Chronic Kidney Disease
参照した情報源
この記事は患者教育のための独自コンテンツです。
- NICE—Chronic kidney disease: assessment and management. NG203(2023)
- NHS—Chronic kidney disease(2023)
- WHO—Kidney disease fact sheet(2022)
- KDIGO—KDIGO Clinical Practice Guideline for CKD(2024)
国際的な臨床ガイドラインに基づいています
概要
慢性腎臓病(まんせいじんぞうびょう、英語でChronic Kidney Disease=CKD)とは、腎臓(じんぞう)のはたらきが3か月以上にわたって低下したり、腎臓に異常が続いている状態のことです。腎臓は血液をきれいにして不要な老廃物(ろうはいぶつ)や余分な水分を尿として体の外に出す大切な臓器です。また、血圧の調整や骨を丈夫に保つホルモンの産生、赤血球を作るのを助けるはたらきもしています。CKDになると、これらのはたらきが少しずつ低下していきます。多くの場合、初期は自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに進行していることがあります。
重要な事実
- CKDは日本国内に約1,480万人いると推定されており、成人の約8人に1人が該当するとされています(厚生労働省の報告より)。
- 初期段階では自覚症状がほとんどなく、血液検査や尿検査で初めて発見されることが多いです。
- 早期に発見して適切に管理することで、進行を遅らせたり、心臓や血管への合併症を予防したりすることが可能です。
CKDは日本でも世界でも非常に多い病気です。日本では約1,480万人がCKDと推定されており、糖尿病や高血圧を持つ方に特に多く見られます。「国民病」ともいわれるほど身近な病気ですが、まだ十分に知られていないのが現状です。
CKDはどの年齢層にも起こりえますが、特に40歳以上の中高年の方、糖尿病・高血圧・肥満のある方、ご家族に腎臓病のある方、喫煙している方などに多く見られます。また、高齢になるほど腎臓の機能が自然に低下するため、65歳以上の方はより注意が必要です。
症状
- 突然の激しい胸の痛みや息苦しさ(すぐに119番に電話してください)
- 意識がなくなる、または意識がもうろうとする
- 急に尿がまったく出なくなる(無尿)
- 体全体がひどくむくんで呼吸が苦しい
- けいれん(体がガクガク震える発作)が起きる
- ⚠急に尿の量がとても少なくなった
- ⚠急激な体重増加(数日で2〜3kg以上)
- ⚠高血圧が急に悪化した(頭痛、視力の変化を伴う場合)
- ⚠強い吐き気や嘔吐が続く
- ⚠尿に明らかな血が混じる(血尿)
- ⚠息切れや動悸がひどくなった
一般的な症状
- 疲れやすさ・だるさが続く(腎臓の機能が下がると体に老廃物がたまりやすくなるため)
- 足首やまぶたのむくみ(余分な水分が体にたまるため)
- 尿の泡立ちが多い(たんぱく尿=尿にたんぱく質が出ている状態のサイン)
- 夜間に何度もトイレに起きる
- 尿の量や色の変化(濃い色、血が混じるなど)
- 食欲が落ちる、吐き気がする
- 皮膚のかゆみ
- 集中力の低下、頭がぼんやりする
- 血圧が高くなる(高血圧)
子供の症状
- 成長が遅れる・体重が増えにくい
- おねしょ(夜尿症)が続く、または尿の量が極端に多い・少ない
- 顔や足のむくみ
- 食欲不振、元気がない
- 繰り返す尿路感染症(おしっこの感染)
- 血圧が高い(子どもの高血圧はめずらしいため、注意が必要です)
高齢者の症状
- 全身の疲労感やふらつきが強くなる
- 足のむくみがひどくなる
- 食欲が落ちて体重が減る
- 貧血(血が薄くなる状態)による息切れ・動悸(どうき)
- 物忘れや集中力の低下(脳への影響も出ることがあります)
- 筋肉のけいれんや足がつりやすくなる
原因
主な原因
- 糖尿病性腎臓病(糖尿病=血糖値が高い状態が続き、腎臓の細い血管が傷つくことで起こる。日本のCKDの最も多い原因のひとつ)
- 高血圧による腎硬化症(血圧が高い状態が続くと、腎臓の血管が傷んで硬くなる)
- 慢性糸球体腎炎(まんせいしきゅうたいじんえん):腎臓のフィルター部分に慢性的な炎症が起きる病気
- 多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん):腎臓に水の入った袋(嚢胞)がたくさんできる遺伝性の病気
- 腎盂腎炎(じんうじんえん)や尿路感染症の繰り返し
- 尿路の閉塞(前立腺肥大や結石など)による腎臓へのダメージ
- 痛み止めや一部の薬を長期間使い続けることによる腎臓への影響
リスク要因
- 糖尿病(特に血糖コントロールが不十分な場合)
- 高血圧(血圧が高い状態が続く)
- 肥満・メタボリックシンドローム(内臓脂肪が多い状態)
- 喫煙(タバコは腎臓の血管にもダメージを与えます)
- ご家族に慢性腎臓病や腎不全の方がいる(遺伝的な要因)
- 高齢(年齢とともに腎機能は自然に低下します)
- 過去に急性腎障害(急激な腎機能の低下)を経験したことがある
- 尿路の病気や先天性の腎臓の異常
- 高尿酸血症(痛風:尿酸が体にたまる状態)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 尿の量が急に減った、または全く出なくなった
- 急に足や顔がひどくむくんできた
- 血尿(赤や茶色の尿)が見られる
- 尿の泡立ちがいつもより極端に多い
- 息切れ、動悸、胸の苦しさが出てきた
- 頭痛がひどく、血圧がいつもより大幅に高い
定期受診を予約すべき場合:
- 健康診断で尿たんぱく・尿潜血・クレアチニン値の異常を指摘された
- 糖尿病・高血圧があり、定期的な腎臓の検査を受けていない
- 疲れやすさ、むくみ、夜間の頻尿(よるに何度もトイレに起きること)が気になる
- ご家族に慢性腎臓病や透析(とうせき)を受けている方がいる
- 腎臓の病気と診断されたことがあり、フォローアップを受けていない
診断
CKDの診断は主に血液検査と尿検査によって行われます。腎臓が血液をどれだけきれいにできているかを示す「eGFR(推定糸球体ろ過量)」という数値と、尿にたんぱく質が漏れていないかを調べることで、腎臓の状態を評価します。これらの異常が3か月以上続く場合にCKDと診断されます。必要に応じて画像検査や腎生検(じんせいけん:腎臓の組織を少し採って調べる検査)が行われることもあります。
行われる可能性のある検査
- 血液検査:クレアチニン(腎臓の老廃物処理能力を示す値)・eGFR(腎機能の指標)・BUN(血液中の尿素窒素)・電解質(カリウム・ナトリウムなど)・貧血の有無
- 尿検査:たんぱく尿(尿にたんぱく質が漏れているか)・尿潜血(尿に血が混じっているか)・尿沈渣(にょうちんさ:尿を顕微鏡で観察する検査)
- 尿アルブミン検査:たんぱく質の一種であるアルブミンが尿に漏れていないかを詳しく調べる
- 腹部超音波検査(エコー):腎臓の大きさ・形・石や嚢胞(のうほう)の有無を確認する
- CT検査・MRI検査:必要に応じて腎臓や尿路の詳しい画像を撮影する
- 腎生検:腎臓の組織を細い針で少量採取して顕微鏡で調べる検査(原因を詳しく調べるために行われることがある)
- 血圧測定・心電図:合併症(心臓・血管への影響)を確認するために行われる
診察で予想されること
最初の診察では、症状や既往歴(これまでの病気)、家族歴、使用中の薬などを詳しく聞かれます。血液・尿検査の結果をもとに腎機能のステージ(重症度)が評価され、必要に応じて腎臓内科(じんぞうないか)の専門医を紹介してもらえます。初めは少し不安に感じるかもしれませんが、医師や看護師が丁寧に説明してくれますので、わからないことはどんどん質問してみましょう。
治療
CKDの治療の目標は、腎機能の低下を少しでも遅らせること、そして心臓・血管への合併症を防ぐことです。CKDは完全に治すことが難しい場合もありますが、適切な管理によって長期間にわたって安定した状態を保てる方がたくさんいます。治療は薬による管理と生活習慣の改善が両輪となります。進行度(ステージ)に応じて治療内容は変わりますので、医師と相談しながら自分に合った計画を立てていくことが大切です。
自宅でのセルフケア
- 塩分(食塩)を控える食事:塩分の摂りすぎは血圧を上げ、腎臓に負担をかけます。1日6g未満が目標とされています
- たんぱく質の適切な摂取:過剰なたんぱく質は腎臓に負担をかけるため、医師や管理栄養士の指導のもとで適切な量を守ることが重要です
- カリウム・リンの制限:腎機能が低下するとカリウムやリンが体にたまりやすくなるため、進行度に応じて食事で調整が必要になることがあります
- 水分管理:むくみや心臓への負担を防ぐために、医師の指示に従って水分の摂取量を管理する
- 禁煙:タバコは腎臓の血管にダメージを与え、病気の進行を早めます。禁煙は最も大切なセルフケアのひとつです
- 適度な運動:体力の維持と血圧・血糖値の管理に役立ちます。ウォーキングなど無理のない範囲で続けることが大切です
- 体重管理:肥満は腎臓への負担を増やすため、標準体重を目指しましょう
- 市販薬(鎮痛剤・消炎薬など)や健康食品・サプリメントの使用は必ず医師に相談する(腎臓に負担をかけるものがあります)
- 定期的な受診と検査:自覚症状がなくても、定期的に血液・尿検査を受けることが大切です
医療治療
CKDの医療的な治療は、その原因や進行度によって異なります。主な治療の柱として、血圧を適切にコントロールする薬(特に腎臓を保護するはたらきがある種類のものが選ばれることが多いです)、血糖値を管理する治療(糖尿病が原因の場合)、貧血を改善する治療、骨やミネラルバランスを整える治療、余分な水分やカリウムを排出する治療などがあります。最近では、腎臓を保護する効果が期待される新しい種類の薬も使われるようになっています。どの薬が適切かは個人の状態によって大きく異なりますので、必ず担当の医師と相談して決めてください。自己判断で薬をやめたり、市販薬を追加したりすることは危険ですので、必ず医師に相談しましょう。
手術が検討される場合
CKDが非常に進行して腎臓がほとんど機能しなくなった状態(腎不全:じんふぜん)になった場合、「腎代替療法(じんだいたいりょうほう)」と呼ばれる治療が必要になることがあります。主な選択肢として「血液透析(けつえきとうせき)」「腹膜透析(ふくまくとうせき)」「腎移植(じんいしょく)」があります。透析は腎臓の代わりに血液をきれいにする治療で、腎移植は他の人の健康な腎臓を移植する手術です。どの方法が最も適しているかは、年齢・体の状態・生活スタイルなどを考慮して医師と一緒に決めていきます。透析や移植になっても、多くの方が充実した生活を送っています。
この病気と共に生きる
CKDと診断されると、最初は戸惑いや不安を感じることがあります。それはごく自然なことです。しかし、CKDは「付き合っていける病気」でもあります。日々の食事管理・定期受診・薬の服用を続けることで、多くの方が長期間にわたって安定した生活を送っています。仕事や趣味、家族との時間も十分に楽しむことができます。大切なのは、一人で悩まずに医療チームや周りのサポートを上手に活用することです。
生活習慣のアドバイス
- 定期的な受診を欠かさない:自覚症状がなくても、定期的な検査で腎機能の変化をチェックすることがとても大切です
- 食事の記録をつけると、塩分・たんぱく質・カリウムの摂取量を管理しやすくなります
- 禁煙・節酒:アルコールも過剰摂取は腎臓に負担をかけます。適量を守りましょう
- 市販薬・サプリメントは必ず医師または薬剤師に相談してから使用する
- 感染症予防(手洗い・うがいなど):腎機能が低下すると免疫力(病気への抵抗力)が落ちることがあります
- 血圧・体重・尿の変化などを日記に記録して、受診時に医師に報告する
- 旅行や出張の際も、薬や受診スケジュールを事前に調整しておく
食事と運動
食事面では、塩分を控えることが最も基本的かつ重要です。加工食品・外食・インスタント食品は塩分が多いため、できるだけ手作りの薄味の食事を心がけましょう。たんぱく質・カリウム・リンの摂取量については、腎機能のステージによって個人差があります。管理栄養士(かんりえいようし)による栄養指導を活用すると、自分に合った食事プランが立てやすくなります。運動については、激しい運動は避け、毎日30分程度のウォーキングや軽い体操など、無理のない有酸素運動を続けることが推奨されています。運動を始める前には必ず医師に相談してください。
精神的健康と心の健康
慢性的な病気を抱えることは、心にも大きな負担をかけることがあります。「なぜ自分が」という気持ち、先への不安、食事制限のストレスなど、気持ちが落ち込んだりイライラしたりすることは珍しくありません。これらの気持ちは弱さではなく、病気と向き合っている証です。気持ちがつらいと感じたら、一人で抱え込まず、担当の医師や看護師、心理士などに打ち明けてみてください。精神的なサポートを受けることも、CKDの治療の大切な一部です。もし気持ちが非常につらく、誰かに話したいと感じたときは、「よりそいホットライン(0120-279-338、24時間対応)」などの相談窓口も利用できます。
予防
CKDのすべてを予防することは難しいですが、リスクを下げるためにできることはたくさんあります。最も大切なのは、CKDの主な原因である糖尿病と高血圧を予防・管理することです。塩分を控えたバランスの良い食事、適度な運動、禁煙、適切な体重管理を心がけることが、腎臓を守ることにつながります。また、健康診断を毎年受けて、尿検査・血液検査の異常を早期に発見することも大切です。腎臓の病気は早期発見・早期対応が非常に重要です。
ワクチン
CKDの患者さんは免疫力が低下していることがあるため、感染症予防のワクチン接種が推奨される場合があります。特にインフルエンザワクチンや肺炎球菌(はいえんきゅうきん)ワクチンについて、担当の医師に相談してみましょう。どのワクチンが適切かは個人の状態によって異なりますので、必ず医師に確認してください。
検診プログラム
CKDは自覚症状が出にくいため、定期的なスクリーニング検査(健診での早期発見のための検査)が非常に重要です。日本では毎年の特定健康診査(とくていけんこうしんさ、いわゆるメタボ健診)や職場・地域の健康診断で、尿たんぱくやクレアチニンの検査が行われています。40歳以上の方、糖尿病・高血圧がある方、家族にCKDがある方は、特に積極的に健診を受けることをお勧めします。厚生労働省もCKDの早期発見・早期治療の重要性を呼びかけています。
合併症
治療しない場合
- 心臓病・脳卒中のリスクが大幅に上がる(CKDは心臓や血管にも大きな影響を与えます)
- 貧血(血が薄くなる状態)が進み、疲れやすさや息切れが悪化する
- 骨がもろくなる(腎性骨症:じんせいこつしょう):腎臓がビタミンDやカルシウムの調整をできなくなるため
- 電解質(カリウムなど)のバランスが乱れ、心臓の不整脈(ふせいみゃく)が起きる可能性がある
- 体に老廃物がたまり、尿毒症(にょうどくしょう)という重篤な状態になることがある
- 腎不全(じんふぜん):腎臓がほとんど機能しなくなり、透析や腎移植が必要になる
- 免疫力の低下による感染症へのかかりやすさ
長期的な見通し
CKDと診断されても、決して希望を失わないでください。適切な治療と生活習慣の改善によって、多くの方が腎機能の低下を遅らせ、長期間にわたって充実した生活を送っています。特に早期のステージで発見された方は、適切な管理によって腎機能をかなり安定させられることが多いです。医療技術も年々進歩しており、新しい治療法の研究も続いています。また、透析や腎移植が必要になった方も、医療チームのサポートを受けながら、働いたり趣味を楽しんだりと活躍されている方がたくさんいます。あなたは一人ではありません。医療チームや支援グループを頼りながら、自分のペースで病気と向き合っていきましょう。
サポートを探す
国際機関
- 国際腎臓学会(ISN: International Society of Nephrology) ↗
- 世界腎臓デー(World Kidney Day)公式サイト ↗
- NKF(全米腎臓財団):腎臓病に関する豊富な患者向け情報(英語) ↗
地域の団体
- 厚生労働省 慢性腎臓病(CKD)対策 ↗ · 日本全国
- 日本腎臓学会(JRS):患者・市民向け情報ページ ↗ · 日本全国
- 全国腎臓病協議会(全腎協):患者会・患者支援情報 ↗ · 日本全国
- 日本透析医学会:透析に関する情報 ↗ · 日本全国
相談窓口
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。