小児の肩の痛み
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
肩の痛みとは、肩やその周りに感じる痛みや不快感のことです。お子さんの肩の痛みは、ケガ、使い過ぎ、成長に伴う変化など、さまざまな原因で起こることがあります。
重要な事実
- お子さんの肩の痛みは、多くの場合、スポーツや遊びでの使い過ぎが原因です。
- 成長に伴う「骨端線(こったんせん)」と呼ばれる軟らかい部分の障害(離断性骨軟骨炎など)が肩に起こることがあります。
- 適切な休養とケアで多くの肩の痛みは改善しますが、痛みが続く場合は医師の診察が必要です。
子どもの肩の痛みは、特にスポーツをするお子さんではよく見られます。野球やバレーボール、水泳など、肩を繰り返し使う競技で多く報告されています。
肩の痛みは、活発な子どもから成長期の10代前半まで幅広い年齢で見られます。特に、オーバーヘッド(頭上)動作が多いスポーツ(野球の投手、バレーボールのスパイカーなど)を行うお子さんに多くみられます。
症状
- 転落など明らかな大きなケガの後、肩の形が明らかに変形している
- 腕が全く動かせず、激しい痛みがある
- 呼吸困難や顔色が悪いなど、全身状態が悪い
- ⚠肩の痛みが数日たっても改善しない、または悪化する
- ⚠肩を動かすたびにカクカクする、引っかかる感じがある
- ⚠発熱を伴う肩の痛みと腫れがある
一般的な症状
- 肩を動かすときの痛み
- 安静にしていても感じる鈍い痛みやズキズキする痛み
- 肩の動きが制限される(腕を上げにくい、後ろに回しにくい)
- 肩の腫れや熱感
子供の症状
- 投げる動作や腕を上げる動作で痛みが出る
- 成長期の子どもでは、肩の成長軟骨(骨端線)の炎症(リトルリーグ肩)という特有の症状がある
- 痛みを訴える場所を正確に説明できないことがあるので、保護者が注意深く観察する必要がある
原因
主な原因
- スポーツや遊びでの使い過ぎ(オーバーユース)
- 転倒や衝突によるケガ(打撲、捻挫、脱臼)
- 成長に伴う骨や軟骨の病気(リトルリーグ肩、離断性骨軟骨炎など)
- 感染症(細菌感染による化膿性関節炎など)
- 姿勢の悪さや長時間のスマホ・PC使用
リスク要因
- 野球、バレーボール、水泳、テニスなど肩を繰り返し使うスポーツ
- 成長期(特に10~14歳)の骨や軟骨が未熟な時期
- ウォーミングアップやストレッチ不足
- 投げる動作のフォームが不適切
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 肩の激しい痛みで腕が全く動かせない
- 肩の形が明らかにおかしい(脱臼の可能性)
- 痛みとともに発熱や腫れがある
定期受診を予約すべき場合:
- 肩の痛みが2週間以上続く
- 安静にしても痛みが改善しない
- 学校やスポーツに支障が出ている
診断
医師はまず、お子さんの症状やケガの状況、スポーツの内容などを詳しく聞きます。次に、肩の動きや痛みのある場所を確認する診察を行います。必要に応じて画像検査を行います。
行われる可能性のある検査
- 問診・視診・触診(医師が肩をさわって調べる)
- レントゲン検査(骨の状態を見る)
- 超音波(エコー)検査(腱や筋肉の状態を見る)
- MRI検査(より詳しい骨・軟骨・腱の状態を見る)
診察で予想されること
診察では、お子さんが痛みを感じる動きをいくつか行ってもらいます。痛みの原因がはっきりしない場合でも、成長期特有の病気がないか丁寧に調べてもらえます。検査に時間がかかることもありますが、結果説明は後日になることが多いです。
治療
肩の痛みの治療は、原因によって異なりますが、まずは安静と保存療法(手術をしない治療)が基本です。痛みの根本原因に対処しながら、お子さんが安全にスポーツや日常生活に戻れるようサポートします。
自宅でのセルフケア
- 痛む肩を休ませる(投球や腕を上げる動作を控える)
- 痛い部分を氷や冷たいタオルで冷やす(アイシング)
- 痛みが強いときは安静にし、無理に動かさない
- 市販の鎮痛剤(かぜ薬や解熱鎮痛薬など)は、医師や薬剤師に相談してから使用する
医療治療
医師の診断に基づき、消炎鎮痛薬の外用剤(塗り薬・貼り薬)や内服薬が処方されることがあります。理学療法(リハビリ)やストレッチ、運動療法が指導されることが多く、肩の筋肉のバランスを整え、再発を防ぎます。
手術が検討される場合
自然に治りにくい離断性骨軟骨炎や、反復性の肩関節脱臼など、保存療法だけでは改善が難しい場合に手術が検討されることがあります。しかし、お子さんの肩の手術は可能な限り避けられ、成長が終わるまで保存療法を続けることも多いです。
この病気と共に生きる
肩の痛みがある間は、痛みを感じる動作を避けましょう。特にスポーツは医師の許可が出るまで休みます。日常生活では、肩に負担のかからない姿勢を心がけ、痛みが続く場合は学校の先生にも状況を伝え、体育の授業や部活動を調整してもらいましょう。
生活習慣のアドバイス
- 正しい姿勢を意識する(猫背を改善する)
- 肩や腕を酷使するスポーツは、適度な休憩とウォーミングアップを取り入れる
- 痛みが引いた後も、急に運動量を増やさず徐々に戻す
食事と運動
特別な食事は必要ありませんが、骨や筋肉の成長のために、カルシウムやビタミンDを含む食品(牛乳・小魚・きのこ類など)をバランスよく食べましょう。リハビリの運動は医師や理学療法士の指導に従って行ってください。
精神的健康と心の健康
肩の痛みで好きなスポーツができなくなると、お子さんはストレスや落ち込みを感じることがあります。保護者はお子さんの気持ちに寄り添い、「治ればまたできる」と励ましましょう。気分が晴れないときは、学校のスクールカウンセラーやかかりつけ医に相談することもできます。もし自傷や自殺の考えがあれば、すぐに119番(救急)や相談機関に連絡してください。
予防
完全に予防することは難しいですが、肩の痛みを起こすリスクを減らすことはできます。適切なウォーミングアップとクールダウン、筋力バランスを整えるトレーニング、正しいフォームの習得が大切です。また、疲れがたまっているときは無理をせず、十分な休養をとりましょう。
ワクチン
該当なし
検診プログラム
特に定期的な検診はありませんが、スポーツを始める前や肩に違和感を感じたら早めに医師の診察を受けることをおすすめします。
合併症
治療しない場合
- 慢性化して長期にわたる肩の痛み
- 肩関節の動きが制限される(関節拘縮)
- 成長軟骨の損傷が治らず、骨の成長に影響が出る
- 反復性の脱臼や不安定症
長期的な見通し
肩の痛みの多くは、適切な休息と治療で数週間から数か月で改善します。成長に伴う変化による痛みも、成長が終わるころには自然に治まることがほとんどです。ただし、繰り返す肩の痛みや放置すると手術が必要になることもあるため、早めに医師に相談することが大切です。将来、スポーツや日常生活に支障なく過ごせるよう、根気よく治療に取り組みましょう。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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