1型糖尿病とともに生きる – 患者さん向けガイド
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
1型糖尿病は、体の免疫(病気から身を守る仕組み)が誤ってすい臓のインスリンをつくる細胞を攻撃してしまう病気です。インスリンは血液中の糖をエネルギーとして使うために必要なホルモンですが、1型糖尿病ではインスリンがほとんどまたはまったく作られなくなります。そのため、生きるために注射などで外部からインスリンを補う必要があります。このタイプの糖尿病は、生活習慣とは関係なく発症します。
重要な事実
- 1型糖尿病は主に子どもや若い人に発症しますが、どの年齢でも起こり得ます。
- インスリン治療が必須で、自己注射やインスリンポンプを使います。
- 血糖値をこまめにチェックしながら生活することが大切です。
- 適切に管理すれば、元気に学校や仕事を続けることができます。
日本では、糖尿病患者全体の約5~10%が1型糖尿病とされています。全体の人数は少ないですが、確実に存在する病気です。厚生労働省も医療費助成の対象とするなど、支援を行っています。
主に小児期や思春期に発症しますが、成人になってから発症する「成人発症1型糖尿病」もあります。どの年齢、性別、人種でも発症する可能性があります。
症状
- 意識がもうろうとする、または意識を失う
- 呼吸が速くて深い(ケトアシドーシスの兆候)
- 吐き気やおう吐が続く
- 強い腹痛がある
- 血糖値が非常に高く(300mg/dL以上)、家庭で対処できない
- ⚠低血糖症状(冷や汗、震え、動悸、頭痛)が改善しない
- ⚠発熱や感染症の兆候がある
- ⚠血糖値測定器の数値が異常に高いまたは低い
一般的な症状
- 異常に喉が渇く(多飲)
- 頻繁にトイレに行く(多尿)
- 食べても体重が減る
- 疲れやすい、だるい
- かすみ目
- 傷が治りにくい
子供の症状
- おねしょが急に増える(夜尿)
- 元気がなくなる、ぐったりする
- 機嫌が悪くなることが多い
- 幼稚園や学校で集中できない
高齢者の症状
- 症状がゆっくり現れることがある
- だるさや体重減少を年齢のせいと思いやすい
- 感染症(皮膚や尿路)を繰り返す
原因
主な原因
- 1型糖尿病は自己免疫疾患の一種で、体の免疫システムが誤ってすい臓のインスリンを作る細胞(β細胞)を攻撃・破壊してしまうことが原因です。
- はっきりした原因はまだ完全には解明されていませんが、ウイルス感染などの環境要因がきっかけになる可能性があります。
リスク要因
- 家族に1型糖尿病の人がいるとリスクが少し高まりますが、遺伝だけでは決まりません。
- 特定の遺伝子(HLA型)を持っている人が、何らかの環境要因にさらされると発症しやすくなると考えられています。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上記の緊急症状(意識障害、激しい腹痛など)が現れたらすぐに救急車(119番)を呼んでください。
- 低血糖症状が続き、自分で対処できない場合もすぐに医療機関を受診してください。
定期受診を予約すべき場合:
- のどが渇いて飲水量が増えた、体重が減ったなどの症状が続く場合。
- 健康診断で血糖値が高いと言われた場合。
- すでに診断されている人は、定期的に糖尿病専門医の診察と血糖コントロールの確認を受けてください。
診断
医師が症状や病歴を聞き、血液検査と尿検査を行います。特に、血糖値の高さや、自己抗体(免疫が誤って攻撃する物質)の有無を調べることが重要です。
行われる可能性のある検査
- 空腹時血糖値検査:8時間以上何も食べない状態で血糖値を測ります。
- HbA1c検査:過去1~2か月の平均的な血糖値を反映します。
- 抗GAD抗体検査:1型糖尿病に特徴的な自己抗体を調べます。
- 尿中ケトン体検査:エネルギー不足で脂肪が分解されているかどうかを確認します。
診察で予想されること
診断は通常、採血と採尿で行われ、結果は数日から1週間ほどでわかります。もし1型糖尿病と診断されたら、すぐにインスリン治療を始める必要があります。栄養士による食事指導や、血糖自己測定のトレーニングも行います。
治療
1型糖尿病の治療の中心はインスリン補充です。インスリンは注射またはインスリンポンプで体内に補充します。治療は一生続きますが、血糖値を目標範囲に保つことで、合併症を防ぎながら元気に生活できます。治療計画は医師と一緒に決めていきます。
自宅でのセルフケア
- 血糖自己測定:1日に数回、指先から少量の血液をとって血糖値を測ります。
- 食事管理:炭水化物の量を意識し、栄養バランスのとれた食事を規則正しくとります。
- 運動:運動は血糖値を下げる効果がありますが、低血糖に注意しながら行います。
- 低血糖への備え:常にブドウ糖や砂糖を含む飲み物を携帯し、低血糖症状が出たらすぐに補給します。
医療治療
インスリン治療には、超速効型、速効型、中間型、持効型などいくつかの種類があり、患者さんの生活スタイルに合わせて組み合わせます。インスリンポンプは持続的にインスリンを皮下に注入する装置です。また、血糖値の変動をリアルタイムで確認できる持続血糖モニター(CGM)も使われます。これらの治療法は医師の指導のもとで行われ、自己判断で変更してはいけません。
手術が検討される場合
1型糖尿病は外科手術で治る病気ではありません。ただし、合併症(例えば目の手術や腎臓の治療など)で手術が必要になることがあります。その場合も、糖尿病のコントロールを安定させた上で手術を行います。
この病気と共に生きる
日常生活では、血糖値の変動に常に注意を払う必要があります。食事や運動、ストレス、体調によって血糖値は変化します。最初は戸惑うかもしれませんが、多くの患者さんが学校や仕事、趣味をバランスよく続けています。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい生活リズムを心がける(食事、睡眠、運動)
- 外出時は常に血糖測定器とブドウ糖やお菓子を持ち歩く
- 運転前には必ず血糖値を確認する
- 旅行やイベントの際は事前に医師と相談し、インスリン量を調整する
食事と運動
食事は、炭水化物の量を決めて(カーボカウント)インスリン量を調整する方法がよく使われます。栄養士と相談して自分に合った献立を作りましょう。運動は血糖値を下げるだけでなく、心身の健康にも良い影響を与えます。ただし、運動前後の血糖値の変化をよく観察し、低血糖を防ぐために必要に応じて補食をとってください。
精神的健康と心の健康
1型糖尿病の管理は気を遣うことが多く、ストレスや不安、時には燃え尽き感を感じることがあります。特に思春期や若い世代では、周りと違うことへのストレスも生じやすいです。そうした感情を持つことは自然なことです。一人で抱え込まず、医療者や家族、友人に話してみましょう。
予防
今のところ、1型糖尿病を確実に予防する方法はありません。しかし、血糖値を良好に保つことで合併症を予防し、健康な生活を長く続けることができます。
ワクチン
該当なし(1型糖尿病を予防するワクチンは現在ありません)
検診プログラム
家族に1型糖尿病の人がいる場合は、抗体検査を受けることで発症リスクを知ることができる場合があります。ただし、日常的なスクリーニングは推奨されていません。気になる場合は医師に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 糖尿病性ケトアシドーシス(意識障害や昏睡に至る危険な状態)
- 網膜症(目の障害、失明のリスク)
- 腎症(腎臓の機能低下、透析が必要になることも)
- 神経障害(手足のしびれや痛み)
- 動脈硬化(心筋梗塞や脳卒中のリスク上昇)
- 足の感染症・壊疽(壊疽=組織が壊死すること)
長期的な見通し
1型糖尿病の治療と管理は進歩しており、多くの患者さんが合併症なく、充実した社会生活を送っています。血糖コントロールをしっかり行い、定期的に医療機関でチェックを受けることで、健康で長生きできる可能性は十分にあります。希望を持って、前向きに取り組んでください。
サポートを探す
地域の団体
- 日本糖尿病学会 · 日本
- 日本糖尿病協会 · 日本
相談窓口
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月30日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。