高血圧
参照した情報源
この記事は患者教育のための独自コンテンツです。
- NICE—Hypertension in adults: diagnosis and management. NG136(2023)
- NHS—High blood pressure (hypertension)(2023)
- WHO—Hypertension fact sheet(2023)
- CDC—About High Blood Pressure(2024)
- ESC—ESC/ESH Guidelines for arterial hypertension(2023)
国際的な臨床ガイドラインに基づいています
概要
高血圧(こうけつあつ)とは、血液が血管の壁を押す力(血圧)が、長い間にわたって正常よりも高い状態のことです。心臓はポンプのように血液を全身へ送り出しており、そのときに血管にかかる圧力が「血圧」です。この圧力がずっと高い状態が続くと、血管や心臓、腎臓などに少しずつ負担がかかっていきます。日本では一般的に、診察室で測った血圧が収縮期(上の数字)140mmHg以上、または拡張期(下の数字)90mmHg以上の場合に「高血圧」と判断されます。
重要な事実
- 高血圧は「サイレントキラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれ、多くの場合、自覚症状がほとんどありません。
- 日本では成人の約3人に1人が高血圧と言われており、非常によくある病気です。
- 生活習慣の改善や、必要に応じた医療的なサポートによって、血圧はしっかりとコントロールすることができます。
高血圧はとてもよくある病気です。厚生労働省のデータによると、日本国内には約4,300万人の高血圧の方がいると推計されており、40歳以上では特に多く見られます。ただし、適切な治療を受けている割合はまだ十分ではないとも言われています。
高血圧は年齢を問わず誰にでも起こりえますが、加齢とともにリスクが高くなります。男性は50代から、女性は閉経(月経が終わること)後から増える傾向があります。また、家族に高血圧の方がいる場合や、塩分の多い食事・運動不足・喫煙・過度の飲酒などの生活習慣がある方にも多く見られます。子どもや若い世代にも起こることがあります。
症状
- 突然、激しい頭痛が起きたとき(今まで経験したことがないほど強い頭痛)→ すぐに119番へ
- 顔・腕・足の片側がしびれたり、動かしにくくなったとき(脳卒中の可能性)→ すぐに119番へ
- 言葉がうまく話せない、相手の言葉が理解できないとき →すぐに119番へ
- 突然視力が失われたり、見え方がおかしくなったとき → すぐに119番へ
- 胸に強い痛みや圧迫感があるとき(心筋梗塞の可能性)→ すぐに119番へ
- 意識がもうろうとしている、または失った場合 → すぐに119番へ
- 息が非常に苦しいとき → すぐに119番へ
- ⚠家庭用血圧計で180/120mmHg以上の数値が出たとき(症状がなくても当日中に医療機関へ)
- ⚠ひどい頭痛や視力の変化があるが、意識はある場合(当日中に受診を)
- ⚠急に鼻血が止まらない場合
- ⚠胸が苦しい・動悸が激しいが、我慢できる程度の場合(できるだけ早く受診を)
一般的な症状
- 多くの場合、高血圧だけでは自覚症状がありません。これが高血圧が「静かな病気」と言われる理由です。
- 血圧が非常に高くなったとき、頭の後ろが重い・痛いと感じることがあります。
- 朝起きたときに頭痛や頭重感(頭が重い感じ)を覚えることがあります。
- めまいやふらつきを感じる場合があります。
- 耳鳴りを感じることがあります。
- 鼻血が出やすくなることがあります(ただし、高血圧以外の原因も多いです)。
子供の症状
- 子どもの高血圧はまれですが、成長とともに見つかることがあります。
- 頭痛が続く、特に朝に多い場合は注意が必要です。
- 視力の変化(ぼやけて見えるなど)を訴えることがあります。
- 疲れやすい、集中できないといった様子が続くことがあります。
- 子どもの血圧は年齢・体格によって基準が異なるため、かかりつけの小児科医に相談することが大切です。
高齢者の症状
- 高齢者では、立ち上がったときに血圧が急に下がる「起立性低血圧」と高血圧が共存することがあります。
- めまいや転倒のリスクが高くなることがあります。
- 物忘れや集中力の低下が目立つ場合、脳への血流に影響が出ている可能性があります。
- 心臓のドキドキ感(動悸)や息切れを感じやすくなることがあります。
- 高齢者は複数の病気を持っていることが多いため、定期的な血圧管理がとても重要です。
原因
主な原因
- 【本態性(一次性)高血圧】:原因が一つに特定できないタイプで、高血圧全体の約90%を占めます。遺伝的な体質・加齢・生活習慣などが複合的に関わっています。
- 【二次性高血圧】:腎臓の病気(慢性腎臓病など)、ホルモンの異常(副腎の腫瘍など)、睡眠時無呼吸症候群(寝ている間に呼吸が止まる病気)などが原因で血圧が上がるタイプです。原因の病気を治療することで改善する場合があります。
- 加齢とともに血管の弾力が失われ、血圧が上がりやすくなります。
- 塩分(ナトリウム)の多い食事は血圧を上げる大きな要因となります。
- 肥満、特にお腹まわりに脂肪がたまる内臓脂肪型肥満は、血圧を上げやすくします。
リスク要因
- 家族に高血圧の人がいる(遺伝的要因)
- 塩分の多い食事(日本食は塩分が多めの傾向があります)
- 野菜・果物の摂取が少ない食生活
- 運動不足
- 過度のアルコール摂取
- 喫煙(タバコは血管を傷つけ、血圧を上げます)
- 肥満・過体重
- 精神的・身体的なストレスが続いている
- 睡眠不足や、睡眠時無呼吸症候群
- 糖尿病や脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が高い状態)を持っている
- 妊娠中(妊娠高血圧症候群と呼ばれる状態になることがあります)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 家庭で血圧を測ったら非常に高い数値(目安として180/120mmHg以上)が出た場合
- 頭痛・めまい・視力の変化・胸の不快感などの症状が突然現れた場合
- これまで血圧が安定していたのに、急に高くなってきた場合
- 処方された薬を飲んでいても血圧が思うように下がらない場合
定期受診を予約すべき場合:
- 40歳以上で、まだ一度も血圧を測ったことがない方
- 健康診断で「血圧が高め」と指摘されたが、まだ医療機関を受診していない方
- 高血圧と診断されているが、定期的な通院ができていない方
- 妊娠中または妊娠を考えている方で、血圧への不安がある方
- 糖尿病・脂質異常症・腎臓病などの持病があり、血圧管理も一緒に確認したい方
診断
高血圧の診断は、主に血圧の測定によって行われます。1回だけでなく、異なる日・異なる時間帯に複数回測定し、継続して血圧が高い状態であることを確認することが重要です。診察室での測定に加えて、ご自宅での「家庭血圧測定」も診断や治療管理にとても役立ちます。厚生労働省や日本高血圧学会のガイドラインでは、家庭での血圧測定を積極的に推奨しています。
行われる可能性のある検査
- 血圧測定(腕に巻くベルト(マンシェット)で測る、よく知られている検査です)
- 家庭血圧測定(毎朝・毎夜、自宅で記録するもので、より正確な状態を把握できます)
- 24時間自由行動下血圧測定(ABPM):携帯型の機器を1日装着し、日常生活中の血圧変動を記録します
- 血液検査(腎臓の機能・血糖値・コレステロール・電解質などを確認します)
- 尿検査(腎臓への影響を調べます)
- 心電図(心臓への負担がないか調べます)
- 心臓エコー(超音波)検査(心臓の大きさや動きを確認します)
- 眼底検査(目の奥の血管を見ることで、血管への影響を調べられます)
診察で予想されること
初めて医療機関を受診すると、まず問診(生活習慣・家族歴・症状など)と血圧測定が行われます。その後、必要に応じて血液検査や心電図など、いくつかの検査を行うことがあります。検査は基本的に痛みが少なく、短時間で行えるものがほとんどです。医師は検査結果をもとに、あなたに合った管理・治療方針を一緒に考えてくれます。わからないことや不安なことは、どんどん質問してみましょう。
治療
高血圧の治療の目標は、血圧を適切な範囲にコントロールし、心臓や脳・腎臓などの臓器へのダメージを防ぐことです。治療には大きく分けて「生活習慣の改善」と「薬による治療」があります。症状の程度や持病の有無によって、まず生活習慣の改善から始める場合と、最初から薬を使う場合があります。どちらの方法でも、生活習慣の見直しは非常に大切な柱です。治療は長期的に続けることが多いですが、正しく続けることで多くの方がしっかりと血圧をコントロールできています。
自宅でのセルフケア
- 減塩(塩分を減らす):1日の食塩摂取量を6g未満にすることが推奨されています。だしをきかせたり、香辛料やレモンなどを活用すると、塩分を減らしても美味しく食べられます。
- 体重管理:適切な体重を維持することで、血圧を下げる効果が期待できます。
- 定期的な有酸素運動:ウォーキングや水泳など、無理のない運動を毎日30分程度続けることが効果的です。ただし、激しい運動を始める前には医師に相談しましょう。
- 禁煙:タバコは血管に直接ダメージを与えます。禁煙することは高血圧管理だけでなく、全身の健康にとって非常に重要です。
- 節酒(お酒を控える):アルコールは血圧を上げる原因になります。男性は1日あたり日本酒1合程度、女性はその半量以下を目安にしましょう。
- ストレス管理:深呼吸・ヨガ・趣味など、自分に合ったリラックス方法を見つけましょう。
- 規則正しい睡眠:十分な睡眠と、決まった時間に起きる習慣が血圧の安定に役立ちます。
- 家庭での血圧測定:毎朝起床後(トイレを済ませてから、朝食・薬を飲む前)と、夜眠前に測定・記録する習慣をつけましょう。
医療治療
生活習慣の改善だけでは血圧が目標値に達しない場合、または最初から薬による治療が必要と判断された場合、医師が降圧薬(血圧を下げる薬)を処方することがあります。降圧薬にはいくつかの種類があり、作用する仕組みがそれぞれ異なります。医師はあなたの血圧の状態、年齢、持病(糖尿病・腎臓病・心臓病など)、そして体質に合わせて最適な薬を選んでくれます。1種類で十分な場合も、複数の薬を組み合わせる場合もあります。薬を使い始めた後も、血圧の測定や定期的な検査を続けることが大切です。自分の判断で薬をやめたり量を変えたりせず、必ず医師に相談してください。副作用が気になる場合も、遠慮なく医師や薬剤師に伝えましょう。
手術が検討される場合
高血圧そのものに対して手術が行われることはほとんどありません。ただし、腎動脈の狭窄(腎臓へ向かう血管が細くなる病気)や副腎の腫瘍など、二次性高血圧の原因となる病気が見つかった場合は、その治療として手術や処置が行われることがあります。詳しくは担当医師に確認してください。
この病気と共に生きる
高血圧は「治る」というより「上手に付き合っていく」病気です。毎日の血圧測定、服薬(薬を忘れずに飲む)、食事・運動の管理など、少しずつ習慣にしていくことが大切です。最初は大変に感じるかもしれませんが、一つひとつを無理なく生活に取り入れることで、多くの方が安定した日常生活を送っています。定期的に医師に診てもらうことで、状態の変化に早めに気づくことができます。
生活習慣のアドバイス
- 毎日決まった時間に血圧を測り、記録帳やアプリに記録しましょう。受診のときに持参すると医師の参考になります。
- 外食や加工食品はどうしても塩分が多くなりがちです。メニュー選びや調味料の量に少し気を配るだけでも効果があります。
- エレベーターよりも階段を使う、一駅歩くなど、日常の中に体を動かす機会を意識的に作りましょう。
- 寒い朝に急に体を動かすと血圧が急上昇することがあります。冬場は体を温めてからゆっくり動きはじめましょう。
- 入浴の際は、熱すぎるお湯(42℃以上)は血圧に負担をかけることがあります。ぬるめのお湯でゆっくり入るのがおすすめです。
- 仕事や家事のストレスをため込まないよう、休憩や気分転換の時間を意識して作りましょう。
- 旅行や外出が多い方も、できるだけ同じ時間に薬を飲む習慣を続けましょう。
食事と運動
食事面では、減塩(塩分を減らすこと)が最も重要です。日本人の平均的な塩分摂取量は目標値よりも多い傾向があるため、意識的に減らすことが大切です。味噌汁の量を減らす・醤油は「かける」のではなく「つける」・加工食品の栄養成分表示を確認するなど、少しの工夫を積み重ねましょう。カリウム(野菜・果物・豆類に豊富)を積極的に摂ることも血圧に良い影響を与えます。腎臓に持病がある方は、カリウムの摂り方について医師に相談してください。運動については、ウォーキング・軽い体操・水中歩行などの有酸素運動(酸素を使いながら行う、比較的ゆっくりした運動)が効果的です。毎日30分を目安にしつつ、最初は10分から始めても構いません。運動の種類・強さについては医師や理学療法士に相談するとより安心です。
精神的健康と心の健康
慢性的な病気の管理は、精神的な疲れや不安をもたらすことがあります。「薬を飲み続けることへの不安」「血圧が下がらないことへの焦り」「将来への心配」などを感じるのは、とても自然なことです。ストレス自体が血圧を上げる原因にもなるため、こころのケアも高血圧管理の大切な一部です。不安や気持ちの落ち込みが続く場合は、担当医師や心療内科・精神科に相談することをためらわないでください。こころの健康に不安を感じたときは、「よりそいホットライン(0120-279-338、24時間対応)」などの相談窓口も利用できます。
予防
高血圧の予防は、生活習慣の見直しが中心です。完全に防げるとは言い切れませんが、リスクを大きく減らすことは十分可能です。若いうちから塩分を控えた食事・適度な運動・禁煙・節酒・ストレス管理・十分な睡眠を心がけることが、高血圧だけでなく多くの生活習慣病の予防につながります。家族に高血圧の方がいる場合は、特に早めから意識することが大切です。
検診プログラム
高血圧は自覚症状がないことが多いため、定期的な血圧測定が非常に重要です。40歳以上の方は年1回の特定健康診査(メタボ健診)の受診が推奨されています。これは職場や市区町村から案内が届くものです。健診を受ける機会のない方も、薬局やドラッグストアの血圧測定器、または家庭用血圧計を使って定期的に確認することをおすすめします。血圧手帳に記録をつける習慣も診察の際に役立ちます。
合併症
治療しない場合
- 脳卒中(脳梗塞・脳出血):血管が詰まったり破れたりして、半身マヒや言語障害などを引き起こすことがあります。
- 心筋梗塞・狭心症:心臓の血管が傷んで詰まり、心臓の筋肉がダメージを受ける病気です。
- 心不全:心臓が血液を十分に送り出せなくなり、息切れやむくみが生じる状態です。
- 慢性腎臓病・腎不全:腎臓の細い血管がダメージを受けて、腎機能が低下していきます。
- 大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう):体の中心にある大きな血管(大動脈)の壁が膨らんで、破裂する危険がある状態です。
- 視力障害・失明:目の奥の細い血管(網膜血管)がダメージを受けることで、視力に影響が出ることがあります。
- 認知症:長期的な高血圧は脳の血管にダメージを与え、認知機能の低下と関連することがあります。
長期的な見通し
高血圧は怖い合併症を起こす可能性がある病気ですが、しっかりと管理すれば多くの方が健康的で充実した生活を続けることができます。早めに気づいて、生活習慣を整え、必要に応じて医師のサポートを受ければ、合併症のリスクを大きく減らすことができます。毎日の小さな積み重ねが、将来の健康を守る力になります。あなたがこの情報を読んでいるということは、すでに自分の健康に向き合っている証拠です。焦らず、一歩ずつ、前に進んでいきましょう。
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