子どものビタミンB12欠乏症について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
ビタミンB12は、体の中ではたらくために欠かせない栄養素です。赤血球を作る、神経を正常に保つ、DNA(体の設計図)を作るなどの重要な役割があります。ビタミンB12が足りなくなると、貧血(血が薄くなること)や神経の症状が現れることがあります。子どもでは、成長や発達に影響することがあるため、早めに気づくことが大切です。
重要な事実
- ビタミンB12は主に肉、魚、卵、乳製品などの動物性食品に含まれています。
- ビタミンB12が不足すると、赤血球がうまく作られず貧血になることがあります。
- 小児では神経の発達や成長に影響が出る可能性があります。
- 治療はビタミンB12の補充が中心で、多くの場合、改善が見られます。
小児におけるビタミンB12欠乏症は、日本ではあまり一般的ではありませんが、完全な菜食(ビーガン)の食事をしている子どもや、吸収障害がある子どもには起こることがあります。
以下のような子どもに多く見られます:完全菜食(ビーガン)または厳格なベジタリアンの家庭で育つ子ども、胃や腸の病気がある子ども、胃の手術を受けた子ども、そしてまれに先天性の吸収障害がある子ども。
症状
- 意識を失った
- 呼吸が苦しい
- けいれんが止まらない
- 急に手足が動かせなくなった
- ⚠ひどい疲れで動けない
- ⚠ひどい頭痛やめまいが続く
- ⚠歩き方がふらふらする(新しい症状)
- ⚠どもる、言葉が出にくい
一般的な症状
- 疲れやすい
- 顔色が悪い(青白い)
- 息切れや動悸(心臓がドキドキする)
- 手足のしびれやピリピリ感
- 記憶力や集中力の低下
子供の症状
- 成長の遅れ(体重や身長が増えにくい)
- 発達の遅れ(歩く、話すなどの節目が遅い)
- いらいらしたり、泣きやすくなる
- 筋力が弱い
- 食欲がない
- 舌が赤くてつるつるになる(舌炎)
原因
主な原因
- 食事で十分なビタミンB12を摂っていない(特に完全菜食や栄養の偏り)
- 胃や腸でビタミンB12を吸収できない(胃の病気、手術後、腸の炎症など)
- 体内でビタミンB12をうまく使えない(まれな遺伝性の病気)
リスク要因
- 完全菜食(ビーガン)または厳格なベジタリアンの食事
- 母親がビタミンB12不足のまま母乳で育てている乳児
- 胃や小腸の手術を受けたことがある
- クローン病やセリアック病などの消化器疾患
- 胃酸を抑える薬を長期間使っている
- 寄生虫(サナダムシなど)に感染している
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に元気がなくなり、ぐったりしている
- けいれんが起きた
- 意識がもうろうとしている
定期受診を予約すべき場合:
- 疲れやすい、顔色が悪い、成長や発達が気になる
- 手足のしびれや違和感がある
- 食事に偏りがある(特に菜食)で健康診断を希望する
診断
医師が問診(症状や食事の内容を聞く)と身体診察を行い、血液検査でビタミンB12の値や貧血の有無などを調べます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査:ビタミンB12濃度、ホモシステイン、メチルマロン酸(MMA)
- 血算(血液中の赤血球やヘモグロビンの量)
- 必要に応じて胃や腸の検査(内視鏡など)
診察で予想されること
問診では、お子さんの症状や食事の内容、家族の病歴などを詳しく聞かれます。採血は腕や指先から行います。結果は数日でわかることが多いです。痛みや負担は最小限で、安心して受けられます。
治療
治療の中心は不足しているビタミンB12を補うことです。原因によって、飲み薬か注射(筋肉注射)が選ばれます。原因となっている病気がある場合は、そちらの治療も併せて行います。
自宅でのセルフケア
- 医師の指示に従って、ビタミンB12を多く含む食品(肉、魚、卵、乳製品)を食事に取り入れる
- 完全菜食の場合は、栄養士や医師に相談してビタミンB12強化食品やサプリメントを検討する
- 治療中は定期的に血液検査を受け、ビタミンB12の値が正常に戻っているか確認する
医療治療
医師は不足の程度や原因に応じて、ビタミンB12の補充方法を決めます。軽度の場合は経口薬(飲み薬)が使われることがありますが、重度の場合や吸収障害がある場合は、注射で補充することが一般的です。治療は通常数週間から数ヶ月続き、その後は維持量を服用または注射することがあります。
手術が検討される場合
ビタミンB12欠乏症自体に対して手術は行いません。ただし、原因となる胃や腸の病気(例えば胃の一部切除後など)がある場合は、その病気の治療として手術が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
治療を続けながら、普段の生活で気をつけることはあまりありません。血液検査でビタミンB12の値が正常になった後も、原因に応じて継続的な補充が必要な場合があります。医師の指示を守り、定期的な通院を続けましょう。
生活習慣のアドバイス
- バランスの良い食事を心がける(特に動物性食品を適度に含む)
- 完全菜食を続ける場合は、必ず医師や栄養士の指導を受ける
- お子さんの様子(元気、食欲、発達)を日記などで記録すると、変化に気づきやすい
- 定期的な健康診断や血液検査を忘れずに受ける
食事と運動
食事は、ビタミンB12を含む食品(牛肉、鶏肉、魚、卵、牛乳、ヨーグルトなど)を毎日少しずつ取り入れましょう。完全菜食の場合は、ビタミンB12強化食品(一部の豆乳やシリアル)やサプリメントを医師と相談して使います。適度な運動は、全身の血行を良くし、健康維持に役立ちます。
精神的健康と心の健康
ビタミンB12欠乏症は、イライラや気分の落ち込み、集中力の低下など、子どもの心の状態にも影響することがあります。治療が進むにつれて、これらの症状も改善することが多いです。もし気分の変調が続くようであれば、医師やスクールカウンセラーなどに相談してください。悩みを一人で抱え込まずに、周りの大人に話すことが大切です。
予防
多くの場合、予防が可能です。特に、完全菜食や偏った食事をしている家庭では、ビタミンB12を意識的に摂取することで予防できます。妊娠中や授乳中の母親がビタミンB12不足にならないようにすることも、乳児の予防につながります。
検診プログラム
症状がない場合は、通常の健康診断でビタミンB12の検査が行われることは多くありません。ただし、完全菜食の家庭や、胃腸の病気がある子どもでは、医師と相談して定期的に検査を受けることを検討しても良いでしょう。厚生労働省の乳幼児健診では、貧血のスクリーニングが行われることがあります。
合併症
治療しない場合
- 重度の貧血による体力低下や感染症リスクの上昇
- 神経症状の悪化(歩行障害、感覚障害、けいれん)
- 成長や発達の遅れが戻らなくなる可能性
- 脳や脊髄に永続的な損傷が残ることがある
長期的な見通し
ビタミンB12欠乏症は、適切な治療を行えば多くの子どもで完全に回復します。早期に診断され、補充療法を始めれば、神経症状や発達の遅れも改善することがほとんどです。長期的な経過は良好であり、将来の健康や生活に大きな影響を残すことはまれです。希望を持って治療に取り組んでください。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月29日
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