乳幼児の1型糖尿病
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
1型糖尿病は、すい臓でインスリンというホルモンが十分に作られなくなる病気です。インスリンは、食べ物から得た糖を体の細胞に取り込んでエネルギーにするために必要です。赤ちゃんや小さな子どもに発症すると、一生インスリンを補う治療が必要になります。
重要な事実
- 1型糖尿病は、ウイルス感染などがきっかけで自分の免疫がすい臓のインスリンを作る細胞を攻撃してしまうことで起こります。
- 生活習慣や食事のせいで起こるわけではありません。
- 治療にはインスリン注射やインスリンポンプが欠かせません。
- 適切に管理すれば、赤ちゃんも元気に成長できます。
乳幼児の1型糖尿病は、全体的にはまれな病気です。日本では年間に10万人あたり数人程度の発症とされています。
生後6か月から2歳くらいまでの赤ちゃんや小さな子どもに見られることがあります。遺伝的な要素や環境要因が関係していると考えられています。
症状
- 意識がもうろうとしている、呼びかけに反応しない
- 呼吸が速くて深い(口から甘いにおいがする)
- 激しい嘔吐が続く
- けいれんを起こしている
- ⚠血しょう(糖)が非常に高い(家庭での測定値が300 mg/dL以上)
- ⚠尿の中にケトン体が陽性(家庭で検査できる場合)
- ⚠発熱や下痢など感染症を伴い、食事や水分が取れない
一般的な症状
- のどが異常に渇く(たくさん水を飲む)
- おしっこの量が増える(おむつがすぐにいっぱいになる)
- 体重が減る、あるいは増えない
- 元気がなく、ぐったりする
- おむつかぶれが治りにくい
子供の症状
- 夜中に何度もおしっこで起きる(おねしょが急に増える)
- 疲れやすく、遊びたがらない
- 甘いものを欲しがるが、食べても体重が増えない
高齢者の症状
- 高齢者では症状が出にくいことがありますが、この病気は主に子どもに発症するため、高齢者向けの症状はここでは省略します。
原因
主な原因
- 1型糖尿病は、自己免疫という仕組みで起こります。体を守るべき免疫が、すい臓のインスリンを作る細胞(ランゲルハンス島β細胞)を誤って攻撃し、破壊してしまいます。
- そのきっかけは、風邪や胃腸炎などのウイルス感染と考えられていますが、はっきりした原因はまだ解明されていません。
リスク要因
- 家族(両親やきょうだい)に1型糖尿病の人がいる場合、発症リスクが高まります。
- 特定の遺伝子(HLA型)を持っていると、発症しやすくなることが知られています。
- 早期の母乳育児やビタミンD摂取がリスクを下げる可能性があるという研究もありますが、確実な予防法はありません。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上の「緊急」の症状が見られたら、すぐに119番で救急車を呼んでください。
- 血糖値が極端に高い、または低い症状(冷や汗、震え、ぐったり)がある場合もすぐに受診してください。
定期受診を予約すべき場合:
- 体重が増えない、元気がない、おしっこの回数が多いなどの症状が続く場合は、かかりつけの小児科医に相談しましょう。
- 兄弟や親に1型糖尿病の人がいる場合は、定期的な健康診断を受けることを検討してください。
診断
問診と血液検査で診断されます。赤ちゃんの血液中の血糖値(ブドウ糖の濃度)や、HbA1c(過去1~2か月の平均血糖値)を測ります。また、1型糖尿病に特徴的な自己抗体(膵島関連自己抗体)の有無を調べます。
行われる可能性のある検査
- 血糖値測定:空腹時血糖値が126 mg/dL以上、または随時血糖値が200 mg/dL以上で糖尿病が疑われます。
- HbA1c:6.5%以上で糖尿病の可能性が高いです。
- 自己抗体検査(GAD抗体、IA-2抗体など):1型糖尿病の診断を確実にするために行います。
診察で予想されること
診断がついたら、多くの場合はすぐに入院が必要です。赤ちゃんの状態を安定させ、インスリン治療を開始します。医師や看護師、栄養士がチームでサポートします。保護者は治療の方法や血糖値の測り方、インスリンの打ち方を学びます。
治療
1型糖尿病の治療は、不足しているインスリンを体に補うことです。生涯にわたってインスリン注射またはインスリンポンプを使い、血糖値を目標の範囲に保つようにします。食事や運動と組み合わせて管理します。
自宅でのセルフケア
- 毎日、決まった時間に血糖値を測定し、記録する習慣をつけましょう。
- インスリン注射の量やタイミングは医師の指示に従い、自己判断で増やしたり減らしたりしないでください。
- 赤ちゃんの様子をよく観察し、いつもと違うサイン(不機嫌、発汗、嘔吐など)を見逃さないようにしましょう。
- 低血糖(血糖値が下がりすぎること)に注意し、ブドウ糖や砂糖を含む飲み物を常備しておくと安心です。
医療治療
医学的な治療の中心はインスリン療法です。超速効型、速効型、中間型、持効型など、作用時間の異なるインスリンを組み合わせて使います。近年では、インスリンポンプによる持続皮下インスリン注入(CSII)や、血糖値を自動で測りながらインスリンを調整するハイブリッドクローズドループシステムもあります。どの方法が赤ちゃんに合うかは、医師と相談しながら決めます。
手術が検討される場合
1型糖尿病そのものを手術で治すことはできません。ただし、インスリンポンプを皮下に留置するための小さな処置が行われることがあります。
この病気と共に生きる
赤ちゃんの1型糖尿病の管理は、24時間体制のケアが必要です。血糖値は1日に数回測定し、食事のたびにインスリンを投与します。低血糖と高血糖の両方に注意しながら、赤ちゃんの成長や発達を支えます。
生活習慣のアドバイス
- 食事やおやつの時間をできるだけ一定にし、炭水化物の量を把握しておきます。
- 予防接種や感染症にかかったときは、血糖値が乱れやすくなるので、医師の指示に従いましょう。
- 外出時には、血糖測定器、インスリン、ブドウ糖、おやつなどを忘れずに持っていきます。
食事と運動
基本的な食事は、ほかの赤ちゃんと同じで大丈夫です。炭水化物の量を計算してインスリン量を調節します。成長に合わせて適切な栄養を取ることが大切です。母乳やミルクも引き続き与えて大丈夫ですが、糖質量を考慮する必要があります。運動や遊びは積極的に行い、その分のエネルギー消費に応じてインスリン量を調整します。
精神的健康と心の健康
赤ちゃん自身はまだ理解できませんが、保護者にとっては大きな負担です。常に血糖値を気にしなければならず、疲れや不安を感じることがあるでしょう。そんなときは、一人で抱え込まずに、医療チームや家族、同じ経験を持つ保護者に相談してください。
予防
現在のところ、1型糖尿病を確実に予防する方法はありません。遺伝的にリスクの高い赤ちゃんを対象にした研究が進められていますが、一般に推奨できる方法はまだありません。
合併症
治療しない場合
- 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA):インスリン不足で血液が酸性になり、命に関わることがあります。
- 低血糖:インスリンや食事のバランスが崩れると、血糖値が下がりすぎてけいれんや意識障害を起こします。
- 長期的な合併症(10~20年後):目の網膜症、腎症(腎臓の障害)、神経障害(手足のしびれ)など。
長期的な見通し
1型糖尿病の赤ちゃんでも、適切な治療と管理を続ければ、健康に成長し、普通の生活を送ることができます。インスリンや血糖測定の技術は進歩しており、合併症のリスクは以前よりずっと低くなっています。希望を持って前向きに治療に取り組みましょう。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月30日
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