肺炎
参照した情報源
この記事は患者教育のための独自コンテンツです。
- NICE—Pneumonia in adults: diagnosis and management. CG191(2019)
- NHS—Pneumonia(2023)
- WHO—Pneumonia fact sheet(2022)
- CDC—Pneumonia(2024)
国際的な臨床ガイドラインに基づいています
概要
肺炎(はいえん)とは、肺の中の小さな空気の袋(肺胞〔はいほう〕)に炎症が起きて、そこに液体や膿(うみ)がたまる病気です。肺は呼吸をするときに酸素を体に取り込む大切な臓器ですが、肺炎になるとその働きが妨げられ、息苦しさや咳、発熱などが起こります。細菌・ウイルス・真菌(カビの一種)など、さまざまな病原体が原因となります。
重要な事実
- 肺炎は世界中でよくみられる感染症で、日本でも毎年多くの人がかかります。
- 適切な治療を受ければ、多くの場合は回復できます。ただし、高齢者や免疫力が低い方は重症化しやすいため注意が必要です。
- 肺炎には予防のためのワクチンがあり、厚生労働省もその接種を推奨しています。
肺炎は日本でも非常によくみられる病気です。厚生労働省の統計によると、肺炎は日本人の死因の上位に入っており、特に65歳以上の高齢者に多くみられます。冬から春にかけての季節に患者数が増える傾向があります。
肺炎はどの年齢の方にも起こりえますが、特に2歳未満の乳幼児、65歳以上の高齢者、免疫力が低下している方(糖尿病や心臓病などの持病がある方、抗がん剤治療中の方など)、タバコを吸う方などは、かかりやすく重症化しやすい傾向があります。
症状
- 唇や爪が青紫色になっている(チアノーゼ)——すぐに119番へ電話してください
- 息が非常に苦しく、会話もできないほど呼吸が困難——すぐに119番へ電話してください
- 意識がもうろうとしている、または意識を失った——すぐに119番へ電話してください
- 子どもの呼吸が非常に速い、または止まりそう——すぐに119番へ電話してください
- 胸の痛みがひどく、冷や汗が出ている——すぐに119番へ電話してください
- ⚠38度以上の熱があり、咳や息苦しさが続いている——その日のうちに医療機関を受診してください
- ⚠痰に血が混じっている——早めに受診してください
- ⚠2〜3日しっかり休んでも症状が改善しない、または悪化している
- ⚠高齢者や基礎疾患がある方で、体調が急に悪くなった
一般的な症状
- 咳(せき)——乾いた咳から、黄色や緑色の痰(たん)が出る湿った咳まで様々
- 発熱——38度以上の高い熱が出ることが多い
- 悪寒(おかん)——体がガタガタと震える強い寒気
- 息切れや呼吸の苦しさ——少し動いただけで息が切れる
- 胸の痛み——特に深呼吸や咳をしたときに痛みを感じる
- 体のだるさや疲労感——ひどい疲れを感じる
- 食欲の低下
- 筋肉の痛み
子供の症状
- 高い熱が続く
- 呼吸が速い、または呼吸するときに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音がする
- 鼻の穴が広がる(鼻翼呼吸〔びよくこきゅう〕)——苦しそうに呼吸している様子
- 肋骨(ろっこつ)のあたりが息を吸うたびにへこむ(陥没呼吸〔かんぼつこきゅう〕)
- 顔や唇が青っぽくなる(チアノーゼ)
- ぐったりして元気がない、ミルクや食事を飲まない・食べない
- 不機嫌で泣き止まない
高齢者の症状
- 発熱が目立たないことがあり、むしろ体温が下がることもある
- 突然の意識の混乱、もの忘れがひどくなる、言動がおかしくなる
- ひどいだるさや、立ち上がれないほどの虚脱感
- 食欲が急に落ちる
- 転倒しやすくなる
- 息苦しさや、普段より少しの動作で疲れる感覚
原因
主な原因
- 細菌(さいきん)——肺炎球菌(はいえんきゅうきん)などの細菌が最も多い原因のひとつです。市中肺炎(病院の外でかかる肺炎)の主な原因菌です。
- ウイルス——インフルエンザウイルスや新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)、RSウイルスなどが肺炎を引き起こすことがあります。
- マイコプラズマ——細菌とウイルスの中間的な性質を持つ微生物で、「歩ける肺炎(マイコプラズマ肺炎)」とも呼ばれます。若い人に多くみられます。
- 真菌(カビの一種)——免疫力が低い方に多く、カビが肺に入り込んで肺炎を起こすことがあります。
- 誤嚥(ごえん)——食べ物や飲み物、胃の内容物が誤って気管に入ることで起こる「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」は、特に高齢者に多い原因です。
- 院内感染——入院中に病院内の環境から感染する場合もあります。
リスク要因
- 65歳以上の高齢者
- 2歳未満の乳幼児
- タバコを吸う習慣がある
- 糖尿病・心臓病・腎臓病・肝臓病などの慢性的な持病がある
- 免疫力が低下している(HIV感染、臓器移植後、抗がん剤治療中など)
- 慢性の肺の病気(COPD〔慢性閉塞性肺疾患〕や喘息など)がある
- 飲み込む力(嚥下機能〔えんげきのう〕)が低下している
- 長期間の入院や施設への入所
- 過度の飲酒
- 栄養状態が悪い
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 38度以上の発熱と咳が2〜3日以上続いている
- 息苦しさや胸の痛みがある
- 痰に血が混じっている
- 高齢者や持病がある方が急に体調を崩した
- お子さんの呼吸が速い、または元気がなくぐったりしている
定期受診を予約すべき場合:
- 肺炎の治療が終わった後も、咳が数週間続いている
- 肺炎と言われたが、自宅療養中の経過確認をしたい
- 予防接種(ワクチン)について相談したい
- 肺炎を繰り返しかかっており、原因を詳しく調べたい
診断
肺炎の診断は、医師が症状を聞いて(問診)、胸の音を聴診器で確認し(聴診)、必要に応じていくつかの検査を組み合わせて行います。「どんな症状がいつから始まったか」「最近どこかへ行ったか」「ワクチンを打っているか」などを聞かれることがあります。
行われる可能性のある検査
- 胸部X線検査(レントゲン)——肺に影や白くなった部分がないか確認します。最もよく使われる検査のひとつです。
- 胸部CT検査——レントゲンよりも詳しく肺の状態を調べられます。重症が疑われる場合や、原因がはっきりしない場合に行われます。
- 血液検査——炎症の程度や、体の状態(酸素が十分に届いているかなど)を調べます。白血球数やCRP(炎症を示す指標)などを確認します。
- 痰の検査(喀痰培養〔かくたんばいよう〕)——痰を採取して、どんな菌やウイルスが原因かを調べます。
- 酸素飽和度の測定——指先に小さなクリップ型の器具を付けて、血液中の酸素の量を調べます(パルスオキシメーター)。
- 尿中抗原検査——尿を使って、肺炎の原因となる特定の菌をすばやく調べる検査です。
- 血液培養——血液中に菌がいないか調べる検査で、重症の場合に行われることがあります。
診察で予想されること
受診すると、まず医師が詳しく話を聞いてくれます。その後、胸のレントゲンや血液検査などを行います。検査の結果は当日中にわかることが多く、肺炎と診断された場合は、症状の重さに応じて自宅療養か入院かが決まります。「どんな検査をするのか」「結果はいつわかるのか」など、不安なことは遠慮なく医師や看護師に聞いてください。
治療
肺炎の治療は、原因(細菌・ウイルス・真菌など)と症状の重さによって異なります。大切なのは、自己判断せず医師の指示に従うことです。軽症であれば自宅での療養が可能なことも多いですが、重症の場合や高齢者・持病がある方は入院が必要になることがあります。
自宅でのセルフケア
- 十分な休養をとる——体を休めることが回復の基本です。無理に動かず、ゆっくり過ごしましょう。
- 水分をしっかりとる——脱水を防ぐために、水やお茶、スポーツ飲料などをこまめに飲みましょう。
- 処方された薬を指示通りに飲み続ける——症状が改善してきても、自分の判断で途中でやめないことが大切です。
- 体の楽な姿勢をとる——上半身を少し起こした姿勢(セミファーラー位)が呼吸しやすいことがあります。
- 室内の温度・湿度を整える——乾燥した空気は気道に負担をかけるため、加湿器などを使って適度な湿度を保ちましょう。
- タバコは吸わない——喫煙は回復を遅らせ、肺への負担を増やします。
- 熱や咳がひどいときは無理に外出しない——安静にしながら経過をみましょう。
医療治療
肺炎の治療法は原因によって異なります。細菌性の肺炎には、細菌をやっつける薬(抗菌薬)が処方されます。ウイルスが原因の場合は、ウイルスに効く薬が使われることもありますが、対症療法(症状を和らげる治療)が中心になることも多いです。真菌(カビ)が原因の場合は、真菌に効く薬が使われます。また、酸素が十分に届いていない場合は、酸素を補う治療(酸素療法)が行われます。入院が必要な場合は、点滴での治療や、呼吸を助ける機器を使うこともあります。どの薬・治療法が自分に合っているかは、医師が判断しますので、処方された薬は必ず指示通りに使いましょう。
手術が検討される場合
肺炎そのものに手術が必要になることはほとんどありません。ただし、肺炎が悪化して肺の周りに膿がたまる「膿胸(のうきょう)」や、肺に膿のかたまりができる「肺膿瘍(はいのうよう)」などの合併症が起きた場合は、膿を取り除くための処置(胸腔ドレナージなど)が必要になることがあります。
この病気と共に生きる
肺炎から回復するには時間がかかります。治療が終わっても、咳や疲れが数週間続くことは珍しくありません。焦らず、自分のペースで少しずつ日常生活に戻っていきましょう。回復の経過は人それぞれですが、多くの方がきちんと元の生活に戻ることができます。
生活習慣のアドバイス
- 無理をしない——疲れを感じたら休む習慣をつけましょう。
- 禁煙する——タバコは肺への刺激になり、再発リスクを高めます。禁煙外来への相談もおすすめです。
- 手洗い・うがいを習慣にする——感染予防の基本を続けましょう。
- 人混みを避ける——回復期は免疫力が落ちているため、ウイルスや細菌をもらいやすい状態です。
- 規則正しい睡眠をとる——良質な睡眠は免疫力を保つのに役立ちます。
- 定期的に医師の診察を受ける——回復後も、指示された通りに受診して経過を確認しましょう。
食事と運動
回復期は食欲が落ちることがありますが、体の修復のために栄養をとることが大切です。消化の良い食べ物から始め、少量でも高たんぱく・高ビタミンの食事を心がけましょう(魚、豆腐、卵、野菜など)。水分補給も忘れずに。運動については、退院直後や回復期は激しい運動を避け、軽いウォーキングなどから少しずつ始めましょう。どのタイミングで運動を再開するかは、医師に相談してください。
精神的健康と心の健康
重い肺炎にかかったり、入院を経験したりすると、不安感や気分の落ち込み、「また肺炎になるのでは」という心配が生じることがあります。こうした気持ちはごく自然な反応です。気になるときは、一人で抱え込まず、家族や友人、または医師・看護師・心理士に話してみてください。心の不調もしっかりケアが必要です。もし強い不安やうつ症状が続く場合は、メンタルヘルスの専門家に相談することをおすすめします。
予防
肺炎を完全に防ぐことは難しいですが、いくつかの方法でリスクを大きく減らすことができます。日頃の手洗い・うがい、バランスの良い食事、十分な睡眠、適度な運動で免疫力を保つことが基本です。また、タバコをやめることも肺炎予防に非常に効果的です。
ワクチン
肺炎を予防するためのワクチンが複数あります。厚生労働省は、65歳以上の方や、60〜64歳で心臓・腎臓・呼吸器の病気がある方に対して、定期予防接種(公費)としてワクチン接種を推奨しています。また、インフルエンザウイルスによる肺炎を防ぐために、毎年インフルエンザワクチンを接種することも大切です。ワクチンについて詳しくは、かかりつけの医師や地域の保健センターにご相談ください。
検診プログラム
現時点で、一般の健康な方への肺炎の定期スクリーニング(無症状の段階での検査)は広く行われていません。ただし、肺炎を繰り返しやすい持病がある方や、免疫が低下している方は、定期的に医師の診察を受けることが大切です。
合併症
治療しない場合
- 菌血症(きんけつしょう)・敗血症(はいけつしょう)——細菌が血液中に入り込み、全身に広がることで命に関わる状態になることがあります。
- 胸水(きょうすい)——肺の周りに液体がたまり、呼吸がさらに苦しくなることがあります。
- 膿胸(のうきょう)——胸の空間に膿がたまる状態で、処置が必要になることがあります。
- 肺膿瘍(はいのうよう)——肺の中に膿のかたまりができる状態です。
- 呼吸不全——肺が十分に機能できなくなり、酸素が体に届かなくなることがあります。重症の場合は人工呼吸器が必要になることもあります。
- 腎臓・心臓など他の臓器への影響——重症肺炎が続くと、他の臓器にも負担がかかることがあります。
長期的な見通し
肺炎は怖い病気に聞こえるかもしれませんが、多くの方が適切な治療を受けることで回復できます。特に若くて体力のある方や、早期に治療を始めた方の回復は良好なことが多いです。高齢者や持病がある方でも、医師のサポートを受けながら回復している方はたくさんいます。不安を感じたときは、一人で抱え込まず、医療チームに率直に気持ちを伝えてください。あなたは一人ではありません。
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- 厚生労働省——感染症・肺炎に関する情報 ↗ · 日本全国
- 国立感染症研究所(NIID)——感染症情報 ↗ · 日本全国
- 日本呼吸器学会——患者・市民向け情報 ↗ · 日本全国
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。