喘息
参照した情報源
この記事は患者教育のための独自コンテンツです。
- NICE—Asthma: diagnosis, monitoring and chronic asthma management. NG80(2021)
- NHS—Asthma(2023)
- WHO—Asthma fact sheet(2023)
- GINA—Global Strategy for Asthma Management and Prevention(2024)
- CDC—Asthma(2024)
国際的な臨床ガイドラインに基づいています
概要
喘息(ぜんそく)とは、空気の通り道である「気道(きどう)」が慢性的に炎症(えんしょう)を起こし、敏感になっている状態のことです。気道が炎症を起こすと、内側が腫れて狭くなり、さらに周りの筋肉がギュッと締まってしまいます。その結果、息を吸ったり吐いたりするのが難しくなり、ゼイゼイ・ヒューヒューという音(喘鳴〔ぜんめい〕)や咳が出ます。症状は良くなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴で、適切なケアで多くの方が普通の日常生活を送ることができます。
重要な事実
- 喘息は「治る病気」ではありませんが、上手にコントロールすることで症状をほぼなくすことができます。
- 症状が急に悪化することを「発作(ほっさ)」と呼び、命に関わることもあるため、早めの対処がとても大切です。
- 喘息の原因はひとりひとり違い、花粉・ダニ・タバコの煙・運動・ストレスなどが引き金になることがあります。
喘息は日本でも非常によく見られる病気で、厚生労働省(こうせいろうどうしょう)のデータによると、日本全国で約100万人以上が通院治療を受けているとされています。子どもから高齢者まで、あらゆる年齢層に発症します。
喘息は子ども・大人・高齢者を問わず、誰でもかかる可能性があります。子どもの頃に発症することが多いですが、大人になってから初めて発症する「成人喘息(せいじんぜんそく)」も少なくありません。アレルギー体質の方や、家族に喘息のある方は発症しやすい傾向があります。
症状
- 話せないほど息苦しい、または一言ずつしか話せない
- 唇や爪が青紫色(チアノーゼ)になっている
- 肩を大きく上下させないと息ができない(肩呼吸)
- 首や鎖骨のくぼみが呼吸のたびに深くへこむ
- 意識がもうろうとしている、または意識を失いそうになっている
- 喘息の吸入薬を使ってもまったく良くならない
- ⚠普段より明らかに息苦しく、横になっていられない
- ⚠夜間に何度も目が覚めるほどの咳や息苦しさ
- ⚠吸入薬を使っても数時間で症状がぶり返す
- ⚠話すことはできるが、動くと息苦しさが強まる
一般的な症状
- ゼイゼイ・ヒューヒューという呼吸音(喘鳴〔ぜんめい〕)
- 息苦しさ・息切れ(特に夜間や早朝に悪化しやすい)
- 胸が締め付けられるような圧迫感
- なかなか止まらない咳(特に夜間や運動後)
- 痰(たん)が絡む感じ
- 運動をすると息苦しくなる
子供の症状
- 風邪のたびに咳が長引く、またはゼイゼイする
- 夜中や明け方に咳き込んで目が覚める
- 元気に遊べない、すぐに疲れてしまう
- 泣いたり笑ったりすると咳が出る
- 咳が2週間以上続く
高齢者の症状
- 息切れを「年のせい」と思い込んで見逃しやすい
- 運動時だけでなく安静時にも息苦しさが出ることがある
- 心臓の病気や肺気腫(はいきしゅ)など他の病気と症状が似ているため、診断が遅れることがある
- 咳がひどく、夜眠れないことがある
- 薬の副作用(ふくさよう)が出やすいため、医師との相談がとくに大切
原因
主な原因
- 気道の慢性的な炎症(アレルギー反応や刺激物への過剰な反応)
- 気道の筋肉が収縮(しゅうしゅく)して狭くなること(気管支けいれん)
- 気道の内壁が腫れて粘液(ねんえき)が増えること
リスク要因
- アレルギー体質(アトピー性皮膚炎・花粉症・食物アレルギーなど)
- 家族に喘息やアレルギーがある
- タバコの煙にさらされている(本人の喫煙・受動喫煙を含む)
- ダニ・カビ・ペットのフケ・花粉などのアレルゲン(アレルギーの原因物質)にさらされている
- 大気汚染・粉塵(ふんじん)・化学物質にさらされる職業環境
- 幼少期の重い呼吸器感染症(呼吸器の感染による病気)
- 肥満(ひまん)
- 精神的なストレスや強い感情的な反応
- 冷たい空気や激しい運動
- アスピリンなど一部の市販薬に対する過敏(かびん)反応
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息苦しさが急に強くなった、または吸入薬を使っても良くならない
- 夜間や休日でも、発作が治まらないと感じたら救急を受診する
- チアノーゼ(唇や爪の青紫色)が出ている場合はすぐに119番へ
定期受診を予約すべき場合:
- 咳が2〜3週間以上続いている
- 運動後や夜間に息苦しさや喘鳴(ゼイゼイ)を感じる
- 喘息と診断されているが、最近症状が増えてきた
- 現在の治療が効いているか確認したい
- 妊娠中で喘息の管理について相談したい
診断
喘息の診断は、医師による問診(もんしん、症状や生活環境についての質問)と身体診察(しんたいしんさつ、聴診器で呼吸音を聞くなど)をもとに行われます。さらに肺の機能を調べる検査やアレルギーの検査を組み合わせることで、より正確に診断することができます。症状が似ている他の病気(心臓病・慢性閉塞性肺疾患〔まんせいへいそくせいはいしっかん〕など)と区別するためにも、これらの検査は重要です。
行われる可能性のある検査
- スパイロメトリー(肺機能検査):大きく息を吸って力いっぱい吐き出す検査で、肺から空気がどれだけスムーズに出るかを調べます
- ピークフロー測定:専用の器具を使って、息を吐く速さを家庭でも日々確認できる簡単な検査です
- 気道可逆性検査(きどうかぎゃくせいけんさ):薬の吸入の前後で肺機能がどう変化するかを比べ、喘息に特徴的な変化があるか確認します
- 気道過敏性試験(きどうかびんせいしけん):気道がどれほど敏感かを調べる検査で、専門の医療機関で行われます
- アレルギー検査(皮膚テスト・血液検査):何がアレルギーの引き金になっているかを調べます
- 胸部X線(レントゲン)・CT検査:他の肺の病気との区別のために行うことがあります
- 呼気一酸化窒素(こきいっさんかちっそ)検査(FeNO検査):息を吐く中に含まれる特定の物質を測定し、気道の炎症の程度を調べます
診察で予想されること
初めて受診する際は、いつから・どんなときに症状が出るか・家族のアレルギー歴など、なるべく詳しく教えると診断の助けになります。検査は痛みを伴うものはほとんどなく、肺機能検査は深呼吸と呼気(息を吐くこと)を繰り返すだけです。診断がついたら、医師と一緒に「喘息日記」をつけたり、発作時の対処計画(アクションプラン)を作成したりして、自分に合った管理方法を見つけていきます。
治療
喘息の治療は大きく「長期管理(ちょうきかんり)」と「発作時の応急対応」の2つに分かれます。長期管理では気道の炎症を日頃から抑えることで発作を予防し、発作時には気道を素早く広げる薬で症状を和らげます。治療は薬の吸入(きゅうにゅう)が中心となることが多く、全身への影響を少なくしながら気道に直接働きかけることができます。ひとりひとりの症状の重さ・生活スタイル・年齢に合わせた治療計画を、医師と相談しながら決めていきます。
自宅でのセルフケア
- ダニ・カビ・ペットのフケなどのアレルゲンをできるだけ室内から減らす(こまめな掃除・換気・布団の天日干しなど)
- タバコの煙を避ける(自分の喫煙をやめる・受動喫煙の環境を変える)
- ピークフローメーターで毎日の呼吸の状態を記録し、変化に早く気づく
- 「喘息日記」をつけて、どんなときに症状が悪化するかパターンを把握する
- 医師と一緒に作った「発作時のアクションプラン(緊急対応計画)」を手元に置いておく
- インフルエンザや肺炎などの感染症予防のためのワクチン接種について医師に相談する
- 強いストレスがかかったときの対処法を考え、リラクゼーションを取り入れる
- 冷たい空気の中での運動はマスク着用などの工夫をする
- 吸入薬は処方通りに使い、自己判断で中止しない
医療治療
喘息の薬物治療は、主に「発作を予防するための長期管理薬」と「発作が起きたときに素早く症状を和らげる発作治療薬」の2種類があります。長期管理薬は毎日続けて使うことで気道の炎症を抑え、発作を起こりにくくします。吸入ステロイド薬(きゅうにゅうすてろいどやく)と呼ばれる種類が代表的で、正しく使うことで全身への影響を最小限にしながら高い効果が得られます。発作治療薬は症状が出たときに気道を素早く広げる働きがあります。症状が重い場合や吸入薬だけでは不十分な場合には、飲み薬や注射による治療が加わることもあります。近年では、重症の喘息に対して「生物学的製剤(せいぶつがくてきせいざい)」という特定の炎症の仕組みに働きかける注射薬も登場しており、専門医のもとで検討されます。どの治療が自分に合っているかは必ず医師に相談してください。
手術が検討される場合
喘息に対して手術が行われることは一般的ではありません。ただし、非常に重症で薬による治療が十分に効かない場合に限り、「気管支熱形成術(きかんしねつけいせいじゅつ)」という気道の筋肉を特殊な熱で処置する専門的な手技(てぎ)が一部の医療機関で実施されることがあります。これは通常の内視鏡(ないしきょう)を使った処置で、手術とは異なります。適応があるかどうかは専門医との十分な相談が必要です。
この病気と共に生きる
喘息があっても、適切な治療と自己管理を続けることで、スポーツ・仕事・旅行・子育てなど、多くの方がほぼ制限なく日常生活を楽しめます。大切なのは「自分の喘息のパターンを知ること」「引き金を避けること」「薬を正しく使い続けること」の3つです。毎日の記録や定期通院を習慣にすることで、発作が起きにくい安定した状態を保つことができます。
生活習慣のアドバイス
- 室内はこまめに換気し、湿度を40〜60%に保ってダニやカビが増えにくい環境を作る
- 布団・枕カバーは週1回以上洗濯し、防ダニカバーを活用する
- ペットのいる部屋への入室を制限するか、ペットを定期的に洗う
- 禁煙(きんえん)し、タバコの煙のある場所を避ける
- 空気清浄機(くうきせいじゅうき)の利用も選択肢のひとつ
- 花粉の多い季節は外出時にマスクを着用し、帰宅後は手洗い・うがいを行う
- 風邪や感染症にかかると発作が起きやすいため、手洗いやワクチン接種で感染予防を心がける
- 仕事・学校での喘息の状態を担当者に伝え、必要な配慮を相談する
食事と運動
特定の食べ物が喘息を悪化させる方もいますが、すべての喘息の方が食事制限をする必要はありません。バランスの良い食事(野菜・果物・魚を多く含む和食スタイルなど)は全体的な健康を支えます。肥満(ひまん)は喘息を悪化させることがあるため、体重の管理も大切です。運動は喘息の天敵ではなく、適度な有酸素運動(ゆうさんそうんどう)は肺の機能を高め、体全体を元気にします。運動前に吸入薬を使うなど、医師と相談しながら無理なく体を動かす習慣を続けましょう。水泳(すいえい)は温かく湿った空気の中で行えるため、喘息のある方でも取り組みやすいスポーツのひとつとされています。
精神的健康と心の健康
喘息とともに生活することで、「また発作が起きるのでは」という不安や、活動が制限されることへのストレス・気持ちの落ち込みを感じる方は少なくありません。こうした気持ちは自然なことですが、長く続く場合は心の健康にも影響します。不安や気持ちの沈みが続くときは、かかりつけ医や精神科・心療内科(しんりょうないか)に相談することも大切な選択肢です。気持ちが安定していると、薬の飲み忘れも減り、自己管理もうまくいきやすくなります。悩みを一人で抱え込まず、信頼できる人や専門家に話してみてください。
予防
喘息そのものの発症を完全に予防する方法は、現時点ではまだ確立されていません。しかし、発作(症状の悪化)を予防することは十分に可能です。引き金となるもの(ダニ・タバコ・ストレスなど)をできるだけ避け、医師の指示通りに薬を使い続けることが最大の予防です。子どもの頃からタバコの煙にさらされない環境を作ることや、乳幼児期の適切なアレルギーケアが、将来の喘息リスクを下げる可能性があると研究で示されています。
ワクチン
インフルエンザ(季節性流行性感冒)や肺炎球菌(はいえんきゅうきん)感染症などのワクチン接種は、喘息発作の引き金になりやすい呼吸器感染症を防ぐのに役立つとされています。接種のタイミングや種類については、かかりつけ医に相談してください。厚生労働省でも、喘息などの慢性疾患(まんせいしっかん)のある方へのワクチン接種を推奨しています。
検診プログラム
現時点で喘息の一般的な集団スクリーニング(無症状の方を対象とした検査)は行われていませんが、アレルギー体質の強い子どもや家族に喘息のある方は、気になる症状があれば早めに受診することをお勧めします。
合併症
治療しない場合
- 重症発作(じゅうしょうほっさ):急激な気道の閉塞(へいそく)により、命に関わる状態になることがある
- 睡眠障害:夜間の咳や息苦しさで十分に眠れず、日常生活の質が大きく低下する
- 肺の恒久的な変化(気道リモデリング):長期間にわたって炎症が続くと、気道の壁が厚くなり、元に戻りにくくなる
- 学校や仕事の欠席・活動制限が増え、生活の質(QOL)が低下する
- 精神的な健康への影響(不安・うつ)が出やすくなる
長期的な見通し
喘息は「一生付き合う病気」ですが、適切な治療と自己管理によって、ほとんどの方が発作をほぼゼロに近い状態で日常生活を送ることができます。医学の進歩により治療の選択肢も増えており、重症の方にも新たな治療法が登場しています。喘息があることで夢をあきらめる必要はありません。定期的な受診と医師との信頼関係を築きながら、自分らしい生活を続けていきましょう。
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- 厚生労働省 – 喘息・アレルギー情報 ↗ · 日本全国
- 一般社団法人 日本アレルギー学会 ↗ · 日本全国
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。