自己判断で変更しないでください。
手術が検討される場合
通常、妊娠中に甲状腺の手術が必要になることはほとんどありません。ごくまれに甲状腺がんなどでやむを得ない場合を除き、手術は出産後に行います。
この病気と共に生きる
毎日の薬の服用が基本です。朝食の30分前など、決まった時間に水で飲むと吸収が安定します。妊娠中は体調の変化に気をつけ、疲れや寒気が強いときは無理をせず休みましょう。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠をしっかりとる(7~8時間を目標に)。
- 適度な運動(医師に相談の上、ウォーキングやマタニティヨガなど)。
- 禁煙・禁酒を徹底する。
- ストレス管理(趣味や家族との時間を大切に)。
食事と運動
バランスのよい食事を心がけましょう。特にヨウ素(昆布やわかめなどの海藻類)は取りすぎも不足も問題です。妊娠中はヨウ素を多く含むサプリメントを避け、普通の食事で十分です。運動は医師の許可を得て、軽いものから始めてください。
精神的健康と心の健康
ホルモンのバランスが崩れると気分の落ち込みや不安を感じやすくなることがあります。妊娠中は特に感情が揺れ動きやすいですが、あまり一人で抱え込まずに、パートナーや医師に相談しましょう。
予防
甲状腺機能低下症そのものを予防することは難しいですが、妊娠中に適切に治療すれば赤ちゃんへの影響を防げます。妊娠を計画している方は、事前に甲状腺の状態をチェックしてもらいましょう。
検診プログラム
妊娠初期の血液検査で甲状腺機能を調べることが推奨されています(特にリスクがある方)。自治体の妊婦健診の項目に含まれている場合があります。
合併症
治療しない場合
- 赤ちゃんの神経発達に影響が出る可能性(知能や発達の遅れなど)
- 流産や早産のリスクが高まる
- 妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)のリスク上昇
- 赤ちゃんの出生体重が低くなる可能性
長期的な見通し
きちんと治療を受ければ、ほとんどの場合、赤ちゃんにもお母さんにも大きな問題はありません。妊娠中はこまめに血液検査を行い、薬の量を調整することで安全に過ごせます。出産後も甲状腺の状態は変化するため、引き続きフォローが必要ですが、多くの方は健康な生活を送っています。
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- 日本甲状腺学会 · 日本
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月29日
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