片頭痛
参照した情報源
この記事は患者教育のための独自コンテンツです。
- NICE—Headaches in over 12s: diagnosis and management. CG150(2021)
- NHS—Migraine(2023)
- WHO—Headache disorders fact sheet(2016)
- IHS—International Classification of Headache Disorders (ICHD-3)(2018)
国際的な臨床ガイドラインに基づいています
概要
片頭痛(へんずつう)とは、頭の片側(または両側)に強い拍動性の痛みが繰り返し起こる神経系の病気です。単なる「ひどい頭痛」ではなく、脳内の神経や血管の働きが一時的に乱れることで起こると考えられています。痛みのほかに、吐き気、光や音への過敏さなどをともなうことが多く、日常生活に大きな影響を与えることがあります。
重要な事実
- 片頭痛は「頭が痛いだけ」ではなく、吐き気・嘔吐・光や音への敏感さをともなう複合的な症状です。
- 発作の前に「前兆(ぜんちょう)」と呼ばれる視覚的な異常(チカチカした光など)や手足のしびれが現れる人もいます。
- 適切なケアと生活の工夫によって、発作の回数や強さをコントロールできる可能性があります。
片頭痛は非常にありふれた病気で、日本では約840万人以上が影響を受けているとされています(厚生労働省の調査より)。世界でも成人の約10〜15%が経験すると言われており、「よくある病気」のひとつです。
片頭痛はあらゆる年齢の人に起こりますが、特に20〜40代の働き盛りの世代に多く見られます。また、女性は男性の約3倍多く発症するとされており、女性ホルモンとの関連が指摘されています。子どもや高齢者にも起こることがあります。
症状
- 「今まで経験したことがないほど激しい頭痛」が突然起きた場合(雷が落ちたような頭痛)— 脳出血などの重大な病気のサインかもしれません。すぐに119番に電話してください。
- 頭痛とともに、顔・腕・足の麻痺(まひ)や脱力が現れた場合
- 言葉が出なくなる、ろれつが回らなくなった場合
- 意識がなくなる、または意識が混濁(こんだく)した場合
- 高熱と首の硬直(首が前に曲げにくい)をともなう頭痛の場合(髄膜炎の可能性)
- 頭を打った後に起こる頭痛
- 視力が急激に失われた場合
- ⚠いつもの片頭痛よりも明らかに痛みの性質や場所が違う頭痛
- ⚠頭痛がいつもより長く続いている(72時間以上)
- ⚠市販の痛み止めが全く効かない、または飲むたびに頭痛がひどくなる感じがある
- ⚠頭痛の回数が急に増えてきた
- ⚠発熱・首の痛みをともなう頭痛
- ⚠視力や聴力の変化をともなう頭痛
一般的な症状
- 頭の片側(または両側)に起こる、ズキズキ・ドクドクとした拍動性の強い痛み
- 吐き気や嘔吐(おうと)
- 光がまぶしく感じる「光過敏(こうかびん)」
- 音がうるさく感じる「音過敏(おとかびん)」
- においに敏感になる「嗅覚過敏(きゅうかくかびん)」
- 体を動かすと痛みが悪化する
- 頭痛が4〜72時間続く
- 発作の前に視野がチカチカしたり、視界の一部が欠けたりする「閃輝暗点(せんきあんてん)」と呼ばれる前兆が現れることがある
- 前兆として手足や顔のしびれ、話しにくさを感じることがある
- 発作後に疲労感・だるさ・集中力の低下が残ることがある(「頭痛後遺症」とも呼ばれます)
子供の症状
- 頭の両側が痛くなることが多い(大人に比べて片側だけとは限らない)
- 吐き気や嘔吐が目立つ場合がある
- 「お腹が痛い」「気持ち悪い」と訴えることが多く、頭痛とわかりにくいことがある
- 発作の持続時間が大人より短い傾向がある(1〜2時間程度のこともある)
- 学校を休みたがる、活動への意欲が落ちるなどの行動の変化が見られることがある
- 乗り物酔いをしやすい子どもに多いという報告がある
高齢者の症状
- 若い頃に比べて頭痛の強さが和らぐことがあるが、前兆だけが残る場合がある
- 前兆(チカチカした光・視野の異常など)が頭痛なしに現れる「無頭痛性片頭痛」になることがある
- めまいやふらつきをともなうことがある
- 他の病気(高血圧や脳の病気など)の症状と混同されやすいため、医師への相談が特に大切
- 服用している薬が多い場合、片頭痛の治療薬との相互作用に注意が必要
原因
主な原因
- 脳内の神経(特に三叉神経=さんさしんけい)と血管の過剰な反応によって引き起こされると考えられています
- 脳の「興奮しやすさ」(感受性の高さ)が関係しており、特定の刺激に対して脳が過剰に反応することで発作が起きると言われています
- 「セロトニン」(脳内の情報伝達に関わる物質)のバランスの乱れが関与している可能性があります
- 「皮質拡延性抑制(ひしつかくえんせいよくせい)」と呼ばれる脳の電気的な活動の変化が前兆の原因と考えられています
- 遺伝的な要因が強く、親や兄弟姉妹に片頭痛がある場合、発症リスクが高まります
リスク要因
- 家族に片頭痛の人がいる(遺伝的素因)
- 女性である(女性ホルモンの変動が発作に関係することが多い)
- 月経(生理)周期の変動(排卵前後や月経直前に発作が起きやすい)
- ストレスや強い緊張、その後の解放感(「週末頭痛」と呼ばれることも)
- 睡眠の乱れ(寝過ぎ・寝不足のどちらも引き金になることがある)
- 特定の食べ物や飲み物(アルコール、カフェイン、チョコレート、チーズなど)
- 強い光、騒音、強いにおい
- 天気の変化や気圧の変動(低気圧が引き金になりやすいという報告がある)
- 空腹(食事を抜くこと)や脱水(水分不足)
- 過度の疲労や体力の消耗
- 鎮痛剤(痛み止め)の飲みすぎによる「薬物乱用頭痛(やくぶつらんようずつう)」
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 頭痛の性質や場所がいつもと全く違う場合
- 72時間以上頭痛が続いている場合
- 痛み止めを飲んでも効果がなく、日常生活が送れない状態が続く場合
- 頭痛に加えて視力の変化、しびれ、言葉の乱れなどの神経症状が新たに現れた場合
- 月に頭痛が10日以上あり、それが3ヶ月以上続いている場合(慢性化のサイン)
定期受診を予約すべき場合:
- 頭痛が月に数回以上あり、生活の質(仕事・家事・育児など)に影響している場合
- 市販の薬で何とかなっているが、発作の頻度が増えてきた場合
- 片頭痛かどうか、自分ではよくわからない場合
- 妊娠中または妊娠を希望していて、片頭痛の管理について相談したい場合
- 片頭痛の薬の効果や副作用について疑問・不安がある場合
- 子どもの頭痛が繰り返し起きていて心配な場合
診断
片頭痛の診断は、主に「問診(もんしん)」、つまり医師があなたの頭痛の特徴・歴史・生活環境などを詳しく聞くことによって行われます。「国際頭痛分類(こくさいずつうぶんるい)」という世界共通の基準をもとに、頭痛の回数・強さ・持続時間・ともなう症状などを確認します。血液検査やMRIなどの画像検査は、他の病気を除外(じょがい)するために行われることがありますが、片頭痛そのものを「写して確認する」検査はありません。
行われる可能性のある検査
- 問診(頭痛の性質・回数・持続時間・ともなう症状・誘発要因・家族歴などの詳細な聞き取り)
- 神経学的診察(神経の働きに異常がないかを確認する身体診察)
- 頭部MRI(磁気共鳴画像)検査 — 脳腫瘍・脳梗塞・くも膜下出血など他の病気を除外するために行うことがある
- 頭部CT(コンピューター断層撮影)検査 — 緊急性がある場合や急性期に行うことがある
- 血液検査 — 他の原因(甲状腺の異常・貧血など)を調べるために行うことがある
- 「頭痛ダイアリー(日記)」の記録 — 発作の頻度・強さ・誘発要因を自分で記録し、診断や治療方針の参考にする
診察で予想されること
初めて神経内科や頭痛外来を受診するとき、医師は「どんな頭痛ですか?」「どのくらいの頻度で起きますか?」「何がきっかけになりますか?」など、たくさんの質問をします。これは不思議なことではなく、片頭痛の診断に問診が最も重要だからです。できれば受診前に「頭痛ダイアリー」として、いつ・どこが・どのくらい痛んだか・何をしていたかをメモしておくと、診察がよりスムーズになります。検査が必要な場合もありますが、多くの場合は詳しい問診と診察で診断がつきます。
治療
片頭痛の治療には大きく分けて2つの方向があります。ひとつは「発作が起きたときの対処(急性期治療)」、もうひとつは「発作が起きにくくするための予防(予防療法)」です。どちらが必要か、またはどちらも必要かは、発作の頻度・強さ・生活への影響などをもとに、医師と一緒に相談して決めます。薬だけでなく、生活習慣の改善やセルフケアも治療の大切な柱です。
自宅でのセルフケア
- 頭痛が始まったら、暗くて静かな部屋で横になって休む
- 目を閉じて光や音の刺激を減らす
- 額や首筋に冷たいタオルや氷枕を当てると楽になる人がいる(温めると楽な人もいるので、自分に合った方法を試してみて)
- 水分をこまめに補給する(脱水が頭痛を悪化させることがある)
- 「頭痛ダイアリー」をつけて、自分の発作の引き金(トリガー)を把握する
- 毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる規則正しい睡眠リズムを保つ
- 食事を抜かないようにし、血糖値を安定させる
- カフェインの摂取量を一定に保つ(急にやめたり、急に増やしたりしない)
- ストレスをためないよう、自分なりのリラックス方法を見つける(深呼吸、瞑想、ヨガなど)
- 市販の鎮痛剤は、使う回数が多くなりすぎないよう注意する(月に10日以上の使用は「薬物乱用頭痛」につながる可能性があるため、医師に相談を)
医療治療
片頭痛の医療的な治療は、医師の診察のもとで個人に合わせて選ばれます。「発作が起きたときに痛みを和らげる薬(急性期治療薬)」と「発作を予防するために毎日または定期的に使う薬(予防薬)」があります。急性期治療薬には、痛みや吐き気を和らげることを目的としたものがあり、早めに使うほど効果的と言われています。予防療法は、発作が月に一定回数以上ある場合や、急性期の薬が効きにくい場合などに検討されます。どのような治療が自分に合っているかは、頭痛の頻度・強さ・他の持病・妊娠の有無などによって異なります。必ず医師に相談し、自己判断で薬を増減したり中止したりしないようにしましょう。また、一部の患者さんには「神経ブロック」と呼ばれる、神経への局所的なアプローチが行われることもあります。
手術が検討される場合
片頭痛に対して外科手術(手術)が行われることは一般的ではありません。ただし、非常に稀なケースでいくつかのアプローチが研究・実施されることがあります。これらは標準的な治療ではなく、薬物療法を含む他のすべての治療を試してもうまくいかない場合に専門医が検討するものです。もし手術について気になることがあれば、必ず神経内科や頭痛専門医に相談してください。
この病気と共に生きる
片頭痛と上手につきあいながら日常生活を送るためには、「自分の頭痛のパターンを知ること」が大切です。仕事中に発作が起きたときの対処法(休憩室の確認・同僚への説明など)をあらかじめ決めておくと安心です。また、発作が起きやすいタイミング(月経前・疲れがたまった週末など)を把握して、その前後は無理をしないよう意識することも助けになります。職場や学校への配慮の依頼も、必要であれば遠慮なく行いましょう。
生活習慣のアドバイス
- 毎日ほぼ同じ時間に寝て、ほぼ同じ時間に起きる「規則正しい睡眠」を習慣にする
- 食事を抜かず、3食をできるだけ規則正しく食べる
- 水分をしっかり摂る(1日1.5〜2リットルを目安に)
- アルコールは発作の引き金になりやすいため、量を控えるか飲まないようにする
- カフェイン(コーヒー・紅茶・エナジードリンクなど)の摂取量を一定に保ち、急な増減を避ける
- スマートフォンやパソコンの画面を長時間見ることを控え、定期的に目を休める
- 強い光(直射日光、明るすぎる蛍光灯など)を避けるためにサングラスや帽子を活用する
- 「頭痛ダイアリー」をつけて、自分の発作の引き金を記録・把握する
- ストレスを発散できる自分なりの方法を持つ(散歩・入浴・趣味など)
食事と運動
特定の食べ物や飲み物が発作の引き金になることがありますが、これは人によって異なります。チョコレート、赤ワイン、熟成チーズ、加工肉(ハムやソーセージなど)、MSG(うまみ調味料)などが引き金になると報告されているものの、すべての人に当てはまるわけではありません。自分の「頭痛ダイアリー」に食事の内容も記録して、発作との関連を確認してみましょう。運動については、激しい運動が発作を引き起こすことがある一方、定期的な有酸素運動(ウォーキング・水泳・ヨガなど)が発作の予防に役立つという研究もあります。急に激しい運動を始めるのではなく、体に合ったペースで無理なく続けることが大切です。
精神的健康と心の健康
慢性的な痛みと付き合い続けることは、心にも大きな影響を与えます。片頭痛を抱える人は、不安感や抑うつ(気分が落ち込む・意欲がわかない)を感じやすいことが知られています。「また頭痛が来るかもしれない」という恐怖感が、外出や仕事・社交活動を制限してしまうこともあります。もし気分の落ち込みや不安が続くようであれば、それも医師に相談してください。心の健康を保つことも、片頭痛の管理に深くつながっています。悩みを一人で抱えず、信頼できる人や専門家に話しましょう。もし気持ちがとても苦しいときや、死にたいという気持ちが出てきたときには、すぐに「よりそいホットライン(0120-279-338)」などの相談窓口に電話してください。あなたは一人ではありません。
予防
片頭痛そのものを完全になくすことは難しいですが、発作の頻度や強さを減らすことは十分に可能です。自分の「引き金(トリガー)」を把握して避けること、規則正しい生活リズムを保つこと、そして医師と相談しながら必要であれば予防療法を行うことが、発作を減らすための主な方法です。完璧にコントロールできなくても、少しずつ工夫することで生活の質は確実に改善していきます。
ワクチン
片頭痛に対するワクチンはありません。
検診プログラム
現時点で、片頭痛に対する公的なスクリーニング(健診での早期発見)プログラムは日本にはありません。ただし、頭痛が繰り返し起こり生活に影響しているなら、早めに医師に相談することが大切です。
合併症
治療しない場合
- 「慢性片頭痛(まんせいへんずつう)」への移行 — 適切な治療をしないまま放置すると、月に15日以上頭痛が続く慢性的な状態になることがある
- 「薬物乱用頭痛(やくぶつらんようずつう)」 — 市販の痛み止めを飲みすぎることで、かえって頭痛が増えてしまうという悪循環に陥ることがある
- 仕事・学校・家庭生活への支障が大きくなり、生活の質が大幅に低下することがある
- 不安障害(ふあんしょうがい)やうつ病との合併リスクが高まる可能性がある
- 「片頭痛性脳梗塞(へんずつうせいのうこうそく)」 — 非常に稀なケースで、特に前兆をともなう片頭痛と他のリスク因子(喫煙など)が重なる場合、脳梗塞のリスクが若干高まるとされている(ただし全体的な頻度はとても低い)
長期的な見通し
片頭痛と診断されても、決して悲観しないでください。多くの人が医師のサポートと自分に合ったセルフケアを組み合わせることで、発作の頻度や痛みをコントロールし、仕事・育児・趣味を楽しみながら生活しています。また、年齢とともに発作が自然に軽くなる場合もあります。一歩一歩、自分のペースで取り組んでいきましょう。あなたには適切なサポートを受ける権利があり、今よりも楽になれる可能性は十分にあります。
サポートを探す
国際機関
地域の団体
- 日本頭痛学会(一般向け情報・専門医検索) ↗ · 日本全国
- 厚生労働省「頭痛」情報ページ ↗ · 日本全国
- 頭痛ダイアリー(日本頭痛学会提供) ↗ · 日本全国
相談窓口
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。