2型糖尿病
参照した情報源
この記事は患者教育のための独自コンテンツです。
- NICE—Type 2 diabetes in adults: management. NG28(2022)
- NHS—Type 2 diabetes(2023)
- WHO—Diabetes fact sheet(2023)
- CDC—About Type 2 Diabetes(2024)
- ADA—Standards of Care in Diabetes(2024)
国際的な臨床ガイドラインに基づいています
概要
2型糖尿病(にがたとうにょうびょう)は、血液の中のブドウ糖(血糖)が慢性的に高くなる病気です。私たちの体は、「インスリン」というホルモンを使って血糖を細胞の中に取り込み、エネルギーに変えています。2型糖尿病では、このインスリンがうまく働かなくなったり(インスリン抵抗性)、分泌される量が足りなくなったりすることで、血糖が下がりにくい状態が続きます。1型糖尿病とは異なり、2型は生活習慣や遺伝的な要因が深く関わっており、多くの場合、ゆっくりと進行します。
重要な事実
- 日本の糖尿病患者の約95%が2型糖尿病と言われています。
- 初期は自覚症状がほとんどなく、健康診断などで初めて気づかれることが多いです。
- 適切な食事・運動・医療ケアによって、血糖をコントロールし、健やかな生活を続けることができます。
2型糖尿病は日本でとても多い病気です。厚生労働省の調査によると、「糖尿病が強く疑われる人」は国内に約1,000万人いると推計されており、さらに「糖尿病の可能性が否定できない人」(予備群)を合わせると約2,000万人にのぼると言われています。年齢が上がるほど多くなりますが、近年は若い世代にも増えています。
中高年(40歳以上)の方に多く見られますが、食生活の変化や運動不足などを背景に、20〜30代の若い世代や、子どもにも増えています。肥満気味の方、家族に糖尿病の方がいる場合、運動習慣が少ない方などは特に注意が必要です。男女ともに発症しますが、やや男性に多い傾向があります。
症状
- 意識がなくなった、または意識が朦朧としている(高血糖による糖尿病性昏睡や低血糖が疑われます)→ すぐに119番へ電話してください
- 激しい吐き気・嘔吐・腹痛と同時に呼吸が速く、甘酸っぱいにおいの息がある(糖尿病性ケトアシドーシスの可能性)→ すぐに119番へ
- ひどく混乱している、ぐったりして反応がおかしい → すぐに119番へ
- ⚠急に手が震えて、冷や汗が出て、顔が青白くなる(低血糖の可能性)→ 当日中に医療機関へ、または救急へ
- ⚠足や足の指に感覚のない傷ができている → 同日または翌日中に受診
- ⚠視力が急に落ちた → 早急に眼科または主治医へ
- ⚠高熱や感染症の症状が強い → 早めに受診
一般的な症状
- のどが異常に渇く(口渇)
- トイレに行く回数が増える(頻尿)、特に夜間に何度も起きる
- いつもより食べているのに体重が減る
- 疲れやすく、だるさが続く
- 視界がぼやけることがある
- 手足がしびれたり、ちくちくしたりする感覚
- 傷やあざが治りにくい
- 感染症(風邪や皮膚の炎症など)にかかりやすくなる
子供の症状
- 急に体重が減る
- 異常にのどが渇く、水をたくさん飲む
- トイレの回数が急に増える(おねしょが増えることもある)
- 疲れやすく、元気がなくなる
- 視力が落ちたと感じる
高齢者の症状
- 症状がほとんど出ないまま進行することが多い
- ふらつきや転倒が増える(低血糖や神経障害が関係することがある)
- 記憶力や認知機能が少しずつ落ちてきたと感じる
- 傷の治りが明らかに遅くなる
- 足の感覚が鈍くなる、冷えや痛みを感じる
原因
主な原因
- インスリン抵抗性:体の細胞がインスリンの働きに反応しにくくなること。これにより、血糖をうまく取り込めなくなります。
- インスリン分泌不足:すい臓(インスリンを作る臓器)が十分なインスリンを作れなくなること。
- これら2つの問題が重なることで、血糖が慢性的に高い状態が続きます。
リスク要因
- 肥満・過体重(特におなか周りに脂肪がつきやすいタイプ)
- 運動不足・座りっぱなしの生活習慣
- 不健康な食生活(糖質や脂質の多い食事、野菜・食物繊維の不足)
- 家族(親・兄弟姉妹)に2型糖尿病の方がいる(遺伝的な要因)
- 40歳以上(加齢に伴いリスクが高まる)
- 以前に「血糖値が高め」と言われたことがある(境界型・糖尿病予備群)
- 妊娠中に血糖が高くなった経験がある(妊娠糖尿病)
- 高血圧や脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が高い)がある
- 睡眠不足や慢性的なストレス
- 喫煙習慣
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 強いのどの渇き・頻尿・急な体重減少が重なったとき
- 手足のしびれや感覚の異常が突然出てきたとき
- 健康診断で血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー:過去1〜2か月の血糖の平均を示す指標)が「高め」「要検査」と言われたとき
- 足に傷ができて、なかなか治らないとき
定期受診を予約すべき場合:
- 糖尿病の家族がいて、自分の血糖値を一度チェックしたい
- 体重が増えてきた、疲れやすいなど、なんとなく気になる症状がある
- 健康診断の結果を持って、詳しく話を聞きたい
- 毎年の定期健診(特に40歳以上の方)を受けていない
診断
糖尿病の診断は、主に血液検査で行われます。1回の検査だけでなく、複数回の検査結果と症状を合わせて総合的に判断します。「糖尿病かもしれない」と感じたら、内科・内分泌内科・糖尿病内科に相談してください。健康診断で指摘された場合も、必ず専門の医療機関で詳しく確認することをお勧めします。
行われる可能性のある検査
- 空腹時血糖検査:何も食べていない状態(通常8時間以上絶食後)で採血し、血糖値を測ります。
- HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)検査:過去1〜2か月の平均血糖値を反映する指標です。食事の影響を受けにくく、スクリーニングに広く使われます。
- 75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT):甘い液体(ブドウ糖75g)を飲んで、飲む前・2時間後の血糖値を測る検査です。境界型や糖尿病の診断に用いられます。
- 随時血糖検査:食事のタイミングに関わらず採血する方法で、強い症状がある場合に使われます。
- 尿検査:尿に糖が出ていないかを調べます(スクリーニングとして)。
診察で予想されること
初めて受診する際は、症状や生活習慣についての質問(問診)、体重・血圧の測定、そして採血が行われることが多いです。結果が出るまでに数日かかる場合もあります。検査の前に絶食が必要なこともありますので、受診前に医療機関に確認しておくとスムーズです。診断が確定した場合でも、すぐに生活が激変するわけではありません。医師や看護師、管理栄養士などチームで一緒に対処法を考えてくれます。
治療
2型糖尿病の治療の中心は「血糖値をできるだけ安定させること」です。そのために、食事療法・運動療法・必要に応じた薬物療法の3つを組み合わせます。一人ひとりの状態(年齢・合併症の有無・生活スタイルなど)によって、治療の内容は異なります。定期的に医師と相談しながら、自分に合った方法を続けていくことが大切です。
自宅でのセルフケア
- バランスの良い食事を心がける(野菜・食物繊維を多めに、糖質・脂質はほどほどに)
- 規則正しい食事時間を守り、食べすぎを避ける
- 毎日少しずつでも体を動かす習慣をつける(まずは10分のウォーキングから)
- 体重を記録し、少しずつでも適正体重に近づける
- 禁煙する(喫煙は血糖コントロールを悪化させ、合併症のリスクを高めます)
- アルコールは控えめにする
- 自宅での血糖測定(医師に指示された場合)を続け、記録をつける
- 足の傷に気をつけ、毎日足をよく観察する
- ストレスをためすぎず、十分な睡眠をとる
- 定期的な通院を欠かさない
医療治療
まず食事療法・運動療法を試み、それだけでは血糖がコントロールできない場合に、医師の判断でお薬(経口薬や注射薬)が処方されることがあります。お薬にはさまざまな種類があり、それぞれ血糖を下げる仕組みが異なります。どのお薬が合うかは個人差がありますので、医師が患者さんの状態を見ながら選択します。また、合わせて血圧・コレステロール・腎機能などの管理も行われることが多いです。お薬は自己判断で中断しないでください。副作用や気になることがあれば、必ず医師や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
重度の肥満(高度肥満)を伴う2型糖尿病の一部のケースでは、「代謝手術(バリアトリック手術)」と呼ばれる手術が選択肢になることがあります。これは胃や腸の構造を変えることで食事量や栄養の吸収を調整し、血糖値の改善を目指す方法です。ただし、すべての方に適応があるわけではなく、専門医との十分な相談と評価が必要です。
この病気と共に生きる
糖尿病と診断されると、最初は不安になる方がほとんどです。でも、多くの方が日常の生活を楽しみながら糖尿病とうまく付き合っています。毎日の食事や運動に少し気を配り、定期的に通院して血糖値を確認していくことが基本です。完璧を目指す必要はありません。少しずつ、自分のペースで続けることが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 食事は「何を食べるか」だけでなく「食べる量・順番・速さ」も意識する(野菜から食べると血糖の上昇が緩やかになります)
- ウォーキング・水泳・体操など、無理のない有酸素運動を週に150分以上を目安に続ける
- 長時間座りっぱなしにならず、30分に1回は立ち上がって軽く体を動かす
- 体重を定期的に測り、記録する習慣をつける
- 睡眠の質を大切にし、7〜8時間の睡眠を目指す
- 喫煙している方は禁煙外来などを活用する
- 感染症予防のため、手洗い・うがいを徹底する(糖尿病の方は感染しやすいため)
- 旅行や外食など楽しみも大切に。完全に我慢するより、バランスを意識することが長続きの秘訣です
食事と運動
食事は「糖尿病だから食べてはいけない」ものはほとんどありません。大切なのは「食べる量・バランス・タイミング」です。管理栄養士に食事の相談をすると、自分の好みや生活に合った食べ方を一緒に考えてもらえます。運動は血糖値を下げる効果があり、体重管理にも役立ちます。激しい運動でなくても、食後30分ほどのウォーキングが血糖の上昇を和らげるのに効果的です。運動を始める前に、医師に相談して自分に合った運動の種類・量・タイミングを確認しましょう。
精神的健康と心の健康
糖尿病と診断されたときや、長期間管理を続けることで、不安・落ち込み・疲れ・やる気の低下を感じることがあります。「糖尿病燃え尽き症候群(バーンアウト)」と呼ばれる状態になる方もいます。これはとても自然な反応です。気持ちがつらいと感じたときは、一人で抱え込まずに医師や看護師、また心理・精神科の専門家に相談してください。もし気持ちがとても落ち込んで、生きることが嫌になるような気持ちが続く場合は、すぐに信頼できる人や相談窓口に連絡してください。日本では「よりそいホットライン(0120-279-338、24時間)」などが利用できます。
予防
2型糖尿病は、生活習慣の改善によって発症を遅らせたり、予防できる可能性があります。「糖尿病予備群(境界型)」と言われた方でも、体重を5〜7%減らすこと・週に150分程度の適度な運動・バランスの良い食事を続けることで、糖尿病への移行を大幅に減らせることが研究で示されています。「まだ糖尿病ではないから大丈夫」ではなく、予備群のうちから生活を見直すことが非常に大切です。
ワクチン
糖尿病の方はインフルエンザや肺炎球菌などの感染症にかかりやすく、重症化しやすい傾向があります。ワクチン(予防接種)については、主治医に相談して、推奨されているものを定期的に受けることをお勧めします。
検診プログラム
厚生労働省は、40歳以上の方を対象に、特定健診(メタボ健診)の受診を推奨しています。この健診では血糖値・HbA1c・腹囲などが測定され、早期発見につながります。糖尿病の家族歴がある方や肥満の方は、40歳未満でも定期的な血糖チェックを医師に相談することをお勧めします。
合併症
治療しない場合
- 糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう):目の血管が傷つき、視力が低下したり、最悪の場合失明につながることがある
- 糖尿病腎症(じんしょう):腎臓の機能が低下し、透析(人工腎臓)が必要になることがある(日本の透析導入原因の第1位)
- 糖尿病神経障害(しんけいしょうがい):手足のしびれ・痛み・感覚の低下、自律神経の障害など
- 糖尿病足病変(あしびょうへん):足の感覚が鈍くなることで傷に気づかず、壊疽(えそ:組織が死んでしまうこと)になり切断が必要になるケースも
- 心臓病・脳卒中:動脈硬化が進み、心筋梗塞・狭心症・脳梗塞などのリスクが高まる
- 感染症への抵抗力の低下:傷の治りが遅く、さまざまな感染症にかかりやすくなる
- 認知症リスクの上昇:高血糖が長く続くと、脳への影響が出やすくなる
長期的な見通し
これらの合併症は怖く聞こえるかもしれませんが、血糖・血圧・脂質をしっかり管理することで、多くは予防または進行を大幅に遅らせることができます。実際、適切なケアを続けている多くの方が、元気に長く暮らしています。大切なのは「早く気づき、きちんとケアを続けること」。一人で頑張りすぎず、医療チームと力を合わせて、自分らしい生活を守っていきましょう。
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- 日本糖尿病学会(患者向け情報・医療機関検索) ↗ · 日本全国
- 日本糖尿病協会(患者・家族向けサポート情報) ↗ · 日本全国
- 厚生労働省 生活習慣病対策(糖尿病)情報 ↗ · 日本全国
- 健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団) ↗ · 日本全国
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。