インフルエンザ
参照した情報源
この記事は患者教育のための独自コンテンツです。
- NICE—Influenza(2024)
- NHS—Flu(2023)
- WHO—Influenza (seasonal) fact sheet(2023)
- CDC—Influenza (Flu)(2024)
国際的な臨床ガイドラインに基づいています
概要
インフルエンザ(流行性感冒)は、インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症です。普通の風邪とは異なり、症状が突然始まり、高熱・強い全身のだるさ・筋肉の痛みなど、体への影響が大きいのが特徴です。毎年冬を中心に流行し、多くの人が感染します。
重要な事実
- インフルエンザウイルスは主にA型・B型・C型の3種類があり、流行の原因となるのは主にA型とB型です。
- 感染した人の咳・くしゃみ・会話などによる飛沫(しぶき)や、ウイルスがついた手で口や鼻を触ることで感染します。
- 毎年インフルエンザワクチンを接種することで、重症化や合併症のリスクを下げることができます。
インフルエンザは非常に一般的な感染症で、日本では毎年1000万人前後が感染すると言われています。特に12月〜3月の冬季に流行のピークを迎えます。厚生労働省も毎年感染状況を監視し、注意を呼びかけています。
インフルエンザはどの年齢の方にも起こりえますが、特に65歳以上の高齢者、5歳未満の小さなお子さん、妊娠中の方、慢性的な病気(糖尿病・心臓病・呼吸器の病気など)をお持ちの方は、重症化しやすい傾向があります。
症状
- 呼吸が苦しい・息を吸うのが辛い(呼吸困難)
- 唇や爪の色が青っぽくなっている(チアノーゼ:酸素不足のサイン)
- 意識がない・呼びかけに反応しない
- けいれん(体が震えて止まらない)が起きている
- 胸や腹に強い痛みや圧迫感がある
- 突然、話せない・体が動かせない・顔がゆがんでいる(脳卒中のサインの可能性)
- 上記のような症状があれば、すぐに119番に電話してください。
- ⚠熱が3〜4日以上続いている、または一度下がった熱が再び上がってきた
- ⚠水分が全くとれず、おしっこがほとんど出ていない(脱水のサイン)
- ⚠喉の痛みがとても強く、飲み込めない
- ⚠耳の痛みが強い
- ⚠子どもがぐったりして反応が鈍い
- ⚠基礎疾患(持病)がある方で症状が急に悪化してきた
一般的な症状
- 38℃以上の急な高熱
- 強い全身のだるさ・倦怠感(けんたいかん)
- 筋肉や関節の痛み
- 乾いた咳
- のどの痛み
- 鼻水・鼻づまり
- 寒気・悪寒(おかん)
- 食欲の低下
子供の症状
- 高熱とともに熱性けいれん(ねつせいけいれん:熱による体の震えや意識の変化)が起こることがある
- 嘔吐(おうと)や下痢など、消化器の症状が大人より出やすい
- ぐったりして普段と様子が大きく違う
- 耳の痛み(中耳炎を合併することがある)
- 幼い子は自分で症状を伝えられないことがあるため、いつもより泣く・食べない・機嫌が悪いといった変化に注意する
高齢者の症状
- 高熱が出ないことがあり、微熱や平熱でも感染している場合がある
- 強い倦怠感や食欲不振が目立つことが多い
- 意識が少しぼんやりする・混乱するといった変化が現れることがある
- 持病(糖尿病・心臓病・肺の病気など)が悪化しやすい
- 脱水(体の水分が不足した状態)になりやすい
原因
主な原因
- インフルエンザウイルス(主にA型・B型)への感染が原因です。
- 感染者の咳・くしゃみ・会話などによる飛沫(しぶき)を吸い込むことで感染します(飛沫感染)。
- ウイルスがついたドアノブや手すり・スマートフォンなどを触った手で、自分の口・鼻・目を触ることでも感染します(接触感染)。
- ウイルスは空気中を漂う非常に小さな粒子として広がることもあります(空気感染)。
リスク要因
- 65歳以上の高齢者
- 5歳未満、特に2歳未満の乳幼児
- 妊娠中・産後2週間以内の方
- 糖尿病・心臓病・腎臓病・肝臓病・呼吸器の病気(ぜんそくなど)などの慢性疾患がある方
- 免疫の働きが低下している方(免疫抑制剤を使用中の方、HIV感染者など)
- 施設(高齢者施設・保育所・学校・病院など)での集団生活をしている方
- インフルエンザワクチンを接種していない方
- 毎年のように流行シーズンに人混みに出る機会が多い方
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 高熱(38.5℃以上)が突然出て、全身のだるさがひどい場合
- 水分がとれず、尿が出ていない・口がカラカラに乾いている場合
- 熱が下がったのに、再び高熱が出てきた場合(肺炎などの合併症のサインの可能性)
- 高齢者や乳幼児・妊娠中の方・持病のある方が発熱した場合(重症化リスクが高いため、早めの受診を)
- 意識がぼんやりする・混乱がある場合
定期受診を予約すべき場合:
- 症状が軽く、水分もとれており、自宅での安静で回復できそうな場合でも、2〜3日たっても改善しない場合は受診を検討してください。
- 職場や学校への復帰の目安・感染予防のアドバイスを聞きたい場合。
- インフルエンザワクチンについて詳しく聞きたい場合。
診断
医師はまず症状の内容・いつから始まったか・周囲でインフルエンザが流行しているかなどを確認します。その後、必要に応じて迅速抗原検査(きゅうそくこうげんけんさ)と呼ばれる簡単な検査を行います。これは、鼻や喉の奥から綿棒で少量のサンプルを採取し、15〜30分程度でインフルエンザウイルスの有無を調べるものです。
行われる可能性のある検査
- 迅速抗原検査(インフルエンザ簡易検査):鼻や喉のサンプルを使い、ウイルスを短時間で調べる検査。クリニックや病院で広く行われています。
- PCR検査(ポリメラーゼ連鎖反応法):ウイルスの遺伝子を精密に調べる検査。迅速検査より精度が高いですが、結果が出るまで時間がかかります。主に医療機関や重症例で行われます。
- 胸部X線(レントゲン):肺炎などの合併症が疑われる場合に行われることがあります。
- 血液検査:重症例や合併症が疑われる場合に、体の状態を詳しく調べるために行われることがあります。
診察で予想されること
多くのクリニックでは、受診してその日のうちに検査結果がわかります。発症から時間が浅い場合(特に12時間以内)は、ウイルスの量が少なく検査が陰性(いんせい:検出されない)になることもあります。症状や流行状況から医師がインフルエンザと判断した場合は、検査が陰性でも適切な対応をしてもらえることがあります。受診の際には、症状が始まった時期・体温の変化・周囲の感染状況などを伝えると、スムーズに診察が進みます。
治療
インフルエンザの治療の基本は、十分な休養と水分補給です。多くの場合、体がウイルスと戦うための力を回復させるために、無理をせず静かに過ごすことが最も大切です。医療機関では状態に応じて、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬(こうウイルスやく)が処方されることがあります。症状の重さや、重症化リスクのある方かどうかによって、治療の方針は異なります。治療については必ず医師の指示に従ってください。
自宅でのセルフケア
- 十分な睡眠と安静を心がける:体の免疫(めんえき:病気と戦う力)が回復するために、休むことが最優先です。
- 水分をこまめにとる:発熱で汗をかくと脱水になりやすいため、水・お茶・スポーツ飲料・スープなどを少しずつ、こまめに飲みましょう。
- 部屋を適切な温度と湿度に保つ:加湿器などを使って部屋の乾燥を防ぐと、のどや鼻の粘膜が楽になります。
- 消化のよい食べ物をとる:食欲がなくても、おかゆやスープなど、胃に優しいものを少しずつとりましょう。
- マスクを着用し、他の人への感染を防ぐ:特に発熱中は外出を控え、家族へうつさないよう注意しましょう。
- 手洗い・咳エチケットを徹底する:こまめな手洗いと、咳やくしゃみの際にティッシュや肘の内側で口・鼻を覆うことで、感染の広がりを防ぎます。
- 解熱剤(げねつざい:熱を下げる薬)を使う場合は、医師や薬剤師に相談してから使用する:特にお子さんには、自己判断での市販薬使用に注意が必要です。
医療治療
医師の判断により、インフルエンザウイルスの増殖を抑える「抗ウイルス薬」が処方されることがあります。この薬は発症から早い時期(一般的に48時間以内)に使い始めると、症状の期間を短縮したり重症化を防いだりする効果が期待できます。薬の種類・使い方(飲み薬・吸入薬・点滴など)は、患者さんの状態や年齢・持病に応じて医師が判断します。また、咳・のどの痛み・鼻水など個々の症状を和らげるための薬が処方されることもあります。「薬をもらったからすぐ治る」と思わず、休養と水分補給も同時に大切にしてください。
手術が検討される場合
インフルエンザそのものに手術が必要になることはありません。ただし、肺炎など重篤な合併症が起きた場合は、入院して集中的な治療が必要になることがあります。
この病気と共に生きる
インフルエンザにかかっている間は、できる限り自宅で安静に過ごすことが大切です。学校や職場への復帰については、発熱が下がってから一定の日数が経過するまで自宅待機するよう、法律や各施設のルールで定められている場合があります(学校保健安全法では、発症後5日かつ解熱後2日〔幼児は3日〕が登校・登園の目安とされています)。回復してきたら、無理のない範囲から少しずつ活動を増やしていきましょう。
生活習慣のアドバイス
- 発熱中は外出を控え、他の人への感染を防ぐために自宅で静かに過ごしましょう。
- 家族や同居の方へうつさないよう、部屋を分けたり、マスクを着用したりする工夫をしましょう。
- 回復期に無理に活動すると、症状が長引いたり合併症が起こりやすくなったりすることがあります。体の声を聞きながら、ゆっくりと日常生活に戻りましょう。
- アルコールや喫煙は回復を遅らせることがあるため、療養中は控えましょう。
- こまめな手洗い・うがい・換気の習慣を続けましょう。
食事と運動
熱があるうちは食欲が落ちることが多いですが、水分補給を最優先にしてください。水・お茶・スポーツ飲料・みそ汁・スープなど、飲みやすいものを少しずつとりましょう。食欲が出てきたら、おかゆ・うどん・豆腐など、消化のよい食べ物から始めると体に優しいです。回復前の激しい運動は避けてください。熱が下がり、体のだるさがなくなってきたら、軽い散歩など無理のない運動から徐々に再開しましょう。完全に元気になるまでには、熱が下がってから数日かかることがあります。焦らずゆっくり回復することが大切です。
精神的健康と心の健康
インフルエンザで数日間、仕事や学校を休まなければならないのは、精神的にもストレスになることがあります。「早く治らないと…」「周りに迷惑をかけている」と焦る気持ちもわかりますが、回復には時間が必要です。療養中は、好きな音楽を聞いたり、軽い読書をしたり、体に負担のない形でリラックスする時間を大切にしてください。気分が長期間落ち込んでいる・何もやる気が出ないといった状態が続く場合は、かかりつけ医や専門家に相談することをためらわないでください。
予防
インフルエンザを完全に防ぐことは難しいですが、いくつかの方法で感染リスクを大幅に下げることができます。毎年のワクチン接種、こまめな手洗い・うがい・消毒、咳エチケット(マスク着用・咳やくしゃみの際に口と鼻を覆う)、流行時期の人混みを避けること、部屋の換気と適切な湿度を保つことが有効です。厚生労働省も毎年、インフルエンザの予防対策として、これらを推奨しています。
ワクチン
インフルエンザワクチンは、毎年秋(10〜11月ごろ)に接種することが推奨されています。ワクチンはインフルエンザに感染するリスクを下げ、感染した場合でも重症化や入院・死亡のリスクを大きく減らす効果があります。特に高齢者・乳幼児・妊娠中の方・慢性疾患のある方にとって、重要な予防手段です。毎年ウイルスが変化するため、前年のワクチンでは効果が十分でない場合があり、毎年接種することが大切です。接種の詳細や副反応(副作用)についてはかかりつけ医に相談してください。自治体によっては、高齢者や子どもへの接種費用の補助制度があります。お住まいの市区町村にご確認ください。
検診プログラム
インフルエンザには定期的なスクリーニング(健診)の仕組みはありませんが、毎年流行状況を把握するため、厚生労働省と各都道府県が感染者数のモニタリングを行っています。流行シーズン中は地域の感染情報をチェックし、感染リスクの高い環境への外出を控えることも予防につながります。
合併症
治療しない場合
- 肺炎(はいえん):ウイルス性肺炎や、二次的な細菌性肺炎(インフルエンザが引き金となって細菌が肺に感染するもの)が起こることがあります。高齢者や乳幼児では特に注意が必要です。
- 中耳炎(ちゅうじえん):特に小さなお子さんで、耳の中に炎症が起きることがあります。耳の痛みや聴力の変化に注意してください。
- 気管支炎(きかんしえん):気管支(肺につながる空気の通り道)に炎症が起きる状態で、咳が長引くことがあります。
- 心筋炎(しんきんえん)・心膜炎(しんまくえん):まれに、心臓の筋肉や周囲の膜に炎症が起きることがあります。
- 脳症(のうしょう):特に小さなお子さんで、インフルエンザ脳症(高熱や意識の変化・けいれんなどを伴う深刻な状態)が起きることがあります。
- 慢性疾患の悪化:糖尿病・心臓病・呼吸器疾患などの持病がインフルエンザをきっかけに悪化することがあります。
- 脱水症(だっすいしょう):特に高齢者や乳幼児で、発熱・発汗・食欲不振により体の水分が不足した状態になることがあります。
長期的な見通し
インフルエンザは、多くの方にとって適切な休養と水分補給によって1〜2週間以内に回復できる病気です。毎年のワクチン接種や早めの受診・適切な治療によって、重症化のリスクをしっかり下げることができます。もし合併症が起きた場合でも、早期に医療機関を受診することで、適切な治療を受けることができます。ご自身と大切な家族を守るために、流行シーズン前にワクチン接種を検討し、少しでも心配な症状があればかかりつけ医に相談してください。あなたの健康を支えるための専門家は必ずいます。
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- 国立感染症研究所 インフルエンザ情報 ↗ · 日本全国
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