ウィルソン病について知ろう―体の中の銅がたまりすぎてしまう、遺伝の病気
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
ウィルソン病は、体に必要なミネラルのひとつである「銅」を、肝臓がうまく体外に捨てられないために、銅が肝臓や脳、目などにたまりすぎて障害を起こす病気です。生まれつきの体質で、治療を続ければ多くの人が普通に近い生活を送れます。
重要な事実
- 銅は少量なら体に必要ですが、たまりすぎると肝臓や脳にダメージを与えます。
- 親から受けつぐ遺伝子の変化が原因で、本人の努力や生活習慣が原因ではありません。
- 早く見つけて治療を始めれば、重症化を防ぎ、普通の生活を続けられる可能性が高い病気です。
ウィルソン病はとてもまれな病気です。日本では指定難病として扱われることがあり、一般の健康診断で全員が調べられるわけではありません。
男女ともに発症します。多くは子どもから30代までに症状が出ますが、40代以降に診断される人もいます。家族にウィルソン病の人がいる場合、特に注意が必要です。
症状
- 急に意識がもうろうとする、呼びかけに反応しない
- 血を吐く、または黒いタールのような便が出る
- 激しい腹痛とともに、おなかが急に膨らむ
- 皮膚や目が急に黄色くなり、ぐったりしている
- ⚠皮膚や白目の黄色みが強くなってきた
- ⚠あざができやすい、出血が止まりにくい
- ⚠手のふるえや言葉のもつれが急に悪化した
- ⚠いつもと違う混乱や、強い気分の落ち込みがある
一般的な症状
- 体がだるい、疲れやすい
- 皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)
- おなかが張る、むくむ
- 手や足がふるえる
- 話しづらい、飲み込みにくい
- 気分の落ち込みやイライラ、集中力の低下
- 理由のはっきりしない腹痛
子供の症状
- 子どもでは肝臓の症状が中心になりやすいです。
- 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
- 吐き気や食欲の低下
- おなかの張りや痛み
- 学校で集中できない、成績が下がるなどの変化
高齢者の症状
- 大人や高齢で診断される人では、神経や精神の症状が目立つことがあります。
- 手のふるえ、動作がぎこちない
- 言葉がもつれる
- 歩き方が不安定になる
- うつ状態や性格の変化、日常生活の意欲の低下
原因
主な原因
- ウィルソン病は「ATP7B」という遺伝子の変化が原因で起こります。この遺伝子の変化により、肝臓が銅をうまく体外に捨てられず、銅が体のいろいろな場所にたまっていきます。
リスク要因
- 親や兄弟姉妹、親戚にウィルソン病の人がいる場合
- 両親がそれぞれ、原因となる遺伝子の変化を1つずつ持っている場合(この場合は親は健康でも、子どもが両方を受け継ぐと発症することがあります)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 皮膚や目に黄色みがある
- 血を吐く、黒い便が出る
- 言葉や歩き方が急に変わる
- 強いだるさとおなかの張りがある
定期受診を予約すべき場合:
- 長く続くだるさ、手のふるえ、気分の落ち込みがある
- 家族にウィルソン病の人がいるので、自分も検査を受けたい
- 子どもが学校で集中できない、ふるえが気になるなど、原因がわからない症状が続いている
診断
ウィルソン病は1つの検査だけで診断できるものではなく、血液検査、尿検査、目の検査、遺伝子検査などを組み合わせて判断します。必要に応じて、肝臓や脳の専門医のいる病院を紹介されます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(銅を運ぶセルロプラスミンというタンパク質が少ないかなど)
- 24時間尿中銅の検査(1日の尿に銅が多く出ているか)
- 目の細隙灯検査(角膜の周りに銅による金茶色の輪が見えるか)
- 頭部MRI(脳に異常がないか)
- 遺伝子検査(原因となる遺伝子の変化を調べる)
- 肝生検(細い針で肝臓の組織の一部を採取し、銅のたまり具合を調べる)
診察で予想されること
診断には数日から数週間かかることがあります。専門医が結果を説明し、症状や検査値に合わせて治療方針を一緒に決めていきます。
治療
治療の目的は、体にたまった銅を減らし、これから銅がたまりすぎないようにすることです。診断後は、基本的に長期間の薬と定期的な通院が必要ですが、症状が安定すれば、仕事や学業、家庭生活などはほぼ普通に送れます。
自宅でのセルフケア
- 薬は医師の指示どおりに飲み、自己判断で止めない
- 定期的な血液検査や尿検査を続ける
- 銅を多く含む食品(レバー、貝類、ナッツ類、チョコレート、きのこ類など)の摂り方について、医師や栄養士に相談する
- アルコールは肝臓に負担をかけるため、控えるよう医師に確認する
医療治療
治療に使われる薬には、体にたまった銅を尿や便から外に出す薬と、食べ物からの銅の吸収を抑える薬があります。症状や治療の段階に合わせて、飲み薬または注射の形で使われます。具体的な薬や量は医師が決めます。
手術が検討される場合
肝臓のダメージが進んで肝不全になった場合など、重症の人には肝移植という手術が検討されることがあります。これは多くの人の治療法ではありませんが、命を救うための選択肢のひとつです。
この病気と共に生きる
症状が安定していれば、多くの人は学校、仕事、家庭生活をこれまでどおり続けられます。大切なのは、薬を続け、定期通院と検査を欠かさないことです。
生活習慣のアドバイス
- 治療を中断しないこと
- アルコールや銅を含むサプリメントなど、体に入れるものについて医師に確認する
- 妊娠や出産を考えている場合は、事前に主治医と相談する
- ふるえや動きの不自由さがある場合は、作業療法などのリハビリテーションの利用も検討する
食事と運動
バランスのよい食事と、無理のない運動は基本的に問題ありません。銅を多く含む食品や飲み水については、治療の時期によって注意の程度が変わるため、必ず医師や栄養士に確認しましょう。運動は体力に合わせて、無理をしない範囲で行ってください。
精神的健康と心の健康
うつや不安、イライラ、集中力の低下などは、この病気の症状の一部として現れることがあります。つらい気持ちを一人で抱え込まず、家族や医師に話しましょう。自分や他の人を傷つけたいという気持ちがわいた場合、すぐに119番へ電話するか、周りの人に助けを求めてください。
予防
ウィルソン病は生まれつきの遺伝子の変化が原因のため、発症そのものを予防することはできません。しかし、家族歴がある人が早めに検査を受けて診断・治療を始めれば、重症化を防ぐことができます。
ワクチン
ウィルソン病自体を予防するワクチンはありません。
検診プログラム
家族にウィルソン病の人がいる場合、兄弟姉妹や子どもは症状がなくても遺伝子検査や血液検査で調べられることがあります。一般的な健康診断では必ず調べられるわけではないため、気になる人は医療機関で相談しましょう。
合併症
治療しない場合
- 肝臓が硬くなる肝硬変
- 急性または慢性の肝不全
- 脳の神経が傷つき、ふるえや動きの障害、言葉の障害、精神症状が現れる
- 腎臓の障害、骨がもろくなる骨粗鬆症
- 治療しない場合、進行すると命に関わることがあります
長期的な見通し
治療をきちんと続ければ、肝臓の働きを保ち、多くの人が通常の生活と寿命を期待できます。たとえ症状が出ていても、治療によって改善することは少なくありません。診断された後も希望を持って、医療チームと一緒に長く付き合っていくことが大切です。
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重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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